本来は、「若者こそFX取引を」の続編を記載する予定でしたが
今回は金融危機不安が再燃していることで、こちらの話題について記載します。
この数週間の市場の目が集まっているのは、金融機関のシステム不安を払しょくできないことです。
そして、シリコンバレー銀行(SVB)が破綻し、新たなリーマンショック再来との話も出ています。
また、複数の米銀が破綻しただけでなく、大手クレディ・スイス・グループの経営不安も再燃しています。
ここで重要なのは、多くの市場参加者が、中央銀行や政府が経営危機に直面した金融機関について
その取扱いを勘違いしていることです。
救済問題の本質を分からずに、取引をすることは痛い目に合ってしまいます。
過去の破綻も想定外だった
そもそも、多くの人たちが、大手の金融機関が破綻することは無いだろうと
いまだに思っていることでしょう。
しかし、日本でも都市銀行の1つだった北海道拓殖銀行
3つしかなかった長期信用銀行のうちの2つ、日本長期信用銀行、日本債権信用銀行
4大証券の1つだった山一證券・・・これらはいずれもなくなっています。
また、海外でも「女王陛下の銀行」と言われたベアリングス銀行
そして、リーマンブラザーズなどの大手もなくなりました。
破綻するべきして破綻したと思われる方もいるでしょうが
当時は「これだけのビッグネームが破綻するわけがない」
「いずれは国が助けてくれるだろう」などと思っていたわけです。
この経験を実際に体験すると、一回金融機関が経営危機に陥ると
何が起きてもおかしくはないという気持ちになるでしょう。
しかし、この経験がない投資家からすると、甘く考えがちになります。
流動性供給と銀行救済は異なる
今回の金融危機に関して、一番気になる点が市場参加者の中で
中央銀行による流動性供給と銀行救済が同じと捉えようとしている方が多いことです。
CS株が大幅に下落していた今月15日に
スイス中銀(SNB)とスイス金融市場監督局(FINMA)が共同声明を発表しました。
声明ではバーゼルⅢを厳守していることで「必要であれば、SNBはCSに流動性を提供する」
と、発表しました。
この発表を受けて、市場がリスク回避で売られていたドル円やユーロの買い戻しに動くのは
ある程度は理解できますが、この発表で「CSは安泰」と
捉えた人があまりにも多くいるのには驚きました。
しかし、決して安泰というわけではありません。
中央銀行による流動性供給と銀行救済は全く別物だからです。
金融機関が資金繰りに苦しんだり、経営の問題が生じた場合に
バーゼルⅢを守っていた金融機関に対して、中央銀行も政府も無視をするわけにはいきません。
まずは、できることを金融機関に対して行おうとします。それが流動性の供給です。
銀行救済は税金も投入される
では銀行救済とはどういうことでしょう?
実は私が以前働いていた英系金融機関は、まさにこの銀行救済を受けて助かりました。
救済するために英国政府が金融機関の株を8割以上も買いました。
政府が私企業の株を買う、これは国民の税金で株を買うことを意味しています。
当然のように国民は金融機関の救済のために税金を使うことに不満を持ち
英国の一部支店では、ごみを投げられたり、窓を割られるなどの暴動も起きました。
余談ですが、この措置の後に、私は英本店へ出張せざる終えなかったのですが
タクシーの中で「どこで働いているんだ?」と運転手さんに聞かれましたが
絶対に本当のことを言えないほど危険な雰囲気でした。
流動性供給は、取りあえず貸し渋られて困っているのなら助けますよというものです。
一方で銀行の本格救済は、国及ぼ国民が一つの私企業を助けるための行動です。
政治家からすれば、国民の不満がたまるこの行動に舵を切ると
選挙で負ける可能性も高まり、簡単にできるわけではありません。
経営危機と言われている、CS並びに複数の米系支店などがこの後どのような道を進むかはまだ分かりません。
しかし、流動性供給で「これで銀行は救われて、リスク回避の動きは終了!」
などと言うことはありません。(回避できることを祈りたいですが)
今後の救済がどのようになるかを分からずに、決めつけてのトレードはやってはいけないと言えるでしょう。