やってはいけないこれだけの理由

【やってはいけないこれだけの理由】第25回「重要イベント前にポジションを取ってはいけない」

先週は、米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)

スイス中銀(SNB)ほか、多くの国が政策金利の発表を行いました。

また、米国からは11月の消費者物価指数(CPI)が発表されるなど、イベント盛りだくさんの週になりました。


今回は、これらの重要イベントの前にポジションを持つべきか、否か

また「もってはいけない」人はどういう人なのかについて記載します。


まずは根拠のない予想を信用しない


先週発表された11月の米CPIの前週に同月の卸売物価指数(PPI)が発表されています。

この結果が市場予想よりも強い結果となったことで、CPIも強い結果が出るのではないかと

勝手に予想をしていた方もいたようです。


しかし、PPIが強ければCPIも(市場予想より)強いなどと決めつけるのは危険です。

以前はADP全米雇用報告が強いと、同じ週の金曜に発表される米雇用統計も同じように強くなる

と関連付けていた流れもありましたが、統計的にもまったくそれが当てはまっていません。


市場関係者の中でも無責任にPPIの結果からCPIを予測し、ドル買いを煽ることも見受けられましたが

インフレ傾向としての関連性はあるものの、必ずしも同傾向になるという根拠のない予想を信用してはいけません。


イベント前でもポジションを持って良いのは?


中長期的な視点を持っている投資家の場合はイベント前でもポジションを持つことがあります。

例えば、米国のインフレ傾向が来年も継続するという確固たる自信がある投資家がドルロングにする

逆にインフレがピークアウトするとの予測でドルショートをキープする投資家もいるでしょう。


そのような投資家は、一つ、二つのイベントで売り買いをすることはなく中長期的にポジションを持ちます。

もちろん、イベントで思ったよりもインフレ傾向が緩和されたと判断し、ドルロングを閉じるなど

臨機応変にポジションを変えることもあるでしょう。


しかし、短期的な投資家と違い、イベントごとに一喜一憂することはありません。



丁半博打でポジションを持ってはいけない


では、どのような投資家がイベント前にポジションを持ってはいけないのでしょうか?

それは振幅が激しい、いわゆるボラタイルなマーケットに参加し、短期的に売り買いだけを繰り返す投資家です。

短期的な取引を得意とする、ごく限られた投資家もいますが、それは例外です。


一部では、このボラタイルの中で当たったらラッキーという感覚でトレードをする人もいるでしょう。

このような取引は「丁半博打」で、当たる可能性と損する可能性が半々です。

このような感覚でポジションを持ってはいけません。


確率で言えば半々なので、損益も通算すると変わらないと思われがちです。

しかし、アゲインスト(自分の持っているポジションと逆)方向に動いた場合には

どうしてもストップロスの方が遅くなってしまうことが多いのが傾向的にあります。


要するに、確率は5割でも、利益は早めに計上し、損失は遅くなる。

よって通算はマイナスになってしまいます。


前回の記事「12月にトレードをやってはいけない」にも記載しましたが、12月は市場流動性が悪くボラタイルな月です。

今回も米CPIやFOMCの後には乱高下を繰り返しました。

自分は利益は大きく、損失は小さくするから大丈夫だ、と思っていてもボラタイルなことで簡単にはいきません。


因みに金融機関のディーラーの多くはイベント前にはリスクをできるだけ持たないようにします。

長期的なビジョンを持っているディーラーを除き、ほとんどのインターバンクディーラーはスクエアでいます。

ごく稀にイベント前にポジションを仕込んでいるディーラーもいましたが、ほとんど短命で終わっています。


短期的なポジションで売り買いを行うことは決して悪いことではありませんが

イベント前のポジションは博打的要素が高いことで、基本的にはやってはいけません。


この連載の一覧
第119回「円買いの流れを一瞬で止めた石破政権・・・今後の政局を知らないでやってはいけない」
第118回「想定為替レートを知らないでやってはいけない」
第117回「日銀には独立性がないことを知らないでやってはいけない」
第116回「ダブル石破ショック・・・今月は政治に翻弄されることを知らないでやってはいけない」
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第113回「FRBの2大責務…今は何を重要視しているかを知らないでやってはいけない」
第112回「バイアスがかかった考えをもってやってはいけない」
第111回「円相場を見るならアジア通貨の動きを見ないでやってはいけない」
第110回「7・8月の相場を振り返る・・・この反省を生かさないでやってはいけない」
第109回「日銀の政策決定会合の結果発表時間がなぜ定まらないのか」
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第103回「円安を本当に止める気があるのか・・・何が信用できるかを確かめないでやってはいけない」
第102回「クロス円をしっかり見ないでやってはいけない」
第101回「介入を過度に警戒してはいけない」
第100回「CPI後のFOMC、ドットプロントに織り込んだか吟味しないでやってはいけない」
第99回「南ア政局・・・これを知らないでランド取引はやってはいけない」
第98回「G7財務相・中央銀行総裁会議・・・結果を調べないでやってはいけない」
第97回「南ア総選挙、これを知らないでやってはいけない」
第96回「ラーメン3000円も高くない、自作自演の円安を知らないでやってはいけない」
第95回「利上げだけで円安が止まると思ってやってはいけない」
第94回「介入にも限界があることを知らないでやってはいけない」
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
第89回「カントリーリスク・・・混迷する世界情勢を知らないでやってはいけない?」
第88回「チャートポイントを信じますか?・・こんなチャート利用法はやってはいけない」
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第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
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第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
第78回「なぜ年末は取引をやってはいけないのか・・・応当日の特殊事情」
第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
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第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
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第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
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第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
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第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
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第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
第42回「フェドウォッチを見ないでFXをやってはいけない・・・年末は95%利下げ予想」
第41回「高金利通貨は各国の状況を知らないとやってはいけない」
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第38回「若者こそFX取引を・・・その2、やってはいけないでなく、やってほしい」
第37回「銀行の救済問題、詳細を把握せず取引してはいけない」
第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
第35回「肌感覚を大切にしないでやってはいけない」
第34回「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
第33回「政治家の発言を吟味して取引しないといけない」
第32回「ポンドドル、ポンド円の取引をやってはいけない」
第31回「新たに注目される指標を無視してトレードをやってはいけない」
第30回「次の日銀総裁の意向を考えないで、やってはいけない」
第29回「他の市場の動きを無視して、やってはいけない」
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第27回「昨年は何の通貨をやってはいけなかったか?」
第26回「提供されているヒントを無視することを、やってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第25回「重要イベント前にポジションを取ってはいけない」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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