新型コロナウイルスが始まったばかりのころに、テレビに出演している株式アナリストが
「風邪のようなもの」「すぐに収まります」と発言していました。
しかし、実際にはウイルスが終焉するのに、数年の月日を要することになったのはご存じのとおりかと思います。
やはり、株式アナリストがウイルスばかりか医療関係にも精通していないにもかかわらず
憶測で言うことの無責任さと当てにならないこと、そして、そのような情報を信じてはいけないことを痛感させられました。
最良の銀行CEOの意味することは?
逆に自分たちが確信が持てない中で、プロ中のプロが話したことについては
注意深く耳を傾ける必要があると個人的には思っています。
ここ最近気になったのが、今月4日にJPモルガンチェースの最高経営責任者(CEO)のダイモン氏が
「米国の銀行危機はまだ終了しておらず(Not Over Yet)、影響は何年にもわたり継続する」
と株主に向けた年次報告書で示したことです。
ダイモンCEOは「タイム」誌の発表する世界で最も影響力のある100人に選ばれ
最良のCEOにもかつては選ばれている人物です。
今回の金融危機が起こった時には、イエレン米財務長官に呼び出され会談を持ってもいます。
米銀ファースト・リパブリック・バンクの救済についても
ダイモンCEOとイエレン財務長官が中心となって動いたということは、すでに報道されています。
そのダイモン氏が上述のように「危機が終わっていない」と発言していることは
一般のエコノミストやアナリストの見解などとは比較にならないほど重要な意味があるでしょう。
金融危機は副作用があるのを念頭に
2008年の金融危機は、一般国民の住宅ローンに関係するサブプライムローンの問題が発展したもので、
今回の危機はは2008年とは違い銀行大手、住宅ローン業者、保険会社などに直接痛手は被らないのかもしれません。
しかし、いまだに最良のCEO曰く「終わりが見通せない」だけでなく
「この危機で市場に多くの動揺が引き起こされ、銀行やその他の貸し手が一段と保守的になるにつれ
金融条件が引き締まるのは明らかだ」と指摘しているように、まだまだ問題が長引く可能性が高いでしょう。
金融機関の破綻や、その影響は、仮に今後に新たな金融機関が破綻しない場合でも
ダイモン氏が言うように、金融機関が保守的になる副作用があるのを念頭に置く必要があります。
経験するとその怖さが分かる
2008年の金融危機前後は、まさに危機に陥った金融機関で働いていましたが
金融機関の変化は「大きく」そして「長く」続いたのを記憶しています。
金融機関はどこも保守的に動き、与信枠大幅縮小、貸し渋り、トレードも消極的にならざる終えなくなりました。
そして・・・人員大幅削減、部門縮小、部門閉鎖、支店(東京)撤退、などのリストラを経験してきました。
しかも、2008年とされる危機から5年近くも「長く」リストラが継続されたわけです。
ダイモン氏の指摘通り、一度金融危機が起こると簡単に収まるわけがないのです。
FX業界でも、2008年の金融危機をその場で味わっていないと、金融危機を甘く考えている人たちが多くいます。
今回の金融危機がどの程度「大きく」、どの程度「長く」続くかは分かりません。
しかし、最良のCEOの発言を無視し、金融危機を甘く考えることは「やってはいけない」ことなのではないかと思います。