今回は日銀はどのように介入し、その効果について記載しています。
介入の方法
介入の方法は複数ありますが一番多い方法は、日銀が「100本売ってください」との指示を受ける方法です。
この場合は、とにかく電子ブローキングをたたきまくります。
そして、売り終わった後に「売り終わりました」と連絡します(通常は電話の回線を開いたままにしていますので、金融機関が機械をたたいている音などが筒抜け)。
ここで介入が終わるのではなく、更に「もう、100本売ってください」との指示を受けるのが通常で、それが10回、20回と一度の電話で繰り返されます。
終わった後の事務作業は非常に大変なのですが、その数分後に同様の電話がまたかかってくることも頻繁にあります。
今回の介入で市場が144.30-40円の時に「144.00円で100本売ってください」との指示されたとの
その指示を受けた金融機関がレートを無視して144.00円に売りを置いたとの、うわさもあります。
しかし経験から言いますと「144.00円までで売ってください」と指示されることはありますが、上述のようなことは聞いたことはありません。
ある面、現行水準より下のレートを差されてしまうと、日銀が指示した銀行は144.00円より上で売れたものは自分のものにできることで、
[利益供与手になってしまうからです。
介入の方法、その他
それ以外の介入の方法としては、プライスを聞かれることです。
日銀が「ドル円100本のプライスをください」と聞き、聞かれた方は「144.30-40円です」と応えます。
そして日銀は「ユアーズ(売ります)」と応え、金融機関は打たれたものをカバーします(市場で売りさばきます)
このプライスを聞いてヒットする方法も繰り返されることが多いのですが、
あまりにも左側に寄せすぎるとナッシング(取引しません)と応えられてしまいます。
また、日銀が調節電子ブローキングやボイスブローキング(いわゆるトウキョウフォレックス上田ハーローや日短FXなど)に直接入るときもあります。
介入の規模から起きる問題点
初めの介入は、その行動自体がサプライズなので少額でも効果があります。
しかし、市場は徐々に介入に対しても慣れてきます。
そして、どんどん介入額が増えないと効果がなくなります。
財務省のホームページなどを見れば介入額の詳細が記載されていますが、2003年から2004年にかける介入額は32兆円の大規模介入を行いました。
はじめは普通の市販薬では効いていたものが、徐々に効果が表れず、どんどん強い薬が必要になる状況でした。
そして、強い薬を打っても、一瞬しか効果がなく、薬を服用する前の水準にすぐ戻されてしまいました。
介入額が増えると他にも問題があります。
当時、日銀の電話を取り、そのまま市場をぶったたく(ドル買い)を一人で行っていましたが、一つ大きな問題に直面しました。
それは、日銀に対する与信設定額が足りなくなってしまったことです。
どこの金融機関でも共通していることですが、対顧客、対金融機関に対して与信枠があります。
その与信枠は中央銀行に対しても無制限に設定しているわけではなく、上限が設定してあるわけです。
与信枠の上限を超えて取引することは銀行マンとしてご法度、かと言って介入を断るのもあり得ない。
大慌てでミドルオフィスに電話、本店を巻き込んで、まさにてんやわんやの状態でした。
それほど、1つの銀行に対しても巨額の介入を行ったのです。
この与信枠の問題は介入の効果にも影響を与えます。
市場は目が慣れる
1‐2週間程度は介入の効果はあります。
市場の流動性を無視をしても大きなアマウントの介入を行うわけですので、プライスは飛びまくります。
しかし、市場は上述のようにだんだんとその動きに慣れてきます。
そして、目が慣れた市場参加者は介入に期待をし、(今回であれば)介入前にドル売りを仕込み、介入が入ったと思われるとそこで利食い買いを始めます。
また、介入期待でドルショートにし、介入が入らないから諦めて買うなど、逆にドルを買わなくてはいけない市場参加者も増えてしまいます。
そして、上述の与信枠の問題も出てきます。
介入を行っている金融機関は丁寧にレートをたたくことなどは行わず、何でもよいのでレートをたたいていきます。
そこで明らかにアービトラージができるようになります。
買いが144.20円なのに、売りが144.00円などというプライスが成り立つことがあるわけです。
市場参加者は本来の相場観よりもアービトラージで収益を上げることが出来ることで、ドル売り介入の場合は売っては買いを繰り返し、買い玉が通常以上に出てきてしまいます。
このように介入は徐々に効果が出なくなりますが、次回は介入のこれまでの最大の失敗例を含め記載したいと思います。