やってはいけないこれだけの理由

第104回「自分が一番大事?・・・様々なことを勘繰らないでやってはいけない」

為替をトレードするときに何が重要かというと、やはり自分がいかに儲けるかです。

個人投資家はもちろん私利私欲のためにやりますが、それ以外もです。

例えば銀行のディーリングルームで働いていて、仲間の手伝いをしていたから

自分は儲けそこなったこともあるでしょう。


しかし、仲間への手伝いをしたことは褒められたとしても

結局一番重要なのは自分の結果です。

「仲間を手伝っていたので、儲けることが出来ませんでした」

等という言い訳は通じません。


残念なことに、やはり結果がすべてとなる資本主義の世界ですので

様々な面で、自分が一番大事ということを認識する必要があります。


債券市場参加者会合だって自分の利益が重要


先週の9-10日に日銀が「債券市場サーベイ」などに参加する金融機関の実務担当者を

集めて行っている「債券市場参加者会合」が開かれました。

通算で20回目となる同会合ですが、臨時開催が初めてとなっただけではなく

植田日銀総裁が「国債買い入れ減額、市場参加者の意見も聞いて丁寧に進めたい」と

発言していたことで注目度が増しました。


この会合は銀行等グループ、証券等グループ、バイサイドグループに分かれて行われますが

メガバンクを中心に国債買い入れの大幅減額を要望したと伝わりました。

これを聞いたときに、個人的には「やっぱりな、それはそうだよ」と思いました。


というのも、日銀の買い入れ減少は、本邦金融機関が減少分を引き取るとの見方になっていますが

メガバンクにとっては保有国債の含み損を抱える地銀とは違い

含み損よりも金利上昇の収益増加効果が絶大でだからです。


自分の銀行の収益拡大、しかも億単位の利益拡大となるのであれば

当然このような意見を出すのは決まっています。

国債買い入れの大幅減額や今後の利上げなどで、国民生活に悪影響があろうとも

やはり自分の利益が最重要になるでしょう。


政府も利上げを後押し?


この会合の前に、鈴木財務相が「重要な協議で注視したい」と発言していました。

この言葉を聞いたときは「明らかな圧力だし、ずるいよな」と個人的には思いました。


基本的に利上げは国民生活に与える影響が大きいことで、政治家として積極的に

利上げを声にだしにくいでしょう。

しかし、今回もし利上げした場合は政府が圧力をかけたわけではなく

債券市場参加者会合の意見を組み入れたとの言い訳が出来るわけです。


ここでも、他者(債券市場参加者会合)に責任を持たせ、自分たちがマイナスにならない

すなわち、自分の利益になる行動になっていると思われます。


日銀政策決定会合後に変更される経済指標


この会合の前に市場では、さえない経済指標の発表があいつでいることで

日銀は国債買い入れの大幅減額には前向きではないとのうわさも出回っていました。


経済指標については、内閣府発表の1-3月期の実質国内総生産(GDP)確報値に変わりました。

確報値発表前の速報値から改定値は小幅(前年比で-1.9%から-1.8%)に改善されたのが

6月10日、前回の日銀政策決定会合が行われた13-14日のすぐ前でした。


しかし、改定値が出て1カ月弱も経った後に「建設統計の組み入れを間違えました~」と

-2.9%まで大幅に修正したわけです。

すでに市場は7月の日銀政策決定会合での国債買い入れ減額を織り込み

本邦長期金利が高止まりし、引くに引けない状態になっていたわけです。


実は、この改定のはGDPだけではありません。

厚労省が発表した4月の毎月勤労統計調査での実質賃金は速報値で前年比で-0.7%と発表されましたが

改定値は-1.2%まで下がりました。

速報値は日銀政策決定会合前の6月4日に発表され、この改定値は政策決定会合後の6月24日でした。


要するに日銀政策決定会合の前は比較的「まし」な経済指標の発表だったものが

政策決定会合後には相次いで「かなりひどく」下方修正されたのです。


窮地に立たされた日銀


上述の改定値以外でも、ここ最近はさえない経済指標の発表が相次いでいます。

本来ならば、これだけ悪い結果が出ていることで、国債買い入れ減額を大幅に増やすことも二の足を踏む

可能性もあるでしょう。


しかし、市場は大幅減額を織り込み始め、長期債利回りは高止まりしています。

もし、これで大幅減額をしなかった場合は、長期債利回りは急低下し、円売りに拍車がかかることは

疑いようがないと思われます。


要するに日銀は大幅減額をするべきではなくても、何もしないことで起こる副作用が大きいことで

大幅減額の道を選ばざる負えないほど袋小路に嵌っていると思われます。


様々なことが絡み合っていますが、結局は自分の利益を大事にしていることが

経済、為替の世界にも様々な影響を及ぼしていると思われます。











この連載の一覧
第122回「トランプ相場もアジア通貨の動きを見ないでやってはいけない」
第121回「第2次トランプ政権・・・Xを見ないでやってはいけない」
第120回「いよいよ大統領選挙・・・この通貨の動向を知らないでやってはいけない」
第119回「円買いの流れを一瞬で止めた石破政権・・・今後の政局を知らないでやってはいけない」
第118回「想定為替レートを知らないでやってはいけない」
第117回「日銀には独立性がないことを知らないでやってはいけない」
第116回「ダブル石破ショック・・・今月は政治に翻弄されることを知らないでやってはいけない」
第114回「ディーラーは変わり身が早いのを知らないでやってはいけない」
第113回「FRBの2大責務…今は何を重要視しているかを知らないでやってはいけない」
第112回「バイアスがかかった考えをもってやってはいけない」
第111回「円相場を見るならアジア通貨の動きを見ないでやってはいけない」
第110回「7・8月の相場を振り返る・・・この反省を生かさないでやってはいけない」
第109回「日銀の政策決定会合の結果発表時間がなぜ定まらないのか」
第108回「日銀のパラダイムシフト2…正副総裁が市場流動性を破壊」
第107回「日銀のパラダイムシフト…これまで通りの考えでやってはいけない」
第105回「スポーツ賭博もFXも②・・・嘘が常態化する人はやってはいけない」
第104回「自分が一番大事?・・・様々なことを勘繰らないでやってはいけない」
第103回「円安を本当に止める気があるのか・・・何が信用できるかを確かめないでやってはいけない」
第102回「クロス円をしっかり見ないでやってはいけない」
第101回「介入を過度に警戒してはいけない」
第100回「CPI後のFOMC、ドットプロントに織り込んだか吟味しないでやってはいけない」
第99回「南ア政局・・・これを知らないでランド取引はやってはいけない」
第98回「G7財務相・中央銀行総裁会議・・・結果を調べないでやってはいけない」
第97回「南ア総選挙、これを知らないでやってはいけない」
第96回「ラーメン3000円も高くない、自作自演の円安を知らないでやってはいけない」
第95回「利上げだけで円安が止まると思ってやってはいけない」
第94回「介入にも限界があることを知らないでやってはいけない」
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
第89回「カントリーリスク・・・混迷する世界情勢を知らないでやってはいけない?」
第88回「チャートポイントを信じますか?・・こんなチャート利用法はやってはいけない」
第87回「それって何の講演?・・・講演内容を知らないでやってはいけない」
第86回「タカ派ハト派を更新していますか?・・・最新の発言をアップデートしないでやってはいけない」
第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
第78回「なぜ年末は取引をやってはいけないのか・・・応当日の特殊事情」
第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
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第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
第42回「フェドウォッチを見ないでFXをやってはいけない・・・年末は95%利下げ予想」
第41回「高金利通貨は各国の状況を知らないとやってはいけない」
第40回「金融危機はまだ去っていない、最良のCEOの言葉を無視してはやってはいけない」
第39回「ドットプロットとフェドウォッチのずれを判断しないでやってはいけない」
第38回「若者こそFX取引を・・・その2、やってはいけないでなく、やってほしい」
第37回「銀行の救済問題、詳細を把握せず取引してはいけない」
第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
第35回「肌感覚を大切にしないでやってはいけない」
第34回「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
第33回「政治家の発言を吟味して取引しないといけない」
第32回「ポンドドル、ポンド円の取引をやってはいけない」
第31回「新たに注目される指標を無視してトレードをやってはいけない」
第30回「次の日銀総裁の意向を考えないで、やってはいけない」
第29回「他の市場の動きを無視して、やってはいけない」
第28回「中銀の独立性がない国の通貨はやって(買って)はいけない?」
第27回「昨年は何の通貨をやってはいけなかったか?」
第26回「提供されているヒントを無視することを、やってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第25回「重要イベント前にポジションを取ってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第24回「12月にトレードをやってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第23回「スケジュールを見ないで取引をやってはいけない…先週なぜ大きく動いたか」
【やってはいけないこれだけの理由】第22回「金利上昇=通貨買いをやってはいけない」
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【やってはいけないこれだけの理由】第17回「市場との対話、今回は大失敗?」
【やってはいけないこれだけの理由】第16回「アジア時間の欧州通貨の動きを捨てる」
【やってはいけないこれだけの理由】第15回「介入に備える…その4、中銀は負けが多い」
【やってはいけないこれだけの理由】第14回「日銀介入に備える…その3」
【やってはいけないこれだけの理由】第13回「日銀介入に備える…その2」
【やってはいけないこれだけの理由】第12回「日銀介入に備える…その1」
【やってはいけないこれだけの理由】第11回「FXだけで食べていく計画、その3…無料の情報を生かす」
【やってはいけないこれだけの理由】第10回「FXだけで食べていく計画、その2…高額の情報ベンダーと契約する必要はあるか?」
【やってはいけないこれだけの理由】第9回「FXだけで食べていく計画、その1…まずは金融機関と違うことを認識」
【やってはいけないこれだけの理由】第8回「儲けるために大事なこと…臆病者が勝つ」
【やってはいけないこれだけの理由】第7回「新聞は読むな?」
【やってはいけないこれだけの理由】第6回「FX詐欺でTKOされないために」
【やってはいけないこれだけの理由】第5回「どのFX指南役が信用できるか、その3」
【やってはいけないこれだけの理由】第4回「140.00円に売りなんて置いてはいけない!」
【やってはいけないこれだけの理由】第3回「どのFX指南役が信用できるか、その2」
【やってはいけないこれだけの理由】第2回「どのFX指南役が信用できるか、その1」
【やってはいけないこれだけの理由】第1回「ナンピンは魅力的。しかし・・・」

為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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