やってはいけないこれだけの理由

第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」

歴史は繰り返す


ロシアが昨年2月にウクライナ侵攻をしたとき、プーチン大統領の掲げた侵攻理由は

「ロシア、そして国民を守るにはほかに方法がなかった」と発言しました。

それは、ウクライナ東部で、ロシア系の住民をウクライナ軍の攻撃から守るという理由です。


この言葉を聞いたときに、世界史、近代史などを勉強してきた人たちは

おや?どこかで聞いたことがあるぞ?と思ったことでしょう。


それは、ナチス・ドイツが行った「ズデーテン併合」です。

ナチスが世界の脅威となり始め、オーストリア併合を達成したヒトラーは

次の標的としてチェコスロバキアに目を向けました。



そしてドイツとチェコスロバキアの国境沿いの地域に多数のドイツ系住民がいることで

このドイツ系住民がチェコスロバキアで迫害されているという言い訳をつけて

チェコスロバキアに攻撃を仕掛けました。


一度は進行を見送ったヒトラーでしたが、英国やフランスがドイツに対して

一戦を交える気配を感じないと、再びチェコスロバキアのズデーテン地方の「ドイツ人党」党首に

強引にチェコスロバキアと断交させます。


仲裁に入った英国のチェンバレン首相は、なんとすべてヒトラーの要求する条件を

全てのんでしまいました。


その後、ヒトラーはズデーテン地方だけでなく、チェコスロバキアを併合します。

そして、欧州全体に向けてヒトラーは領土拡大を図ったわけです。

今回のウクライナ危機で、欧州各国がロシアによるウクライナ領土を獲得させないようにするのは

このような苦い経験を積んでいるからでしょう。


このように、歴史は繰り返されるわけで

人間が歴史(=過去)を学ぶの意義があるのではないでしょうか?


FXも歴史を繰り返す、また自分も同じことを繰り返す


前置きが長くなりましたが、このように戦争のきっかけも歴史を繰り返すわけですが

FXの世界でも歴史は繰り返します。

例えば、金融危機などは数十年に一度は必ず繰り返します。


その金融危機でどのように金融市場は動き、FXが影響を受けたかなどを覚えておくと

新たな金融危機が発生した時に、どのようなポジションを持てば儲かるかをつかめます。


もっと身近なのは、自分のFXの取り引きも同じことを繰り返してしまうことが多々あります。

例えば「自分のポジションはいつも同じ時間に損切りが付く」

「はじめは利が乗っているが、たいていは損切りが付く」など、同じ傾向がある人もいるでしょう。


その損切りが付く原因が、自分のパターンとなり、実は繰り返している可能性があります。

その原因を突き止めることが、今後の自分のFX取引の損失の縮小(利益の拡大)にもなります。


例えば、自分が置いたストップロスが夏時間だと21時半過ぎに必ずついてしまう方もいるでしょう。

そして、その原因を調べてみると、21時半に多くの米国経済指標が発表されることで

経済指標の結果に振らされることで、損切りがついていたりします。


また、他にも、東京仲値にかけて損切りがついてしまう

欧州勢が参入した途端に損切りが付くなどもあるかもしれません。

指標発表後は損切りはつかなかったのにも関わらず、その翌営業日に損切りがついてしまうなどもあるでしょう。


振り返ってみると、同じパターンを繰り返している人も多くいます。

そのパターンにはまらないようにし、ポジションをうまくマネージするためにはどうすれば良いでしょうか?

一番簡単なことは、自分のトレードのログを付けておくことをだと思います。



例えば、どの通貨を、どの水準で何時頃作り、その結果どの水準で利食う(もしくは損切り)したか

その時間は何時だったか、何ピップス先にストップロスを置いたか、

また指標発表後は何ピップス市場は動いたかなどをデータ化したり

簡潔にノートに記載するだけでも良いでしょう。


損失はすぐに忘れたいので、ログを書きたくなくなるかもしれませんが、損切りの時こそ書く必要があります。

自分がなぜ儲けが薄いのか(もしくは損が大きいのか)などを調べることは非常に役に立ちます。


歴史は繰り返すわけですので、為替の動向のパターンも見えてきたりするときもあります。

自分の過去のパターンを反省しないと、再び同じかたちでロスを計上しますので

過去の失敗した動きを忘れるようであれば、損失は増すばかりでFXはやってはいけないと思います。

この連載の一覧
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
第89回「カントリーリスク・・・混迷する世界情勢を知らないでやってはいけない?」
第88回「チャートポイントを信じますか?・・こんなチャート利用法はやってはいけない」
第87回「それって何の講演?・・・講演内容を知らないでやってはいけない」
第86回「タカ派ハト派を更新していますか?・・・最新の発言をアップデートしないでやってはいけない」
第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
第78回「なぜ年末は取引をやってはいけないのか・・・応当日の特殊事情」
第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
第42回「フェドウォッチを見ないでFXをやってはいけない・・・年末は95%利下げ予想」
第41回「高金利通貨は各国の状況を知らないとやってはいけない」
第40回「金融危機はまだ去っていない、最良のCEOの言葉を無視してはやってはいけない」
第39回「ドットプロットとフェドウォッチのずれを判断しないでやってはいけない」
第38回「若者こそFX取引を・・・その2、やってはいけないでなく、やってほしい」
第37回「銀行の救済問題、詳細を把握せず取引してはいけない」
第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
第35回「肌感覚を大切にしないでやってはいけない」
第34回「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
第33回「政治家の発言を吟味して取引しないといけない」
第32回「ポンドドル、ポンド円の取引をやってはいけない」
第31回「新たに注目される指標を無視してトレードをやってはいけない」
第30回「次の日銀総裁の意向を考えないで、やってはいけない」
第29回「他の市場の動きを無視して、やってはいけない」
第28回「中銀の独立性がない国の通貨はやって(買って)はいけない?」
第27回「昨年は何の通貨をやってはいけなかったか?」
第26回「提供されているヒントを無視することを、やってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第25回「重要イベント前にポジションを取ってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第24回「12月にトレードをやってはいけない」
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【やってはいけないこれだけの理由】第14回「日銀介入に備える…その3」
【やってはいけないこれだけの理由】第13回「日銀介入に備える…その2」
【やってはいけないこれだけの理由】第12回「日銀介入に備える…その1」
【やってはいけないこれだけの理由】第11回「FXだけで食べていく計画、その3…無料の情報を生かす」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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