今週の日銀政策決定会合は利上げについて議論
先週に入り、日銀の正副総裁が1月23-24日に行われる日銀金融政策決定会合で利上げについて話し合うと明言しました。
植田日銀総裁は先週15日に「金融政策、経済・物価の情勢の改善が続けば政策金利を引き上げ緩和度合いを調整」「来週の会合で利上げなど行うか判断」と述べています。
氷見野日銀副総裁も14日に「来週のMPM(金融政策決定会合)では、利上げを行うかどうか政策委員の間で議論し判断したい」「議論する焦点は、1月に利上げを行うかどうかになる」と述べています。
12月と1月では何が変わったのか?
12月の政策決定会合では、政策金利は据え置かれただけではなく、植田日銀総裁の会見と質疑応答がハト派よりと捉えらえました。
会見の中継をずっと見ていましたが、春闘の結果が出るまでは利上げはしないような雰囲気を醸し出していました。
それが、急に利上げも議論するというタカ派よりになったのはなぜでしょうか?
12月の政策決定会合から、先週の利上げを議論するという発言まで何があったでしょうか?
まずは経済指標ですが、会合翌日の20日に発表された11月全国CPIコアが前年比で予想を僅かに上回り2.7%(予想2.6%)となりました。
逆に12月27日発表の12月東京都区部CPIは前年比で予想より下回り2.4%(予想2.5%)となっています。
そして、今月9日発表の11月実質賃金は4カ月連続でマイナスになりました。
経済指標だけをみると、決して12月よりインフレが高進したわけではないといえます。
ただ、この間大手企業を中心に今年も賃上げを行うことを示唆しています。
ただ、上述のように実質賃金は4カ月連続でマイナス(10月は横ばいから-0.4%に下方修正)になっています。
過去最大の26カ月連続のマイナスから抜け出せたのが、昨年の6、7月の僅か2カ月であったことで、賃上げにも関わらず実質賃金が減少しているという現状は変わりません。
2%を継続しているインフレ率ということは12月でも同じだったのに、1月になり急遽利上げの話し合いとなった理由を探すのは難しい状況です。
強いて理由を探すとすると、米金利の上昇とともに、本邦の債券利回りも連れた動きになり2年債利回りなどは16年ぶりも高水準を記録したことなどでしょうか。
経済指標は重要か?
このような流れを見ると本邦の経済指標の重要性が分からなくなっています。
実際に12月の植田日銀総裁の会見で、これまで日銀が重要視しているといわれていた基調インフレ率補足指数についても、「結局このデータ(基調インフレ補足指数)が、私どもが常日頃言っています基調的物価上昇率とは、かなりずれたものである」と、インフレ指標として判断していないと思われる発言をしていました。
実際にデータに出ている数値よりも、企業のトップが7日に開催した新年祝賀会で「消費者物価指数を上回る賃上げをしっかりと定着させることが不可欠」などとの、データ的にも裏付けがないことの方が、日銀の政策決定には重要視していると捉えても良いのではないかと思ってしまう次第です。
14日の氷見野日銀副総裁の会見で「金融政策の今後について考え、予測するうえで役に立つように、基本的な考え方や、経済の現状についての見方について発信することは極めて大切」と発言していました。
そして、「多くの中央銀行のコミュニケーションでは、『それぞれの決定会合の時点までに手に入ったデータの全体像をよく見て、会合ごとに判断していく』という姿勢が基本線」とも述べていました。
しかしながら、データをどこから見ているのか全く分からない状況で、市場とのコミュニケーションなどとれるわけがありません。
今後は会合後の総裁の会見などで市場が動意づくことは間違いないものの、その後経済指標等に変化がなくても、次の政策決定会合では180度違う見解になるということを意識しなくてはいけないようです。