やってはいけないこれだけの理由

【やってはいけないこれだけの理由】第14回「日銀介入に備える…その3」

今回は日銀はどのように介入し、その効果について記載しています。


介入の方法


介入の方法は複数ありますが一番多い方法は、日銀が「100本売ってください」との指示を受ける方法です。

この場合は、とにかく電子ブローキングをたたきまくります。

そして、売り終わった後に「売り終わりました」と連絡します(通常は電話の回線を開いたままにしていますので、金融機関が機械をたたいている音などが筒抜け)。


ここで介入が終わるのではなく、更に「もう、100本売ってください」との指示を受けるのが通常で、それが10回、20回と一度の電話で繰り返されます。

終わった後の事務作業は非常に大変なのですが、その数分後に同様の電話がまたかかってくることも頻繁にあります。


今回の介入で市場が144.30-40円の時に「144.00円で100本売ってください」との指示されたとの

その指示を受けた金融機関がレートを無視して144.00円に売りを置いたとの、うわさもあります。


しかし経験から言いますと「144.00円までで売ってください」と指示されることはありますが、上述のようなことは聞いたことはありません。

ある面、現行水準より下のレートを差されてしまうと、日銀が指示した銀行は144.00円より上で売れたものは自分のものにできることで、

[利益供与手になってしまうからです。


介入の方法、その他


それ以外の介入の方法としては、プライスを聞かれることです。

日銀が「ドル円100本のプライスをください」と聞き、聞かれた方は「144.30-40円です」と応えます。

そして日銀は「ユアーズ(売ります)」と応え、金融機関は打たれたものをカバーします(市場で売りさばきます)


このプライスを聞いてヒットする方法も繰り返されることが多いのですが、

あまりにも左側に寄せすぎるとナッシング(取引しません)と応えられてしまいます。


また、日銀が調節電子ブローキングやボイスブローキング(いわゆるトウキョウフォレックス上田ハーローや日短FXなど)に直接入るときもあります。


介入の規模から起きる問題点


初めの介入は、その行動自体がサプライズなので少額でも効果があります。

しかし、市場は徐々に介入に対しても慣れてきます。

そして、どんどん介入額が増えないと効果がなくなります。


財務省のホームページなどを見れば介入額の詳細が記載されていますが、2003年から2004年にかける介入額は32兆円の大規模介入を行いました。

はじめは普通の市販薬では効いていたものが、徐々に効果が表れず、どんどん強い薬が必要になる状況でした。

そして、強い薬を打っても、一瞬しか効果がなく、薬を服用する前の水準にすぐ戻されてしまいました。



介入額が増えると他にも問題があります。

当時、日銀の電話を取り、そのまま市場をぶったたく(ドル買い)を一人で行っていましたが、一つ大きな問題に直面しました。

それは、日銀に対する与信設定額が足りなくなってしまったことです。


どこの金融機関でも共通していることですが、対顧客、対金融機関に対して与信枠があります。

その与信枠は中央銀行に対しても無制限に設定しているわけではなく、上限が設定してあるわけです。


与信枠の上限を超えて取引することは銀行マンとしてご法度、かと言って介入を断るのもあり得ない。

大慌てでミドルオフィスに電話、本店を巻き込んで、まさにてんやわんやの状態でした。

それほど、1つの銀行に対しても巨額の介入を行ったのです。


この与信枠の問題は介入の効果にも影響を与えます。


市場は目が慣れる


1‐2週間程度は介入の効果はあります。

市場の流動性を無視をしても大きなアマウントの介入を行うわけですので、プライスは飛びまくります。

しかし、市場は上述のようにだんだんとその動きに慣れてきます。


そして、目が慣れた市場参加者は介入に期待をし、(今回であれば)介入前にドル売りを仕込み、介入が入ったと思われるとそこで利食い買いを始めます。

また、介入期待でドルショートにし、介入が入らないから諦めて買うなど、逆にドルを買わなくてはいけない市場参加者も増えてしまいます。


そして、上述の与信枠の問題も出てきます。

介入を行っている金融機関は丁寧にレートをたたくことなどは行わず、何でもよいのでレートをたたいていきます。


そこで明らかにアービトラージができるようになります。

買いが144.20円なのに、売りが144.00円などというプライスが成り立つことがあるわけです。

市場参加者は本来の相場観よりもアービトラージで収益を上げることが出来ることで、ドル売り介入の場合は売っては買いを繰り返し、買い玉が通常以上に出てきてしまいます。


このように介入は徐々に効果が出なくなりますが、次回は介入のこれまでの最大の失敗例を含め記載したいと思います。

この連載の一覧
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第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
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第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
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第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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