この数週間、ドル円をトレードしている人は毎日大きな上下の動きに振り回されたことでしょう。
米国の経済指標の結果だけでなく、日銀総裁の人事をめぐる報道や「うわさ」が
よりボラタイルな(=値動きの荒い)相場にしてしまいました。
今回の「やってはいけない」ことは、日銀の人事をめぐる「うわさ」などで、相場が動いた場合
その後の政治家の発言を吟味しないで取引をやってはいけない、理由を記載します。
また、その「うわさ」について、政治家がどのように回答したかをめぐり、
市場関係者はどのようなポジションを持ったのか、
そして、FXを取引したばかりの人は、どのようにポジションを持つべきかを記載したいと思います。
日銀総裁巡り行ったり来たり…ポジションの保持方法は?
日銀の黒田総裁の任期が迫ってきたことから、総裁の後任人事が市場の注目になっていました。
その中で最初にサプライズを出したのが、2月6日の日経新聞で「雨宮現副総裁に総裁を打診」と、報じられたことです。
黒田路線継続という思惑で、ドル円が一気に円安に動きました。
以前、ここでも記載しましたが、本邦の新聞は政治家の意向を先に出すことが多いことで
その情報を信用してポジションを取る意義があると記載しました。
この報道も、市場が円安に動くことは理解できますし、「中長期でも黒田路線継承で円安が続く可能性があるのでは」
との判断を下し、円ショートを持つことは理にかなっていると言えます。
しかし、新聞が掲載された6日から様々な発言が政府から出てきました。
6日午前、鈴木財務相「何も聞いていない」と発言
はじめ、この発言を聞いたときは、「まぁ、政府は最初は否定をするだろうな」というのが多くの市場関係者にとっては共通認識。
政治的決断だけではなく、M&Aなどの企業情報も、はじめの多くは否定から始まることもあります。
6日昼前、磯崎官房副長官「(雨宮氏に総裁打診との報道)そのような事実はない」と発言。
市場関係者は「財務相が否定したのに官房副長官が肯定するわけは行かないよな」という印象。
円買いに反応するものの、それほど大きな円買いにはならず。
6日午後、梶山自民幹事長代行も否定発言。
ここまで、否定が連続すると流石に市場関係者も「あれ?」という印象。
敢えて円を積極的に買い戻さなくても、少なくとも円買い(ドル売り)のチャンスがあったら
逃げ切ろうとの心理が生まれ、徐々にドルの上値が重くなっていきます。
そして、6日夕刻に茂木自民党幹事長が「雨宮副総裁に日銀総裁打診」との報道を否定。
自民党三役の一人が否定。これを翻すのであれば、自民党幹事長の立場が無くなるでしょう。
もう、完全に雨宮日銀副総裁が総裁に就く可能性が薄れた、との判断になります。
ここで、報道についてをもう一度読み直してほしいのですが、今回の報道はあくまでも「打診」だったわけです。
実際に雨宮氏には打診があったようですが、黒田路線を一緒に進めていたこともあり、
本人が同時に身を引くことを決定したようで、決して報道が間違えていたわけではありません。
市場関係者の中には、勝手に「打診」を「決定」「濃厚」など決めつけていた人もいました。
スタートから何も決定されてなかったにも関わらずです。
そして、上述のように
最初の否定→よくあること、2番目の否定→たまにあること
3番目の否定→ちょっと否定が多くて気になる、4番目の否定→これは何か違うぞ、となるわけです。
市場は4番目の否定後も、まだそれほど円の買戻しにはなっていませんでした。
しかし、政治家の発言を吟味すれば、少なくとも4番目の否定がでたらすぐにポジションを閉じるべきでしょう。
その後、再び円安に戻ったとはいえ、10日には植田元日銀審議委員が次期総裁候補となったことで、一時大きく円高に傾いています。
日中、すべての政治家の発言を追いかけるのは難しいでしょうが、為替情報サイトには重要発言も出ていますので
「誰がどのような発言をしたのかを追いかけないでトレードをやってはいけない」と、言えます。