主要国で日銀だけ政策決定会合の結果発表が決まっていない
今回も日銀についてです。
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」で、中央銀行の政策金利の発表時間について記載しました。
そこにも記載しましたように、多くの中銀は政策金利の発表を、何時に行うと決められていますが日銀は具体的に何時に発表されるかが決まっていません。
これまでの慣例で政策決定会合2日目のお昼頃に発表されますが、これも決まっているわけではありません。
時間が決まっていないことで、発表が遅れれば遅れるほど、何か政策を変更するのではないかとの声が高まり市場が動いてしまいます。
BOEのようにできないのはなぜか?
これも以前に記載しましたが、イングランド銀行(BOE)は3回に分けて金融政策委員会(MPC)が開かれます。
1回目(Session 1: pre-MPC meeting)は政策金利が発表される(通常)木曜の1週間前に話し合いが行われ、最近の経済指標についてのディスカッションが行われます。
2回目(Session 2: first policy meeting )は通常政策金利が発表される週の月曜日に行われ、政策金利について何が適切かについて話し合われます。
3回目(Session 3: second policy meeting )は通常政策金利が発表される週の水曜日に行われ、さらに適切な金融政策について討議され、政策金利を変更するか等の投票が行われます。
結果(Policy Announcement:)は通常木曜日の12時に発表されます。
なお、そのうち2、5、8、11月のMPCでは四半期のインフレレポート(QIR=Quarterly Inflation Report)も公表され、BOE総裁の会見も行われます。
よく誤解している人がいますが、BOEは当日に行われたMPCで結果を発表するのではなく、前日に既に結果を出しているのです。
日銀が政策金利の発表の時間が定まっていない理由として「徹底した議論を尽くすため」との話も出ています。
しかし、BOEのように前日に結果を出していれば、時間を定めることも可能です。
これまで2日の政策決定会合を3日にすることも可能でしょう。
ではなぜ時間が定まらないのか?
では、なぜ日銀の会合の結果発表の時間が定まらないのでしょうか?
ここで前回の会合(7月30-31日)の前日と当日を振り返ってみましょう。
結果発表前日の30日夜にはNHKが「日銀は明日まで開く金融政策決定会合で現在0-0.1%の政策金利を0.25%程度に引き上げる案などを議論」と報じました。
また、日経新聞が「日銀は追加利上げを検討、国債買い入れを減額する量的引き締めの具体策も決める」とも報道しています。
そして、当日の日経新聞には国債減額について市場予想としてですが「半額の3兆円予想」と記載しています。
そして、結果はNHKや日経新聞の通りの結果になっています。
7月だけでなく、これまでも幾度も前日や当日に報道機関が発表した観測通りの結果になったことが多々あります。
市場ではリークがあったのではないかとの憶測も当然あることで、観測記事に市場が引っ張られることになってしまいます。
それほど観測記事の精度が高く、リークが本当にあるのかは定かではないですが、市場がリークを疑っていることは事実です。
一方でBOEは前日に投票結果が出ていますが、まったく観測記事も伝わりません。
他の中央銀行も同様に、ここまで観測記事の精度が高いものは見かけません。
要するにリークがあるという疑念は拭えず、日銀についての信頼性がないのです。
よって、日銀が仮に前日に投票をして、翌日に結果発表となった場合では、前日の投票後にリークが出回る可能性があることで、時間が定まらないとも噂されています。
中央銀行の信頼性がなくなる場合は、その国の通貨の信頼性も同時に失います。
今後の市場を読み解くためにも、中銀の信頼性をみて取引しなくてはならないと思われます。