やってはいけないこれだけの理由

第40回「金融危機はまだ去っていない、最良のCEOの言葉を無視してはやってはいけない」

新型コロナウイルスが始まったばかりのころに、テレビに出演している株式アナリストが

「風邪のようなもの」「すぐに収まります」と発言していました。


しかし、実際にはウイルスが終焉するのに、数年の月日を要することになったのはご存じのとおりかと思います。

やはり、株式アナリストがウイルスばかりか医療関係にも精通していないにもかかわらず

憶測で言うことの無責任さと当てにならないこと、そして、そのような情報を信じてはいけないことを痛感させられました。


最良の銀行CEOの意味することは?


逆に自分たちが確信が持てない中で、プロ中のプロが話したことについては

注意深く耳を傾ける必要があると個人的には思っています。


ここ最近気になったのが、今月4日にJPモルガンチェースの最高経営責任者(CEO)のダイモン氏が

「米国の銀行危機はまだ終了しておらず(Not Over Yet)、影響は何年にもわたり継続する」

と株主に向けた年次報告書で示したことです。


ダイモンCEOは「タイム」誌の発表する世界で最も影響力のある100人に選ばれ

最良のCEOにもかつては選ばれている人物です。


今回の金融危機が起こった時には、イエレン米財務長官に呼び出され会談を持ってもいます。

米銀ファースト・リパブリック・バンクの救済についても

ダイモンCEOとイエレン財務長官が中心となって動いたということは、すでに報道されています。


そのダイモン氏が上述のように「危機が終わっていない」と発言していることは

一般のエコノミストやアナリストの見解などとは比較にならないほど重要な意味があるでしょう。



金融危機は副作用があるのを念頭に


2008年の金融危機は、一般国民の住宅ローンに関係するサブプライムローンの問題が発展したもので、

今回の危機はは2008年とは違い銀行大手、住宅ローン業者、保険会社などに直接痛手は被らないのかもしれません。


しかし、いまだに最良のCEO曰く「終わりが見通せない」だけでなく

「この危機で市場に多くの動揺が引き起こされ、銀行やその他の貸し手が一段と保守的になるにつれ

金融条件が引き締まるのは明らかだ」と指摘しているように、まだまだ問題が長引く可能性が高いでしょう。


金融機関の破綻や、その影響は、仮に今後に新たな金融機関が破綻しない場合でも

ダイモン氏が言うように、金融機関が保守的になる副作用があるのを念頭に置く必要があります。


経験するとその怖さが分かる


2008年の金融危機前後は、まさに危機に陥った金融機関で働いていましたが

金融機関の変化は「大きく」そして「長く」続いたのを記憶しています。


金融機関はどこも保守的に動き、与信枠大幅縮小、貸し渋り、トレードも消極的にならざる終えなくなりました。

そして・・・人員大幅削減、部門縮小、部門閉鎖、支店(東京)撤退、などのリストラを経験してきました。

しかも、2008年とされる危機から5年近くも「長く」リストラが継続されたわけです。

ダイモン氏の指摘通り、一度金融危機が起こると簡単に収まるわけがないのです。


FX業界でも、2008年の金融危機をその場で味わっていないと、金融危機を甘く考えている人たちが多くいます。

今回の金融危機がどの程度「大きく」、どの程度「長く」続くかは分かりません。

しかし、最良のCEOの発言を無視し、金融危機を甘く考えることは「やってはいけない」ことなのではないかと思います。





この連載の一覧
第122回「トランプ相場もアジア通貨の動きを見ないでやってはいけない」
第121回「第2次トランプ政権・・・Xを見ないでやってはいけない」
第120回「いよいよ大統領選挙・・・この通貨の動向を知らないでやってはいけない」
第119回「円買いの流れを一瞬で止めた石破政権・・・今後の政局を知らないでやってはいけない」
第118回「想定為替レートを知らないでやってはいけない」
第117回「日銀には独立性がないことを知らないでやってはいけない」
第116回「ダブル石破ショック・・・今月は政治に翻弄されることを知らないでやってはいけない」
第114回「ディーラーは変わり身が早いのを知らないでやってはいけない」
第113回「FRBの2大責務…今は何を重要視しているかを知らないでやってはいけない」
第112回「バイアスがかかった考えをもってやってはいけない」
第111回「円相場を見るならアジア通貨の動きを見ないでやってはいけない」
第110回「7・8月の相場を振り返る・・・この反省を生かさないでやってはいけない」
第109回「日銀の政策決定会合の結果発表時間がなぜ定まらないのか」
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第107回「日銀のパラダイムシフト…これまで通りの考えでやってはいけない」
第105回「スポーツ賭博もFXも②・・・嘘が常態化する人はやってはいけない」
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第103回「円安を本当に止める気があるのか・・・何が信用できるかを確かめないでやってはいけない」
第102回「クロス円をしっかり見ないでやってはいけない」
第101回「介入を過度に警戒してはいけない」
第100回「CPI後のFOMC、ドットプロントに織り込んだか吟味しないでやってはいけない」
第99回「南ア政局・・・これを知らないでランド取引はやってはいけない」
第98回「G7財務相・中央銀行総裁会議・・・結果を調べないでやってはいけない」
第97回「南ア総選挙、これを知らないでやってはいけない」
第96回「ラーメン3000円も高くない、自作自演の円安を知らないでやってはいけない」
第95回「利上げだけで円安が止まると思ってやってはいけない」
第94回「介入にも限界があることを知らないでやってはいけない」
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
第89回「カントリーリスク・・・混迷する世界情勢を知らないでやってはいけない?」
第88回「チャートポイントを信じますか?・・こんなチャート利用法はやってはいけない」
第87回「それって何の講演?・・・講演内容を知らないでやってはいけない」
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第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
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第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
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第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
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第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
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第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
第42回「フェドウォッチを見ないでFXをやってはいけない・・・年末は95%利下げ予想」
第41回「高金利通貨は各国の状況を知らないとやってはいけない」
第40回「金融危機はまだ去っていない、最良のCEOの言葉を無視してはやってはいけない」
第39回「ドットプロットとフェドウォッチのずれを判断しないでやってはいけない」
第38回「若者こそFX取引を・・・その2、やってはいけないでなく、やってほしい」
第37回「銀行の救済問題、詳細を把握せず取引してはいけない」
第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
第35回「肌感覚を大切にしないでやってはいけない」
第34回「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
第33回「政治家の発言を吟味して取引しないといけない」
第32回「ポンドドル、ポンド円の取引をやってはいけない」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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