やってはいけないこれだけの理由

第28回「中銀の独立性がない国の通貨はやって(買って)はいけない?」

先週は中銀関係者が集合


先週注目されたイベントの一つはスウェーデン中銀(リクスバンク)主催のシンポジウムでした。

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、黒田日銀総裁、ベイリー英中銀(BOE)総裁など

多くの中銀関係者が参加しました。


このシンポジウムでは4つのパネル(討論会)が開かれています。


第1回目のパネルの議題は「中銀の独立性と新たなリスク(気候)」

第2回目のパネルは「中銀の独立性と決済と中銀のデジタル通貨」

第3回目のパネルは「中銀の独立性と使命(mandate)」

そして第4回のパネルは「中銀の独立性とグローバル化した世界での政策協調」

がテーマとなりました。


上述のように、すべて「中銀の独立性」がテーマとなっています。


そして、第3回目のパネルに参加したパウエルFRB議長は、物価を安定させるために

「FRBが不人気な決定をしなければならないかもしれない」と発言しています。

では、この発言の背景には何があったのでしょうか?


政治的な圧力をかけまくられるFRB議長


パウエル氏をFRB議長に指名したのはトランプ前大統領ですが、FRBが利上げを行うと

そのトランプ氏はパウエル氏に対して「利上げをするとは常軌を逸している」と非難しています。

また、一時「辞任を迫った」とのが流れました。



トランプ政権からバイデン政権へと変わり、バイデン大統領は表面的にはFRBに対して多くのことは語っていません。

しかしながら、同じ民主党のウォーレン議員などはFRBの利上げを非難するなど

政権が代わっても、FRBは政治的な圧力を受けていることは変わりません。


先週は他国の中銀主催の中で「中銀の独立性」という議題だったからこそ

パウエル氏はうっぷんを晴らすかのように、政治的な圧力に屈することは無いと声高に発言したようです。


中銀の独立性のない国の通貨は売られる


政治家からすれば、国の株価が下がり、景気を冷ましかねない利上げは出来るだけ避けたがります。

しかし、利上げを避けるとインフレが高進してしまうことで、中銀は政治圧力を跳ねのける必要があります。


ただし、残念ながら政治的圧力に屈している国があります。


まず、一番有名なのがトルコ中銀です。

トルコでは民間の調査会社では140%近いインフレが算出されているのにもかかわらず

エルドアン・トルコ大統領の方針で、昨年は利下げに次ぐ利下げを繰り返しました。

当然のようにトルコリラは売られ、先週も対ドルでは引け値ベースで最安値を更新しています。


そして、先週注目されたのが南アフリカです。

先週週初の為替市場は中国のゼロコロナ政策の終了で、中国の景気回復期待に伴い人民元(CNH)買い・ドル売りになりました。

他の多くの通貨に対しても連れてドル売りになりましたが、南ア・ランドはドル売り・ランド買いの反応は限定的でした。



その理由は南アの与党アフリカ民族会議(ANC)のマンタシ議長が、

南アフリカ準備銀行(SARB)の使命(任務・権限)の変更について「与党間で合意した」と発言したことがランド売りの要因です。

これに関してラマポーザ大統領も「(権限変更には)憲法改正が必要で、今後議論される」と発言し、否定はしていません。

 

ANCは米国や豪州のようにSARBにも「雇用の促進」を使命に加えるように要求しています。

南アの失業率は世界でも最悪水準ということもあり、ANCにも負担を強いようとしています。


現時点ではANCが憲法改正を行うための議席(全議席の3分の2)を保持していないことで、すぐに憲法を改正することはできません。

しかしながら、市場は中銀の独立性が無くなることに懸念を示し、ランドが重くなっています。

もし、南アがトルコのように中銀の独立性がなくなってしまうと、今後もランド売り傾向が進行しそうです。


中銀の独立性が保たれていない国の通貨は売られる傾向にあるので、独立性がない通貨は買ってはいけないと言えます。

この連載の一覧
第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
第78回「なぜ年末は取引をやってはいけないのか・・・応当日の特殊事情」
第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
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第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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