やってはいけないこれだけの理由

第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」

ハマスによるイスラエル侵攻


10月7日にパレスチナのイスラム組織ハマスが、イスラエルに対してロケット弾や

戦闘員の大規模攻撃を仕掛けたことから、市場関係者の多くはこの影響がどのように

金融・FX市場に影響を及ぼすのかが焦点になってきました。


個人的にもユダヤ教徒の家族と生活してきたこともあり、

ユダヤ教徒の友人・知人が多くいることで、今回のハマスの攻撃に対して様々なSNSなどで

発信する件数が多大になるなど、ことの大きさを痛感させられます。


また、外資系金融機関の多くはユダヤ資本であることだけでなく、

多くのユダヤ教徒の方が金融機関で働いていることもあり、

我々日本人よりも今回の件への注目度が高まっています。



しかし、我々日本から中東を眺めると、かなり立地的にも遠く、

ユダヤ・イスラムどちらの宗教にも偏る気持ちを持っていない人が多いことや、

これまでの数千年の歴史を理解するのが難しく

ニュースを追いかける程度になってしまうのが現状ではないでしょうか?


これまでと違うリスク回避の動き


とは、言うもののFXに手を出しているのであれば、

中東情勢が今後どのように動くかに目を通す必要があります。

イスラエル、パレスチナ並びにハマスなどのことを、

wikiなどで軽くでもよく調べておくのも今後役に立ちそうです。


ただし、今回のハマスの侵攻がこれまでのリスク回避の動きが

これまでと異なっていることにも警戒が必要でしょう


通常、リスク回避であれば、安全(避難)通貨とされる、

スイスフラン(CHF)や円が買われます。

ハマス侵攻後のドルCHFは9日の週明け0.9101CHFから、20日には0.8921CHFまでフラン買いが進んでいます。

米金利は上昇しているにもかかわらず、フランは強含んでいるわけです。


また、欧州では対ドルよりも圧倒的に取引量が多いユーロCHFは

0.9601CHFから0.9417CHFまでフラン高が進みました。フランの年初来高値を更新しています。


一方、円は同じ安全(避難)通貨であるものの

9日のドル円は149.07円、そして20日には149.99円まで円安が進んでいます。

10日こそは一時148.17円まで円買いが進みましたが、それ以後は円安基調が続いています。


多くの市場関係者が、リスク回避で円高に傾く可能性もあると予想しましたが、そのようにならず

逆にこの円高予想で、ドル円を買いそびれたままの市場参加者もいます。


FXだけでなく、原油価格も侵攻後には大幅上昇したものの、上げ幅はさほど大きくありません。

産油国通貨のカナダドル(CAD)はこの2週間で対ドルでは小幅安になっています。


地上侵攻・及び戦火拡大には要注意


この後の中東情勢はどうなり、FXはどうなるのでしょうか?

先週はバイデン米大統領はじめ、欧米の指導者がイスラエルを訪問し、支持を表明しているものの

ガザ住民の被害抑制へイスラエルを説得しました。



イスラエル側は地上侵攻を辛うじて踏みとどまっていますが、今週はついに侵攻するするのではとの

一部報道も出ています。

この中東情勢が複雑化しているのは、パレスチナ側にロシアがつき、中国も同様の傾向にあります。


イスラエルが地上侵攻をした場合には、イランがパレスチナ支援に回ることや

ハマスだけでなく、ヒスボラがイスラエルに再攻撃をする可能性もあり

戦火が中東だけでなく、更に拡大する可能性もあるでしょう。


また、欧米諸国が中東にかかわっている間に、ロシアがウクライナ侵攻の勢いを強め

欧州情勢がさらに混乱するかもしれません。


その場合FXはどうなるのでしょうか?

本来ならば地政学的に中東や欧州よりも離れている円は買われるべきでしょうが

この数週間はそのような動きになっていません。


やはり、スイスフランが強含むのではないかとも思われます。

ただし、この記事を記載中にスイスは総選挙が行われています。

右翼政党が得票を伸ばすとされている予想があることで、この影響も考えフランも動くでしょう。


今回の中東情勢はこれまでのリスク回避とは違う動きになることが多く

始めは教科書通りのリスク回避のポジションを仕掛けて上手くいくような気もしますが

上述のように長続きしない可能性があることで、いつまでも通常のリスク回避のような

ポジションの持ち方はやってはいけないでしょう。




この連載の一覧
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
第89回「カントリーリスク・・・混迷する世界情勢を知らないでやってはいけない?」
第88回「チャートポイントを信じますか?・・こんなチャート利用法はやってはいけない」
第87回「それって何の講演?・・・講演内容を知らないでやってはいけない」
第86回「タカ派ハト派を更新していますか?・・・最新の発言をアップデートしないでやってはいけない」
第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
第78回「なぜ年末は取引をやってはいけないのか・・・応当日の特殊事情」
第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
第42回「フェドウォッチを見ないでFXをやってはいけない・・・年末は95%利下げ予想」
第41回「高金利通貨は各国の状況を知らないとやってはいけない」
第40回「金融危機はまだ去っていない、最良のCEOの言葉を無視してはやってはいけない」
第39回「ドットプロットとフェドウォッチのずれを判断しないでやってはいけない」
第38回「若者こそFX取引を・・・その2、やってはいけないでなく、やってほしい」
第37回「銀行の救済問題、詳細を把握せず取引してはいけない」
第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
第35回「肌感覚を大切にしないでやってはいけない」
第34回「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
第33回「政治家の発言を吟味して取引しないといけない」
第32回「ポンドドル、ポンド円の取引をやってはいけない」
第31回「新たに注目される指標を無視してトレードをやってはいけない」
第30回「次の日銀総裁の意向を考えないで、やってはいけない」
第29回「他の市場の動きを無視して、やってはいけない」
第28回「中銀の独立性がない国の通貨はやって(買って)はいけない?」
第27回「昨年は何の通貨をやってはいけなかったか?」
第26回「提供されているヒントを無視することを、やってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第25回「重要イベント前にポジションを取ってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第24回「12月にトレードをやってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第23回「スケジュールを見ないで取引をやってはいけない…先週なぜ大きく動いたか」
【やってはいけないこれだけの理由】第22回「金利上昇=通貨買いをやってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第21回「FOMC…乗り遅れない!今年のメンバーはもう忘れよう」
【やってはいけないこれだけの理由】第20回「ファンダメンタルズには逆らうな」
【やってはいけないこれだけの理由】第19回「日本語を信じるな…翻訳ソフトで良いので原文を読む」
【やってはいけないこれだけの理由】第18回「サプライズ介入は成功するのか?」
【やってはいけないこれだけの理由】第17回「市場との対話、今回は大失敗?」
【やってはいけないこれだけの理由】第16回「アジア時間の欧州通貨の動きを捨てる」
【やってはいけないこれだけの理由】第15回「介入に備える…その4、中銀は負けが多い」
【やってはいけないこれだけの理由】第14回「日銀介入に備える…その3」
【やってはいけないこれだけの理由】第13回「日銀介入に備える…その2」
【やってはいけないこれだけの理由】第12回「日銀介入に備える…その1」
【やってはいけないこれだけの理由】第11回「FXだけで食べていく計画、その3…無料の情報を生かす」
【やってはいけないこれだけの理由】第10回「FXだけで食べていく計画、その2…高額の情報ベンダーと契約する必要はあるか?」
【やってはいけないこれだけの理由】第9回「FXだけで食べていく計画、その1…まずは金融機関と違うことを認識」
【やってはいけないこれだけの理由】第8回「儲けるために大事なこと…臆病者が勝つ」
【やってはいけないこれだけの理由】第7回「新聞は読むな?」
【やってはいけないこれだけの理由】第6回「FX詐欺でTKOされないために」
【やってはいけないこれだけの理由】第5回「どのFX指南役が信用できるか、その3」
【やってはいけないこれだけの理由】第4回「140.00円に売りなんて置いてはいけない!」
【やってはいけないこれだけの理由】第3回「どのFX指南役が信用できるか、その2」
【やってはいけないこれだけの理由】第2回「どのFX指南役が信用できるか、その1」
【やってはいけないこれだけの理由】第1回「ナンピンは魅力的。しかし・・・」

為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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