やってはいけないこれだけの理由

第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」

インフレ指標・・・各国の状況により見る角度が変わる


消費者物価指数(CPI)など、インフレ進行具合を示す指標は複数あります。

しかし、各国によってインフレ指標の中でも、その中の何を注目するかが異なってきます。


CPIでも総合指数から、天候に左右されて振れの大きい生鮮食品を除くもの「コアインフレ率」

更にエネルギーを除いて算出した指数を「コアコア」として発表されます。


全ての国が総合指数なら総合指数、コアならコアを中心に比較できれば良いのですが

生鮮食品の支出割合が、全体の支出に大きな割合を占めている国の場合は、コアだけを見たら

インフレの進行具合がはっきりとつかめないでしょう。

(この件に関しては次回に詳細を記載します)


一方で、支出全体の中で生鮮食品の支出がそれほど大きくない国の場合

変動が激しい数値を省かないと、インフレ率が振れ過ぎてしまい、

データとして分かりにくいものになってしまいます。

中銀もそれらのインフレ進行具合を様々な角度から精査し、政策金利等の変更を判断しています。


FRBが一番見ているのは?CPIとPCEの違いは?


上述のように様々なインフレ指標が発表されますが、米連邦準備理事会(FRB)が注目している

インフレ指標が今週発表されます。それは31日に発表される「個人消費支出(PCE)」です。

PCEとはPersonal Consumption Expenditureの略です。


このPCEの中で名目PCEを実質PCEで割ったものを「PCEデフレーター」と呼び

更に、食品とエネルギーを除いたものを「PCEコアデフレーター」と呼びます。

そして、この数値がFRBが最重要視しているとされています。


CPIとPCEの違いですが、複数あります。まずは調査対象が違います。

CPIは、家計への調査(Household Surveys)

PCEは、GDPと企業への調査(GDP report and from Suppliers)になっています。



カバレッジも異なります。

CPIは、購入した商品やサービスに対する自己負担支出のみをカバーします。

これは、直接支払われないその他の支出(雇用主が提供する保険、メディケアなど)は除外されます。

PCE は、これらの除外されたものを含めるために、より広範囲とも言えます。


計算方法の違いもあります。

CPI の計算式は、価格変動が大きいカテゴリーの影響を受ける可能性が高くなります。

PCE の計算ではこれらの価格変動が平滑化されるため、PCE は CPI よりも変動しにくくなります。


大まかにこれだけ違いがあります。


日銀が一番見ているのは?・・・実はこの重要指標を見逃しているのでは?


日本もインフレが高進していることで、ようやく本邦のインフレ率が気になり始めたことでしょう。

これまで数十年は、本邦の経済指標は見る価値がないほどだったのが、ようやく注目されています。


当然、全国のCPIは注目されますし、先週発表された東京都区部のCPIも前哨戦とされ注目されます。

しかし、日銀が更に注目している指標を発表し、それを多くの方が見逃しています。


それは、全国CPIの公表日の2営業日後の14時を目途に公表される

「刈り込み平均値」「加重中央値」「最頻値」の3指標です。

この重要指標は先週22日に公表されていますが、多くの方が見逃していたようです。



それぞれ日銀がHPで、

「刈り込み平均値」は、品目別価格変動分布の両端の一定割合(上下各10%)を機械的に控除した値。

「加重中央値」は、中央値の近傍にある価格変化率を加重平均した値。

「最頻値」は、価格変動分布において最も頻度(密度)の高い価格変化率を指す。

と、説明されています。


特に刈り込み平均値は日銀がかなり重要視しているともいわれています。

そして、この3指数ともに7月は統計が遡れる2001年以降最高となりました。


このようにインフレが示される様々な指標がありますが、中央銀行が何を重要視しているかが異なるため

表面上のインフレ率だけでなく、インフレ率の何を注目しているかを知らずに

トレードはやってはいけないと思います。


この連載の一覧
第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
第78回「なぜ年末は取引をやってはいけないのか・・・応当日の特殊事情」
第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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