年始明けにたまたまFXを取引している個人投資家の方に
「年末は何で、そんなに取引をしないように促すのですか?」との質問を受けました。
その方も、年末の特殊事情はある程度理解はしていたのですが
それ以外で知らないこともありましたので、もう一度なぜやってはいけなかったのかを振り返ります。
皆知っている、基本的な年末事情
複数回書いていますが、クリスマス前から年明けまでは休暇を取っている為替ディーラーが多いです。
特に外資系金融機関の場合で、本店以外(アジアでは東京やシンガポールなど)で働いているディーラーは
本国(欧米や豪州など)に帰国して、参加者が減少しています。
また、本邦以外の外資系金融機関では休暇の締めが年末であることも多く
これまで消化できていない有給休暇を消化しておこうとの考えもあり、さらに参加者が減ります。
他にも、これも幾度か記載していますが、年末に金融機関のその年の決算としているところも多く
金融機関、ディーリングルーム、ディーラーが損益をあまり振らしたくないとの考えもあり
取引を控える傾向が強まります。
成績の悪かったディーラーは12月に解雇されるところもあり、その場合は否応なく
ディーリングルームの人数が減ってしまいます。
この辺までは、金融機関のディーラー経験者でないひとたちも多くは知っている
年末の特殊事情だと思います。
クロス円などはどのようにカバーしているかの基本から
それ以外では、年末はスポット応当日が異なる特殊事情があるのですが
その前に、クロス円、一部欧州通貨はどのように金融機関は処理しているかの基本を書きます。
例えば、ユーロ円のような流動性が豊富な通貨は、顧客と取引したユーロ円をそのまま
電子ブローキングのようなところでユーロ円のままカバー(取引)でき、スクエアにします。
しかし、ポンド円、豪ドル円やランド円などの通貨は、電子ブローキングでは流動性が
もともと豊富とは言えません。
例えばポンド円の場合は
1…ユーロポンドとユーロ円でカバー、2…ドル円とポンドドルでカバーとなります。
具体的にはポンド買い・円売りのポジションを持った時に、そのポジションをスクエアにするためには
1…ユーロポンドでユーロ買い・ポンド売りをする、更にユーロ円でユーロ売り・円買いをする。
ユーロは売り買いで相殺され、ポンド売りと円買いが残るので、当初持っていたポジションがスクエアになります。
2…ドル円でドル売り・円買い、ポンドドルでポンド売り、ドル買いをする。
ドルは売り買いあるので相殺され、円買いとポンド売りが残り、ポジションがスクエアになります。
ドル/スウェーデンクローナ(SEK)などのカバーも
ドル/SEKは元来流動性が少ないことで、ユーロSEKとユーロドルで行うのが通例です。
クロスのカバーが年末の応当日の特殊事情になる
では、年末のスポット応当日が異なる特殊事情についての説明になります。
まずは、昨年12月28日のスポット応当日はいつになるでしょうか?
通常はドル/カナダドル以外は、2営業日後ですので翌日29日(金)の次の営業日になります
しかし、30・31日は土日になることで、1日(月)となります。しかし、1月1日は元旦ですべての市場は休場
よって2日(火)になります。しかし、日本を含め複数の市場は2日も休場です。
日本の市場が3日(水)も休場なことで、円がらみの応当日はほぼ4日(木)となります。(ロシアは4日も休み)
先ほど挙げたポンド円のことを振り返ってみましょう。
28日にポンドロング・円ショートのポジションを持ち、これをカバーしてスクエアにしなくてはなりません。
上述した2番目の方法(ドル円とポンドドルでカバー)をするとします。
ドル円は応当日4日でプライスが成り立っているのを、ドル売り・円買いをします。
一方のポンドドルは応当日2日でプライスが成り立っているのを、ポンド売り・ドル買いをします。
ここまでは理論的に理解できると思いますが
問題はポンドドルが2日が応当日なので、東京は休場なことで2日の決算のものを4日まで延長しなくてはなりません。
この作業をするのはいわゆるフォワードディーラーでFXディーラーとは違い
デポなどを含め金利面とFXの両方を見ないと作業を行えないディーラーになります。
この作業をしないと、祝日期間中に決済が滞ることになります。
通常はフォワードディーラーには応当日違い以外はそれほど密に連絡を取らないFXディーラーも
年末の取引で年始の決済が滞るようなことをしてしまうと、金融機関全体の信用問題で大ごとになります。
よって、年末はこれまでのように簡単に応当日違いのポジションを持つことが出来なくなるわけです。
このような特殊事情は毎年ありますので、年末の取引は流動性が悪くなることを
理解しないでやってはいけないわけです。