有名芸人のスキャンダルが週刊誌に掲載され、スポンサーが同氏の出ている番組の
コマーシャルを打ち切ったり、提供を止めるなどのことが起きています。
このようなことが起きる度に、「昔と違い今はコンプライアンスが厳しくなった」との声が出ます。
時代の移り変わりとしてコンプライアンスに対しての遵守が徹底されていますが
金融機関や為替の世界でも同様に厳格化されています。
特に、日本よりも欧米金融機関はコンプライアンス遵守徹底が厳しく、
おそらく日本の方が十年か数十年遅れているくらいでしょう。
テレビ局やそこに出演している芸能人と同じで、中にはいまだに昔のルールや慣習から
抜け出せない人たちもいます。
今回は、コンプライアンス強化によって、何が為替の世界にも影響を及ぼしたかなどを記載します。
金融機関はより厳しいルール
金融機関と言えば幅広くなりますが、ここでいうものは銀行や証券会社を中心に記載します。
FX専門の会社やFXがほぼ主の証券会社についての話ではないことを念頭においてください。
証券会社は主にゴールドマンやモルガンスタンレー、野村証券などと考えてください。
まずは、金融機関ではコンプライアンスの研修が相当長い時間をかけて行われます。
転職して入行・入社した時にも数日にわたって行われるほど徹底しているところもあります。
上述したように日本よりも欧米金融機関は特に徹底しています。
私は欧州系の金融機関からこの仕事を始めていますが、同じ欧州系や米系でも80・90年代と
2000年代以後では、コンプライアンス研修も雲泥の差があります。
また、年に数回くらいはオンラインの研修があり、この研修(テストもあり)
をクリアをする義務も生じます。
研修内容は様々で、不正防止はもちろんのこと守秘義務の詳細やダイバーシティ
ほか内容も多岐にわたります。
例えば「会社の外に出る場合は首から入社管理に使うようなネームタグを絶対に付けてはならない」
なども徹底されます。
理由としては、ネームタグを見てA銀行にはBさんという人がいることを、悪人が知った場合には
Bさんの名前を利用して犯罪が行われる可能性があるからです。
金融機関には「金」という一番犯罪者が欲しているものを扱っていることで、一般企業よりも厳しい
コンプライアンスが要求されます。
ディーリングルームもより厳格化
また、ディーリングルーム内ではより厳格なコンプライアンスが要求されます。
例えば、閲覧できるホームページも厳しくなります。
私がいた外資系金融での例ですが、いわゆるエッチサイトなどにアクセス出来ないのは当然として、
賭けに少しでもかかわるサイトにもアクセスはできません。
JRA(日本中央競馬会)のサイトも見れませんし、何かのオッズを調べるのも難しいです。
また、ホットメールやGメールなどのフリーメールにもアクセスできません。
アクセスを制限しているのはウイルス対策もありますが、情報を外部に漏らすことを避けるためでもあります。
よって、ラインをはじめチャットシステムも禁止、SNSもアクセスできないところも多々あります。
そして、携帯電話も基本的には使用禁止になっています。
これも、内部情報を外に漏らさないためでもあり、携帯で私用電話をすることなどもありません。
一部では携帯電話を別の場所に保管してからディーリングルームに入るよう徹底されていることもあります。
また、金融機関内の電話はすべて録音されています。
電話の録音は別室で聞くことが可能で、顧客とのやり取り、ディーラーとボイスブローカーとのトレード
などで認識の祖語(売ったか買ったかわからないなど)を調べるときもあり
何年に一回は問題解決のために録音したものを聞いていました。
また、ロンドンフィキシングを絡んだ大規模不正が発覚した時などは
膨大の録音を調べたとも言われています。
なお、金融機関というよりも一般的に私用電話を社内ですることは社会人の常識としてダメですが
家族に不幸などがあった場合のみ、携帯が禁止されていることで、社内の普通の電話にかかってきます。
厳格化が為替にどう影響したか?
では、このコンプライアンスの厳格化がどのように為替の世界に影響をしたでしょうか?
まずは、上述のようにほぼ全ての通信手段が金融機関内の電話でしか取れなくなったことで
顧客情報などの裏のやり取りが出来なくなったことです。守秘義務がより徹底されたということです。
それまでは、金融機関のディーラー同士で情報を共有することがありました。
チャットやメール、携帯でのやり取りなどが厳しくなかったからです。
しかし、コンプライアンスが厳しくなって以後は、このような情報のやり取りも難しくなりました。
特に外資系金融は、守秘義務違反が見つかった場合は、すぐに解雇マターとなります。
いくら友人とはいえ、自分が解雇されるようなリスクを背負って内部情報を伝達することをしなくなりました。
情報として「今生保がドル買った」「自動車がドルを売った」などというのはほぼ全部嘘です。
昔のように、誰が買った売ったなどが、オンタイムでばれる時代ではないのです。
唯一そのような詳細を知ることが出来るのは、仕事後に直接会って情報を交換するしかありません。
よって、これまで情報を得ることで利益を得ていたディーラーはその情報には頼れず収益機会は減少したと言えます。
ある面、内部情報だけで利益を上げることしかできなかった=コンプライアンス違反のディーラー
が退場することになったのは、市場にとっては決して悪いことではなく健全な世界になったと言えます。
コンプライアンスの重要性を理解しなくてはいけないのは、芸能界やテレビ局だけではなく
様々な世界でも共通なことになっています。