先週は中銀関係者が集合
先週注目されたイベントの一つはスウェーデン中銀(リクスバンク)主催のシンポジウムでした。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、黒田日銀総裁、ベイリー英中銀(BOE)総裁など
多くの中銀関係者が参加しました。
このシンポジウムでは4つのパネル(討論会)が開かれています。
第1回目のパネルの議題は「中銀の独立性と新たなリスク(気候)」
第2回目のパネルは「中銀の独立性と決済と中銀のデジタル通貨」
第3回目のパネルは「中銀の独立性と使命(mandate)」
そして第4回のパネルは「中銀の独立性とグローバル化した世界での政策協調」
がテーマとなりました。
上述のように、すべて「中銀の独立性」がテーマとなっています。
そして、第3回目のパネルに参加したパウエルFRB議長は、物価を安定させるために
「FRBが不人気な決定をしなければならないかもしれない」と発言しています。
では、この発言の背景には何があったのでしょうか?
政治的な圧力をかけまくられるFRB議長
パウエル氏をFRB議長に指名したのはトランプ前大統領ですが、FRBが利上げを行うと
そのトランプ氏はパウエル氏に対して「利上げをするとは常軌を逸している」と非難しています。
また、一時「辞任を迫った」とのが流れました。
トランプ政権からバイデン政権へと変わり、バイデン大統領は表面的にはFRBに対して多くのことは語っていません。
しかしながら、同じ民主党のウォーレン議員などはFRBの利上げを非難するなど
政権が代わっても、FRBは政治的な圧力を受けていることは変わりません。
先週は他国の中銀主催の中で「中銀の独立性」という議題だったからこそ
パウエル氏はうっぷんを晴らすかのように、政治的な圧力に屈することは無いと声高に発言したようです。
中銀の独立性のない国の通貨は売られる
政治家からすれば、国の株価が下がり、景気を冷ましかねない利上げは出来るだけ避けたがります。
しかし、利上げを避けるとインフレが高進してしまうことで、中銀は政治圧力を跳ねのける必要があります。
ただし、残念ながら政治的圧力に屈している国があります。
まず、一番有名なのがトルコ中銀です。
トルコでは民間の調査会社では140%近いインフレが算出されているのにもかかわらず
エルドアン・トルコ大統領の方針で、昨年は利下げに次ぐ利下げを繰り返しました。
当然のようにトルコリラは売られ、先週も対ドルでは引け値ベースで最安値を更新しています。
そして、先週注目されたのが南アフリカです。
先週週初の為替市場は中国のゼロコロナ政策の終了で、中国の景気回復期待に伴い人民元(CNH)買い・ドル売りになりました。
他の多くの通貨に対しても連れてドル売りになりましたが、南ア・ランドはドル売り・ランド買いの反応は限定的でした。
その理由は南アの与党アフリカ民族会議(ANC)のマンタシ議長が、
南アフリカ準備銀行(SARB)の使命(任務・権限)の変更について「与党間で合意した」と発言したことがランド売りの要因です。
これに関してラマポーザ大統領も「(権限変更には)憲法改正が必要で、今後議論される」と発言し、否定はしていません。
ANCは米国や豪州のようにSARBにも「雇用の促進」を使命に加えるように要求しています。
南アの失業率は世界でも最悪水準ということもあり、ANCにも負担を強いようとしています。
現時点ではANCが憲法改正を行うための議席(全議席の3分の2)を保持していないことで、すぐに憲法を改正することはできません。
しかしながら、市場は中銀の独立性が無くなることに懸念を示し、ランドが重くなっています。
もし、南アがトルコのように中銀の独立性がなくなってしまうと、今後もランド売り傾向が進行しそうです。
中銀の独立性が保たれていない国の通貨は売られる傾向にあるので、独立性がない通貨は買ってはいけないと言えます。