やってはいけないこれだけの理由

【やってはいけないこれだけの理由】第5回「どのFX指南役が信用できるか、その3」

レンジ予想は信じるな


金融機関にいるころから現在まで、報道機関のヒアリングや自分の会社のレポートを含め「予想レート」というものを掲載することが多々あります。

ドル円が138円で取引されている場合で、自分がブル(ドルが上昇するとの予想)であれば、「137円から142円」などと、レンジを右方向に寄せて発表しています。

予想を立てることを求められる為替や株などのエコノミストやディーラーは、似たような取り組みをしていることでしょう。

 

これらの予想レンジは参考にするのは良いでしょうが、私も含めてこの通りに取引をすることはほぼありません。

138円から予想レンジの137円まで下がってきた場合でも、チャートや流れを見て、136.50円まで買うのを手控えるかもしれません。

逆に、ニュース等でこれは一時的にドル円が下がると予想を変えて、137.50円で売ってしまうかもしれません。

 

よって、上述のレンジを求められることに対して、その予想が外れたことを責められるのは、ちょっとかわいそうな面があります。

 

予想を立てるが絶対信用してはいけない指南役

 

それでは、一番信用してはいけない指南役はどのような方でしょうか?

それは「ドルは上昇する」「ドル円は150円まで上値を広げる」などと、これからの動くサイドのみを言っている指南役です。

なぜ信用してはいけないでしょうか?

 

ドル円が139円台に乗せているときに、「ドル円は140円では止まらず150円を目指す」とある指南役が予想を立てるとします。

ここで問題となる1つ目は、現行の水準139円で何も持っていない人は「ここで買うべきか」、もしくは少し下がった「138.50円で買いを置くべきか」、買い水準が全く分かりません。その指南役も買い場については全く言っていません。

仮に、このまま下がることがなく145円まで上昇したら、その指南役は「ほらな!当たっているだろう」と得意気になるでしょう。

しかし、逆に138円なり137円まで下がったとしても、おそらく同様の「ドル円は140円では止まらず150円を目指す」発言を繰り返します。

139円のときに上昇すると言っていたことで、139円で買ったのに、下がっても常に「上昇する」を繰り返す、無責任な指南役が非常に多いです。

更に悪いのが、このような指南役に限っていつに間にか自分は120円で買っていたようなことを後から言うなど、無責任どころか大ウソつきだったりします。

 

これは金融機関に働いていた時もポジションを持つことがない一部のエコノミストや営業担当も似たような傾向にありました。

ポジションを保持するインターバンクディーラーにとって、どこでエントリーする(買う水準・売る水準)を言わない人たちは無責任に言っているだけであり、完全に無視する存在でした。

信用してはいけない指南役は動くサイドを予想するだけで、どの水準でエントリー(買うか売るかなど)を伝えない人です。

 

ストップロスの水準も言わない指南役は信じるな


2つ目は、どこまで下がったら諦めるのか(ストップロスをかけるのか)を言わない指南役も信用してはいけないです。

よくいる無責任男は139円から135円まで下がり、その後に140円まで上昇したとすると、「私の予想は的中した」などと平気な顔で言うことがあります。

しかしながら、上昇する前に4円も下落しているわけですから、多くの人たちは下落局面でカットしている可能性が高いわけです。

 

このような指南役は現在もゴロゴロ見ることが出来ます。無責任な指南役はストップロスの水準を伝えない人です。

 

安全地帯から抜けださない指南役も信じるな


昨日の為替市場で何が起きたかを復習することは非常に重要です。

起きたことをニュースとして読む分にはとても良いことです。

しかし、その起きたことをあたかも「起きるべきして起きた」ような回顧(解説)している指南役には要注意です。

「これだけ上昇したので、昨日は金利も低下するだろうし、ファンドが一度売るのはある程度想定通り」「この水準は転換線があるので支えられた」

などと話している指南役をよく見かけます。

このような文を読むと、おそらく多くの人は「おいおい!そういう傾向があるなら前日にそう書いとけよ!」と思うでしょう。

でも決してそのようなことを書きません。なぜなら常に後付けでしかできず、安全地帯に居座っているからです。

そういう指南役は過去起きたことを、自分の知識を加えもっともらしく言っていますが、決して自分から予想を立てない(立てられない)のです。

自分は予想を立てず、前日起きたことを自分は分かっていたようにふるまう指南役は信用してはいけません。


先週の動きで信用できるか調べられる


さて・・・一時139円台まで上昇したドル円は先週は132円台まで下落しました。

あれだけ、ドル円はまだ上がると語っていた指南役はどう指摘しているでしょうか?


それでも上がると主張している場合は、その指南役はまだロングなのでしょうか?どこでやめるのでしょうか?

予想を翻し上値が重くなると主張している場合は(いつまでも同じ経済情勢や流れではないので、予想を翻すのは全く問題ないですが)

これまでのロングはどこで投げた(ストップロス)を置いたのでしょうか?


もし、これらのことを書いていない場合は、その指南役がどれだけ無責任で信用できないかが、理解できると思います。


まとめ

・予想だけたててエントリーポイントを言わない指南役は信じるな

・ストップロスの水準を言わない指南役は信じるな

・前日や過去に起きたことだけを予想していたような言い方をし、安全地帯から抜け出さない指南役は信じるな


この連載の一覧
第130回「日本の経済指標・・・真剣に読み解いてやってはいけない」
第129回「第2次トランプ政権・・・米国離れを考えないでやってはいけない」
第129回「順張り・逆張り?それぞれ何をやってはいけない?」
第128回「昨年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第128回「短期・中長期のポジションについて・・・ポジションを混同してやってはいけない」
第127回「日銀総裁驚きの発言・・・総裁発言を信じてやってはいけない?」
第126回「第2次トランプ政権・・・脱米国になる可能性を無視してやってはいけない?」
第125回「何が市場を引っ張っているか分からないでやってはいけない」
第124回「12月の日銀政策決定会合・・・データを信じてやってはいけない?」
第123回「FXは専門家に任せてやってはいけない」
第122回「トランプ相場もアジア通貨の動きを見ないでやってはいけない」
第121回「第2次トランプ政権・・・Xを見ないでやってはいけない」
第120回「いよいよ大統領選挙・・・この通貨の動向を知らないでやってはいけない」
第119回「円買いの流れを一瞬で止めた石破政権・・・今後の政局を知らないでやってはいけない」
第118回「想定為替レートを知らないでやってはいけない」
第117回「日銀には独立性がないことを知らないでやってはいけない」
第116回「ダブル石破ショック・・・今月は政治に翻弄されることを知らないでやってはいけない」
第114回「ディーラーは変わり身が早いのを知らないでやってはいけない」
第113回「FRBの2大責務…今は何を重要視しているかを知らないでやってはいけない」
第112回「バイアスがかかった考えをもってやってはいけない」
第111回「円相場を見るならアジア通貨の動きを見ないでやってはいけない」
第110回「7・8月の相場を振り返る・・・この反省を生かさないでやってはいけない」
第109回「日銀の政策決定会合の結果発表時間がなぜ定まらないのか」
第108回「日銀のパラダイムシフト2…正副総裁が市場流動性を破壊」
第107回「日銀のパラダイムシフト…これまで通りの考えでやってはいけない」
第105回「スポーツ賭博もFXも②・・・嘘が常態化する人はやってはいけない」
第104回「自分が一番大事?・・・様々なことを勘繰らないでやってはいけない」
第103回「円安を本当に止める気があるのか・・・何が信用できるかを確かめないでやってはいけない」
第102回「クロス円をしっかり見ないでやってはいけない」
第101回「介入を過度に警戒してはいけない」
第100回「CPI後のFOMC、ドットプロントに織り込んだか吟味しないでやってはいけない」
第99回「南ア政局・・・これを知らないでランド取引はやってはいけない」
第98回「G7財務相・中央銀行総裁会議・・・結果を調べないでやってはいけない」
第97回「南ア総選挙、これを知らないでやってはいけない」
第96回「ラーメン3000円も高くない、自作自演の円安を知らないでやってはいけない」
第95回「利上げだけで円安が止まると思ってやってはいけない」
第94回「介入にも限界があることを知らないでやってはいけない」
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
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第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
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第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
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第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
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第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
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第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
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第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
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第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
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【やってはいけないこれだけの理由】第14回「日銀介入に備える…その3」
【やってはいけないこれだけの理由】第13回「日銀介入に備える…その2」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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