リスク回避の動きとは
FXに手を出して時間を経過すると、リスク選好(Risk On)とリスク回避(Risk Off)の動きがあることを多くの人は理解していると思われます。
一度ここでそれを整理して書きますと・・・。
リスク選好とは、例えば戦争終結や通商摩擦回避など、これまでどうなるか分からない不安要素がなくなる(もしくは減少する)ことです。
この場合には、株式市場は上昇し、債券市場が売られる(債券利回りは上昇)ことになります。
そしてFXの中では、リスク選好の動きに敏感なオセアニア通貨等が積極的に買われ、円が売られる傾向があります。
また、永世中立国であるスイスの通貨フランも売られます。
逆にリスク回避とは、紛争拡大、通商摩擦悪化、政局不安など、今後の不安要素が拡大することです。
その場合には、株式市場は軟調な動きになり、安全資産とされる債券が買われ、債券利回りは低下します。
FXは上述の逆となり、オセアニア通貨や新興国通貨等が売られ、円が買われる傾向になります。
リスクの度合いが今後は変わる可能性も
基本的なリスク選好・回避の動向はこれまでもあまり変わっていません。
ただ、過去と比較し例えばスイスフランへの反応が鈍かったりする場合もあるなど、その時々の状況で変わる場合もあります。
逆に、いまだに北朝鮮の問題が起きた場合でも、地政学リスクという面では日本は北朝鮮と近いにもかかわらず円売りの反応は限定的のままなのは不思議なことでもあります。
先週の28日には中国のAIスタートアップ企業DeepSeekの競争力に対する懸念から、米株先物がナスダック先物を中心に大幅に下落しました。
この動きに歩調を合わせ、FX市場でも円買いが急速に進み、新興国通貨の南ア・ランド、メキシコ・ペソ、トルコ・リラなどが軟調な動きになりました。
しかし、新興国の株式市場はどうだったでしょうか?
南アとメキシコ市場を比較してみましょう。
米国と密接につながっているメキシコ株は小幅に売られました。
米国の産業が傾いた場合には、メキシコ市場にも影響を与えることで売られましたが、ハイテクを中心に売られたわけですので影響は小幅でした。
一方で、南ア市場ですがほぼ横ばいの動きです。
なぜ南ア株はそれほど売られなかったのでしょうか?
その大きな一因は、「中国のAIスタートアップ企業DeepSeekの躍進」は南アにとってはマイナスではないからです。
以前に第129回「第2次トランプ政権・・・米国離れを考えないでやってはいけない」に記載しましたが、南アは親中国家です。
今回のDeepSeekに関しても、南アのユーザーはDeepSeekの人工知能(AI)ツールの使用頻度が急速に上昇しています。
自国のことしか考えていないトランプ政権離れに対応をしている国ですので、米国が経済停滞となった場合でも、中国が経済回復を示せば、影響が限定的になる可能性があるとも言えます。
FXもリスク選好・回避が変わるのか?
このように株式市場は徐々に親米、親中などの動向を見定める状況になっています。
しかしながら、FX市場では現時点では、これまで通りのリスク許容度になっています。
ただ、これからの4年間はどのようになるかはまだ分かりません。
米中間の通商摩擦が拡大した場合は、これまで通りにリスク選好か回避かでFX市場も単純には動かなくなる可能性もあることを、念頭に入れないでやってはいけないでしょう。