FXだけで食べていくため
「自分はFXだけを見続け、それを職にしたい!」という方にお会いしたことがあります。
その都度、誰に対しても、そして何度も、「そんなにうまくいかないから止めた方が良いですよ」と伝えてきました。
それでもFX取引を職にしたいという人はいます。そこで、FXだけで食べていこうという人へのアドバイスを考えてみました。
おそらく「FXを職にしたい」という方のイメージとして、自宅及びレンタルオフィスで金融機関のディーリングルームのようなものを構築したいのではないかと思われます。
しかし、それはよほど大金が無い限り難しいのですが、1回目は実際の金融機関のディーラーの周りがどうなっているかを知るところからスタートしてみましょう。
そして、金融機関のFXディーラーと呼ばれている方たちが、「どれだけ(個人のFX投資家より)優位性があるか」を知るところから始めてみましょう。
金融機関のFXディーラーとFX投資家は全く違う
数十年FXディーラーとして働いていましたが、金融機関のFXディーラーで働くことと、個人投資家がFXだけで働くのは全く違います。
金融機関のFXディーラーは、それなりの給料を貰っているわけで、たとえ1億円損をしようが安定した給料を得ることが出来ます。
もちろん年間を通して収益がなかったら、邦銀以外は解雇されます。また、5億の利益が目標とされているディーラーが1億の利益だけですと、おそらく肩をたたかれます。
個人でFXだけで稼ぐということは、解雇はないですが、マイナスになった場合は嗜好品が買えないだけでなく、家賃・食費・光熱費などの生活費が払えません。
この決定的に違うことを理解し、損をしたときはどれだけ大変かを認識しなければなりません。
これは、私を含め現在テレビ、雑誌、ネットなどで出てくるFX指南役にも共通して言えることですが
FX会社で働いていたり、コメントなどを指南役が書くことは、その原稿手数料などの安定した収入が欲しいからやっているのです。
安定した収入が無く稼げるのであれば、わざわざ面倒な原稿など書く必要性はありません。
要するに元プロのFXディーラーでさえも安定した収入がなく、FXだけで生活をしていくことは至難の業なのです。
金融機関はあらゆる面で優位
【やってはいけないこれだけの理由】第6回「FX詐欺でTKOされないために」でも記載しましたが、金融機関のディーラーは一般でFXを行うより明らかに儲けやすい環境があります。
FXディーラーが働く、ディーリングルームは最新のシステムに囲まれています。
FXの取引をするシステムは当然ですが、複数の情報ベンダー(ロイター、ブルームバーグ、日経クイックほか)があり、それらのシステムだけで一人当たり月に百万単位のお金をかけています。
個人でFXを行う人と比較し、ニュースの速報性、情報の豊富さ、すべてにわたって金融機関のディーラーが優位です。
決済等の様々な補助をしてくれるバックオフィス、与信枠を管理してくれるミドルオフィスにもたくさんの陣容を抱えています。
また、ここ最近は金融機関のディーラーの数が減ってはいますが、昼食も外に食べに行けないことが多々あるので、若いアシスタントディーラーが弁当を買いに行くなど、何かと補助をしてくれる人員がいます。
他にも自分がマーケットを見ることが出来ないとき、睡眠をとるときには他の支店のディーラーが手助けをしてくれたり、情報を後から報告をしてくれます。
金融機関はシステム、情報、サポート要員等、様々な優位性があります。
金融機関は儲かる仕組みもある
【やってはいけないこれだけの理由】第4回「140.00円に売りなんて置いてはいけない!」にも記載しましたが、金融機関は実需、投資家をはじめとしたさまざまな顧客がいることで、儲かる仕組みがあります。
オーダーを利用したり、顧客が売るのか買うのかを事前に知ることができ、フロントランニングで売買をすることも陰ながらあるでしょう。
よって、金融機関のFXディーラーが負けなし、というのは当たり前なのです。
私もFXディーラー生活で年間を通して負けたことは一度もありません。これは自慢ではなく、当たり前のことです。
上述のように、月間百万単位の情報ベンダーへの支払い、FXの取引手数料の支払いをディーラーが稼がなくてはいけません。
また、バックオフィスなどを含め、自分の取引に多くの人員がかかわっていることで、その方たちの給料も稼ぐ必要があります。
よって、年間負けたことがないのは当たり前で、それをいまだに自慢している元ディーラーなどの自慢話など聞く必要はありません。
これらの優位性が金融機関のディーラーはあるわけですので、個人が金融機関のディーラーと同じようなことをするには、莫大なお金がかかることを念頭に置く必要があります。
では、個人でも金融機関に負けないために、少しでも何ができるかを次回以後考えていきましょう。