ウクライナ・ロシアの停戦交渉はじまる
トランプ米大統領が、昨年の大統領選挙の時から、ウクライナとロシアの戦争について「就任すれば24時間で戦争を終わらせる」と発言していました。
ただ、就任直前の1月初旬には「(停戦までは)6カ月欲しい」と前言を撤回。
そして、今月上旬からいよいよ、米露の停戦交渉が始まり、市場では停戦期待の高まりで一時ユーロが買われる展開になりました。
トランプ米大統領が求めるのはあくまでもディール
自分(自国?)の利益にしか興味がないトランプ米大統領ですが、なぜ地政学的にも遠いウクライナとロシアの停戦に介入しようとしているのでしょうか?
それは、ウクライナにある希土類鉱物資源を米国が確保しようとしているからです。
すでに、今回の交渉では希土類鉱物資源の採掘権を50%トランプ米大統領が要求したことが報じられています。
ウクライナには電気自動車のバッテリーやエネルギー貯蔵装置の生産に不可欠な、欧州最大級のリチウム鉱山があります。
また、航空宇宙および防衛製造における戦略的な金属のチタンもあります。
ほかにも、ベリリウム、マンガン、ガリウム、ウラン、ジルコニウム、グラファイト、アパタイト、蛍石、ニッケルの重要な鉱床があるなど、鉱物の宝庫なのです。
欧州の平和などに全く興味のないトランプ米大統領ですが、自分が儲かるチャンスを決して逃そうとしないビジネスマンです。
今回ロシアが侵攻したドネツクとルガンスクはウクライナにあるとされる12兆ドルの鉱物資産のうちの7兆ドルがあるとされています。
要するのこの戦争自体、ロシアの鉱物搾取が目的で、その独占を許さないだけではなく、米国も資源獲得に加わろうとしているのです。
だから、米国とロシアによるウクライナ分割統治の話が出てきているわけです。
欧州圏にとってはウクライナの脅威は自分たちの脅威・・・深まる米・欧州の溝
米国からすると、遠い欧州での戦争の仲介に名乗り上げたのはこのような要因があります。
しかし、5日にミュンヘンで行われた安全保障会議で、ウクライナとロシア担当の米国特使のケロッグ氏は欧州の停戦交渉の参加を拒否したことには欧州サイドは不快感を示しています。
欧州圏からすると、ナチスによるオーストリア併合を許したことで、その後のナチスの拡大につながったという過去の苦い経験もあります。
よって、ウクライナを侵攻したロシアの行動を認めてしまうと、今後は自国にも同じことを許すことにもなり、断固として反対を示しています。
これまでは、欧州と米国とは北大西洋条約機構(NATO)の一員として防衛面でも協力姿勢を保ち、現時点でも米国の意向をある程度組んでいました。
しかし、NATOも一枚岩ではいかなくなっています。
先週末のテレグラフ紙でスターマー英首相は「平和維持のためウクライナに英国軍を派遣する用意がある」と述べ、欧州圏の立場はロシアに譲歩する可能性が少ないままです。
英政権についてはトランプ政権の中枢を担うイーロン・マスク氏が現労働政権を批判。
バンス米副大統領は独総選挙を前に、移民排斥を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への実質的な支持を表明するなど、欧州の現政権と米政権の溝が深まっています。
このような状況では、ウクライナとロシアへの停戦期待が急速に萎む可能性もあり、これまで買われていたユーロの上値が抑えられることもありそうです。
考えてみても、隣国が蹂躙されているのを、超大国2国がその運命を決定づけることを許すわけありません。
ウクライナとロシアの停戦について、米露間で合意が見られた場合でも、欧州がそれを認めない可能性も大いにあるでしょう。
米国だけの発表でユーロをはじめFXは動くこともあります。
しかし、ほかの国の立場も考えないで取引するのはやってはいけないでしょう。