先週は米議会がカオスとなりましたが、この影響は今後も重要になりそうです。
まずは、先月の動きを振り返ります・・・
取りあえず「つなぎ予算」成立
10月1日までに米上下両院で予算案が通らない場合は、米政府の一部が閉鎖される危機にありました。
これまでも、トランプ政権時の2018年12月から翌1月まで、国境沿いの壁の建設費をめぐる対立で
一部の政府機関が閉鎖しました。オバマ政権時の2013年では、10月1日から政府閉鎖となりました。
2013年には政府の一部が閉鎖されたことで、多くの経済指標が発表されないなど
さまざまな面で金融市場も乱れが生じたのを覚えている方もいるでしょう。
また、今回は格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが、
「米政府機関が閉鎖されれば米国の信用格付けにネガティブに反映される」と警告を出していました。
政府機関閉鎖でムーディーズが米債を格下げした場合は、3大格付け会社のすべてが米債の格付けを最上位から外したことになり、
ドル相場への影響はこれまで以上に大きくなったでしょう。
共和党内部が子供の喧嘩状態に!
今回の「つなぎ予算」の成立はぎりぎりとなりましたが、その動きを主導したのが
野党・共和党のマッカーシー議長でした。
共和党強硬派の要求を取り下げ、民主党の案に歩み寄り強引に予算を成立させました。
この動きで怒り狂ったのが、共和党強硬派です。
マッカーシー氏は今年1月の議長投票で、100年ぶりとなる最初の投票での過半数獲得にならず
なんと、15回も議長になるための投票を繰り返しました。共和党内で反対に回ったのが、この強硬派です。
党内がばらばらということを象徴する事態と言えました。
そして、予算でも強固派の意見を取り組まなかったことで
フロリダ州選出のゲーツ下院議員は「新しいリーダーシップの下で前進する必要がある」
と述べ、共和党強硬派は「議長解任」動議を進めました。
マッカーシー議長も「やれるならやってみろ(Bring it on!)」と応酬。
これに対してアリゾナ州選出で強硬派の共和党クレーン議員も「やろうじゃないか!(Lets roll!)
とX(旧ツイッター)で言い返すなど、まるで子供の喧嘩状態になりました。
複雑に絡まる米政治
この解任騒動について、市場もメディアも週末に話し合いが行われるとの予想を立てていました。
しかし、なんと予算を通した数日後には、ゲーツ下院議員が解任動議を提出。
そして、3日には米国史上初となる議長解任が決定しました。
マッカーシー議長が民主党に協力したことで、民主党が共和党の議長解任に反対するとの意見もありしたが
マッカーシー議長がバイデン米大統領の弾劾調査を開始していることで
解任に対して多くが賛成したようです。
強硬派にとって引くに引けなかったのは、今後の大統領選挙でいまだに共和党支持者の中からは
圧倒的に人気のあるトランプ前大統領の存在があるのも一因です。
中間選挙を迎える一部議員にとってはトランプ前大統領の支持を得ることが、自分の当選にもつながるからです。
一方、今回民主党に歩み寄ったマッカーシー議長にとっても、もし政府閉鎖が行われた場合は
国民は「共和党の責任」との見方になり、議長としては共和党支持者や支持政党のない有権者がが離れないために
歩み寄らざる終えないとの考えがあったことで、どちら側も引くに引けない状況にあったようです。
ではFXにどう影響を及ぼすか?
ここまでの政治の流れがどのようにFX影響を及ぼすかですが、まずはこれはあくまでも「つなぎ予算」と言うことで
この期限が11月17日までの暫定予算ということが重要です。
この日までに、どのような政治状況になるのかにより、金融市場(特に債券市場)が動き
FXも米金利動向に大きく左右されるでしょう。
ただし、比較的穏健派だったマッカーシー議長が解任されたことで、下院共和党では強硬派の力が増した可能性があります。
それは、11月17日には今回のように予算案が通過せず、政府閉鎖に陥る可能性が高まったとも言えます。
その場合は上述のようにムーディーズが米債を格下げするかもしれません。
暫定予算が切れるまで1カ月半ありますが、その前に新議長がどうなるかを知らなくてはいけません。
次回は予算案が通らないとの観測になった場合は、1カ月半などと悠長なことではなく
すぐに投資家などは米債売りを更に仕掛ける可能性もあるでしょう。
この政治の動きをただ傍観せずに、しっかり見ないでFXはやってはいけないでしょう。