やってはいけないこれだけの理由

【やってはいけないこれだけの理由】第8回「儲けるために大事なこと…臆病者が勝つ」

儲け話はいっぱい、でも・・・

 

昔から投資による大儲けの話は山ほど出てきます。バブル期には「歌う不動産王」とよばれた演歌歌手がいました。

周りにも「ビットコインで一攫千金を得た」など、景気の良い話は枚挙にいとまがありません。

 

そのような儲け話を聞くと、「自分も儲けたい」「投資していない自分は損をしているのではないか?」という気持ちになるでしょう。

実際に銀行にお金を預けても、ほぼ金利がつかない状況が何年も続いている中で、投資をすることは至極まっとうなことでもあるでしょう。

では、儲けるために大事なことは何でしょうか?

 

 

儲かった話は聞かない

 

芸能人がFXによる詐欺に引っかかった話については第6回「FX詐欺でTKOされないために」に記載しましたが、世の中儲け話を聞くと羨ましいという気持ちが起きるものです。でも、儲け話は聞かない方が良いです。


そもそも、儲かった話はよく聞きますが、損した話はFX詐欺に引っかかった芸能人や上述した歌う不動産王のように、まさにどうしようもなくなった時に初めてカミングアウトされるわけです。

 

儲け話の裏には同じだけ損がある

 

FXでも儲けることは可能です。ただし、儲け話をしている人の話を鵜のみにしてはいけません。

FXの世界に30年以上いますが、「この前の雇用統計の後に大儲けしたよ!」「120円からドル円を山ほどロングなんだよね」などという自慢話をする人の話は聞いてはいけません。

 

実際にディーラーや元ディーラーでも、この手の話をする人は多くいますが、無視したほうが良いです。

儲かった話をしている方が「超豪邸に住んでいる」などの話は聞いたことがほぼありません。

結局は儲かっていても、同様に損もしています。ただし、損の話は格好悪くてしていないだけです。

  

上述の儲け話ばかりしている(していた)ディーラーや元ディーラーのほぼすべてがディーラー生活は短命だったとみなしてよいでしょう。

なぜならば、儲け話しか言わないということはプライドが高く、自分の損失を認めたくない傾向にあります。

いざ自分のポジションがマイナス圏に入るとなかなか損失を計上(ロスカット)できずに、損失がどんどん増えていく人が多いのです。

 

臆病だから勝てる

 

「臆病」という言葉は決して良い言葉ではないでしょうが、ディールに関しては「臆病」は良い言葉だと思います。

 

例えば、もし今自分がドル円のロングを持っている時に、「中国が台湾侵攻し始めたらいくらまで下がるのだろう?」「大損してしまうのではないか?」と、相場の動きに対して臆病になり、最悪のシュミレーションをしている人がいます。

逆に「米国が予想外の緊急利上げをしたら、いくら大儲けするだろうか?」と最高のシュミレーションをしている人がいるとします。

 

上述のように中国が台湾に侵攻しドル円が急落した場合に、前者は最悪なことを想像していたことで、「これはやばい」と思い、すぐにロスカットをするでしょう。

一方で後者は「え?まさか」と思い初動が遅れますし、最高の状況を考えていたことで、「そう簡単には下がらないだろう」などと思い、夢をまだ追いかけてしまい、なかなかロスカットが出来ないものです。

 

よって、同じロスカットでも臆病者は傷口が浅くすむことが多いのです。


本当に儲かっている人は儲かっていることを吹聴しません。儲かりたい場合は、プライドを捨て臆病でいるのが良いのではないかと思います。

この連載の一覧
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
第89回「カントリーリスク・・・混迷する世界情勢を知らないでやってはいけない?」
第88回「チャートポイントを信じますか?・・こんなチャート利用法はやってはいけない」
第87回「それって何の講演?・・・講演内容を知らないでやってはいけない」
第86回「タカ派ハト派を更新していますか?・・・最新の発言をアップデートしないでやってはいけない」
第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
第78回「なぜ年末は取引をやってはいけないのか・・・応当日の特殊事情」
第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
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第37回「銀行の救済問題、詳細を把握せず取引してはいけない」
第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
第35回「肌感覚を大切にしないでやってはいけない」
第34回「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
第33回「政治家の発言を吟味して取引しないといけない」
第32回「ポンドドル、ポンド円の取引をやってはいけない」
第31回「新たに注目される指標を無視してトレードをやってはいけない」
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【やってはいけないこれだけの理由】第25回「重要イベント前にポジションを取ってはいけない」
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【やってはいけないこれだけの理由】第14回「日銀介入に備える…その3」
【やってはいけないこれだけの理由】第13回「日銀介入に備える…その2」
【やってはいけないこれだけの理由】第12回「日銀介入に備える…その1」
【やってはいけないこれだけの理由】第11回「FXだけで食べていく計画、その3…無料の情報を生かす」
【やってはいけないこれだけの理由】第10回「FXだけで食べていく計画、その2…高額の情報ベンダーと契約する必要はあるか?」
【やってはいけないこれだけの理由】第9回「FXだけで食べていく計画、その1…まずは金融機関と違うことを認識」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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