やってはいけないこれだけの理由

第87回「それって何の講演?・・・講演内容を知らないでやってはいけない」

毎週、中央銀行関係者などが講演を行うことで、市場はその講演内容に注目が集まります。

講演が出来ないのは、いわゆるブラックアウト期間にあたりますが、ブラックアウト期間は

第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」

に記載したように、各中銀によって期間が定められています。


講演の内容をアップデートするのは、経済情勢により中銀関係者がハト派からタカ派

もしくはその逆に変わっていることもあり、最新の考えを頭に入れておかなければなりません。

このことも第86回「タカ派ハト派を更新していますか?・・・最新の発言をアップデートしないでやってはいけない」

に記載しました。


講演の重要度を知る


中銀要人の講演内容を知るのは重要ですが、あまりにも頻繁に要人の講演があることで

毎回毎回チェックをするのは大変でしょう。

よって、どの人の講演が重要なのかなどを取捨選択する必要もあります。


例えば、米連邦準備理事会(FRB)関係者でしたら、その年の米連邦公開市場委員会(FOMC)の

投票権のあるメンバーの講演が重要になります。

このことは第21回「FOMC…乗り遅れない!今年のメンバーはもう忘れよう」に記載していますが

今年はクリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコの連銀総裁に投票権は移っています。


また、これらのメンバーでも、FOMCが行われた最初の講演や、重要指標が出た後の講演などは

これまで以上に重要になります。逆に連日講演が行われる場合は余程のことがない限り

新しいことを言うとは思えないので、初日以外は重要度が減ってくるでしょう。


先週の中銀総裁の発言は・・・


先週は5日に植田日銀総裁、6-7日にパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がそれぞれ発言をする機会がありました。


週末の3月2日には「(本邦)政府がデフレ脱却を表明する」との一部報道が流れました。

2月22日の衆議院予算委員会で植田総裁が「基調的な物価上昇率は徐々に高まりつつある」

「デフレではなくインフレの状態にある」と発言したこともあり

5日には植田総裁が政府見解について何か言うのではとの噂を広げた人もいました。


しかし、結局はこのようなことへの言及はなかったのですが、それもそのはずで

事前に植田日銀総裁が何の会議に登壇するかを調べている人からすれば、言及されなかったのは当然と思ったことでしょう。

5日に植田総裁が登壇したのは、フィンテックの最新動向や金融分野での社会課題解決などを議論する「FIN/SUM2024」

だったので、中央銀行デジタル通貨(CBDC)以外の発言が伝わらなかったのは、もっともなことだったのです。


逆にパウエルFRB議長は、半期に一度行われる米上下院・金融サービス委員会で、金融政策や経済情勢に関する証言でした。

経済情勢や金融政策について言及することは確実なことで、この証言は重要なのは誰もが分かることでした。



事前に調べれば無駄にならない


上述のように講演者、講演のタイミング、講演主催者等で、講演の重要度が変わってきます。

わからない場合は検索すれば、どこで、どのような議題の会議に登壇するかはネットでも調べることが出来ます。

また、FRB要人の講演では講演の後に質疑応答があるかなどの有無も丁寧に記載していることもあります。


講演が重要なのは当然ですが、24時間開いているFX市場ですべて見るのは厳しく、重要度の優劣をつけない限り

トレードしている人たちも体がもたないことでしょう。

ほんの少しの検索でわかることですので、事前に調べれば無駄にスタンバイもしなくて済みますので

その少しの検索を行わずに、講演を待っているのは骨折り損のくたびれ儲けになってしまいます。


この連載の一覧
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
第89回「カントリーリスク・・・混迷する世界情勢を知らないでやってはいけない?」
第88回「チャートポイントを信じますか?・・こんなチャート利用法はやってはいけない」
第87回「それって何の講演?・・・講演内容を知らないでやってはいけない」
第86回「タカ派ハト派を更新していますか?・・・最新の発言をアップデートしないでやってはいけない」
第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
第78回「なぜ年末は取引をやってはいけないのか・・・応当日の特殊事情」
第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
第42回「フェドウォッチを見ないでFXをやってはいけない・・・年末は95%利下げ予想」
第41回「高金利通貨は各国の状況を知らないとやってはいけない」
第40回「金融危機はまだ去っていない、最良のCEOの言葉を無視してはやってはいけない」
第39回「ドットプロットとフェドウォッチのずれを判断しないでやってはいけない」
第38回「若者こそFX取引を・・・その2、やってはいけないでなく、やってほしい」
第37回「銀行の救済問題、詳細を把握せず取引してはいけない」
第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
第35回「肌感覚を大切にしないでやってはいけない」
第34回「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
第33回「政治家の発言を吟味して取引しないといけない」
第32回「ポンドドル、ポンド円の取引をやってはいけない」
第31回「新たに注目される指標を無視してトレードをやってはいけない」
第30回「次の日銀総裁の意向を考えないで、やってはいけない」
第29回「他の市場の動きを無視して、やってはいけない」
第28回「中銀の独立性がない国の通貨はやって(買って)はいけない?」
第27回「昨年は何の通貨をやってはいけなかったか?」
第26回「提供されているヒントを無視することを、やってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第25回「重要イベント前にポジションを取ってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第24回「12月にトレードをやってはいけない」
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【やってはいけないこれだけの理由】第22回「金利上昇=通貨買いをやってはいけない」
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【やってはいけないこれだけの理由】第13回「日銀介入に備える…その2」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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