為替をトレードするときに何が重要かというと、やはり自分がいかに儲けるかです。
個人投資家はもちろん私利私欲のためにやりますが、それ以外もです。
例えば銀行のディーリングルームで働いていて、仲間の手伝いをしていたから
自分は儲けそこなったこともあるでしょう。
しかし、仲間への手伝いをしたことは褒められたとしても
結局一番重要なのは自分の結果です。
「仲間を手伝っていたので、儲けることが出来ませんでした」
等という言い訳は通じません。
残念なことに、やはり結果がすべてとなる資本主義の世界ですので
様々な面で、自分が一番大事ということを認識する必要があります。
債券市場参加者会合だって自分の利益が重要
先週の9-10日に日銀が「債券市場サーベイ」などに参加する金融機関の実務担当者を
集めて行っている「債券市場参加者会合」が開かれました。
通算で20回目となる同会合ですが、臨時開催が初めてとなっただけではなく
植田日銀総裁が「国債買い入れ減額、市場参加者の意見も聞いて丁寧に進めたい」と
発言していたことで注目度が増しました。
この会合は銀行等グループ、証券等グループ、バイサイドグループに分かれて行われますが
メガバンクを中心に国債買い入れの大幅減額を要望したと伝わりました。
これを聞いたときに、個人的には「やっぱりな、それはそうだよ」と思いました。
というのも、日銀の買い入れ減少は、本邦金融機関が減少分を引き取るとの見方になっていますが
メガバンクにとっては保有国債の含み損を抱える地銀とは違い
含み損よりも金利上昇の収益増加効果が絶大でだからです。
自分の銀行の収益拡大、しかも億単位の利益拡大となるのであれば
当然このような意見を出すのは決まっています。
国債買い入れの大幅減額や今後の利上げなどで、国民生活に悪影響があろうとも
やはり自分の利益が最重要になるでしょう。
政府も利上げを後押し?
この会合の前に、鈴木財務相が「重要な協議で注視したい」と発言していました。
この言葉を聞いたときは「明らかな圧力だし、ずるいよな」と個人的には思いました。
基本的に利上げは国民生活に与える影響が大きいことで、政治家として積極的に
利上げを声にだしにくいでしょう。
しかし、今回もし利上げした場合は政府が圧力をかけたわけではなく
債券市場参加者会合の意見を組み入れたとの言い訳が出来るわけです。
ここでも、他者(債券市場参加者会合)に責任を持たせ、自分たちがマイナスにならない
すなわち、自分の利益になる行動になっていると思われます。
日銀政策決定会合後に変更される経済指標
この会合の前に市場では、さえない経済指標の発表があいつでいることで
日銀は国債買い入れの大幅減額には前向きではないとのうわさも出回っていました。
経済指標については、内閣府発表の1-3月期の実質国内総生産(GDP)確報値に変わりました。
確報値発表前の速報値から改定値は小幅(前年比で-1.9%から-1.8%)に改善されたのが
6月10日、前回の日銀政策決定会合が行われた13-14日のすぐ前でした。
しかし、改定値が出て1カ月弱も経った後に「建設統計の組み入れを間違えました~」と
-2.9%まで大幅に修正したわけです。
すでに市場は7月の日銀政策決定会合での国債買い入れ減額を織り込み
本邦長期金利が高止まりし、引くに引けない状態になっていたわけです。
実は、この改定のはGDPだけではありません。
厚労省が発表した4月の毎月勤労統計調査での実質賃金は速報値で前年比で-0.7%と発表されましたが
改定値は-1.2%まで下がりました。
速報値は日銀政策決定会合前の6月4日に発表され、この改定値は政策決定会合後の6月24日でした。
要するに日銀政策決定会合の前は比較的「まし」な経済指標の発表だったものが
政策決定会合後には相次いで「かなりひどく」下方修正されたのです。
窮地に立たされた日銀
上述の改定値以外でも、ここ最近はさえない経済指標の発表が相次いでいます。
本来ならば、これだけ悪い結果が出ていることで、国債買い入れ減額を大幅に増やすことも二の足を踏む
可能性もあるでしょう。
しかし、市場は大幅減額を織り込み始め、長期債利回りは高止まりしています。
もし、これで大幅減額をしなかった場合は、長期債利回りは急低下し、円売りに拍車がかかることは
疑いようがないと思われます。
要するに日銀は大幅減額をするべきではなくても、何もしないことで起こる副作用が大きいことで
大幅減額の道を選ばざる負えないほど袋小路に嵌っていると思われます。
様々なことが絡み合っていますが、結局は自分の利益を大事にしていることが
経済、為替の世界にも様々な影響を及ぼしていると思われます。