切りの良いレートにオーダーは置かない!
先週、FXを始めたばかりの方と話す機会があったのですが、その方は今回のドル円の上昇相場にうまく参入が出来て、利食い売りを140.00円に置いているとの話になりました。その方に何度か確認したのですが、レートは140.00円という切りの良いレートでした。
その方にもアドバイスをしたのですが、切りの良いレートに買い(ビッド)や売り(オファー)を置くことは「やってはいけません」。
同じレートのオーダーの約定順番は?
切りの良いレートにビッドやオファーを置いてはいけない理由はなぜでしょうか?
まずは切りの良いレートには複数のオーダーが集まりやすいからです。
では、複数のオーダーがあるときに、金融機関のディーラーはどのような順番でそのオーダーを付けて(約定して)いくでしょうか?
仮に140.00円に複数の売りオーダー(オファー)があるとします。
一番重要視されるのは身内のオーダーです。身内というのは、東京で働いている私からすれば、ロンドンやニューヨークなどの同僚ディーラーのものです。
いつからか、ディーラーの中では「Use Discretion」という言葉を頻繁に使うようになりました。Discretionとは「裁量に任せます」という意味です。
その昔は140.00円に売りオーダーを置いたけれど、139.99円までしか上がらなかったら、「自分が140.00円に置いたのが悪かった」という考えを持つディーラーが多数派でした。
しかし、いつの間にか140.00円で売れなかった場合は、「140.00円に売りがあったなら、139.97円やら137.98円あたりで売ってくれよ!センスがない奴だな」と捉えられることが増えていき、身内の利食いオーダーはできるだけつけてあげようという風潮になりました。
よって、140.00円のオファーが約定しなくても、140.00円に近づいたら売りが出てくるわけです。
続いて重要視されるのは、重要顧客です。
例えば大手企業から140.00円の売りオーダーを預かっているとすれば、まずはその大手の売りを優先して約定します。
大手企業は金融機関と為替だけを取引をしているわけではありません。
為替以外にも様々な取引を行い、為替の手数料などと比較にならないほどの大きな手数料などを他の取引で支払ってくれます。
このような顧客を大事にしないわけにはいきません。
あなたのオーダーは一番最後にしか約定されません
大手から中小規模の企業のオーダーと順番は下がり・・・そして、一番最後になるのがFXの顧客です。
理由は複数ありますが、まずは取引されるアマウントが少ないことで、市場における単位ではないことです。
市場では100万ドル単位が1本とされる基準取引単位です。それより少ないアマウントは取引がどうしても後手に回されます。
「私はFX会社での取引高は月間でもすごく多いのに、なんでだ?」と思われるかもしれませんが、そう思われる方の取引高もディーラー間や企業と比較すると僅かなものですし、収益性はさらに低いものです。
よって、失礼ながら個人投資家が行うFXの取引の約定は、一番最後に約定されると覚悟しておく必要があります。
仮に誰よりも先に140.00円に売りオーダーを置いたとしても、この状況は変わらないでしょう。
壁にした売りや防戦の売りも
売りの順番が最後になるのはもちろんですが、140.00円のような切りの良いところには上述したようにオーダーが集まりやすい状況にあります。
そのような場合にディーラーは139.95円から139.99円で売り、140.00円でそのショートポジションを損切ることを行います。仮にストップロスがついても僅か5銭から1銭の損失ですみますが、運よく140.00円に届かず下がった場合はそれ以上の収益を得ることが出来ます。ローリスク・ハイリターンです。このような売り方を「140円の売りオーダーを壁にして手前で売る」とも言います。
また、ノックアウトオプションが切りの良いレートのすぐ上にある場合があり、反対にノックアウトをさせないための防戦の売りも出てきやすいことで、切りの良いレート手前は重くなります。
このような状況ですので、オーダーを置く場合は切りの良いレートではなく、その数レート手前にオーダーは置いておきましょう。140.00円で売りたい場合は139.90円から139.97円程度で売りを置いていくことが良いと思います。