先週何が起こったか?
先週末12月17日の日経新聞に
「政府、日銀との共同声明見直し論」との報道が流れました。
2%の物価上昇目標の達成時期や範囲をより柔軟にしたり、表現の一部を修正したり
との内容になっています。
この報道を受けて、12月19日月曜は早朝こそ136円台から135円後半まで円高が進みました。
しかし、市場はこの記事を無視するかのようにドル買い・円売りを仕掛け
137円半ばまでドル円は上昇しました。
市場は常に先取りをすることが重要なのにもかかわらず
来春の話を今から気にしてはいけない、など楽観論も流れていました。
ある面、平和ボケ、年末・クリスマス前のボケ状態でした。
そして、事は起こりました・・・20日の日銀は金融政策決定会合で
長短金利操作の運用に関し、長期金利の許容変動幅を従来の
「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大すると発表しました。
ドル円は当日の高値から7円弱の円買い・ドル安が進行となりました。
新聞に書かせられることがある
以前、こちらのコラム第7回に「新聞は読むな?」に
日本の新聞は石橋を叩いて渡る傾向があり、新聞に出たらトレンド終了の可能性と記載しました。
また、同時に「政府なり各省庁の誰かの意向で書かせているだろうと記事を稀に見つけることが出来る」
とも記載しました。
同コラムには「円安抑制のような記事が日経新聞に記載する回数が増えた場合などは、
政治家や財務省の意向が働いているかもしれません。」
「これまでも、不自然な記事を見かけ、そこから潮の流れが変わったことも過去にあります。」とも記載しました。
まさに17日の週末に掲載されていた内容はこれに当てはまります。
しかも、日銀というよりも政府・財務省の圧力を感じる内容です。
しかし、市場参加者はこれまでも黒田日銀総裁の頑なな姿勢から、新聞の内容を無視してしまいました。
しかも、質が悪いのが松野官房長官が19日に
「(政府・日銀の共同声明改定報道について)そのような方針を固めた事実はない」と否定してしまったことです。
このような会見はグレーでやり過ごすこともできたものを、敢えてきっぱり否定してしまったことで
市場との対話という意味では大失敗になってしまいました。
一部では、「増税の公約をしていないのに、簡単に増税する岸田政権の言葉を信じるのが間違え」、との辛辣なコメントも聞こえます。
政府の圧力?日銀の独立性の問題も?
今回の日銀政策決定会合後に行われた、黒田日銀総裁の会見ですが
テレビ配信を見ても、どこか元気のないような姿とも見受けられました。
「金融引き締めではない」と述べても、実質は金利引き上げと捉えられる行動ですので、説得力がありません。
黒田日銀総裁は、本当は今回の決定に反対だったのではないかとさえ思ってしまいます。
黒田日銀総裁の任期満了が近いというのもあるのでしょうが、浮かない総裁の顔を見ていると
政府主導による利上げなのではないかとの声も出ています。
今回の件で日銀が政府との独立性についても疑問符がついたともいえそうです。
このような状況になったことで、今後はより新聞などの政府見解に目を光らせる必要がありそうです。
そして、新聞がヒントを出している記事を無視するのは、やってはいけないでしょう。