やってはいけないこれだけの理由

第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」

本邦の株式市場では開いている時間帯が決まっていることで、

東京市場、前場、後場という言葉があることは知られています。


では、FXの世界ではどうでしょうか?

FXは週末を抜きにしますと、たとえ日本の祝日でもシンガポールや香港、オーストラリアなど

他国の市場が開いていることで、FX市場は動いています。


それならば、東京市場という言葉はあってないようなものなのか?と思われますが

株式市場とは違いますが、金融機関の中では東京市場という括りがあります。


FXでいう東京市場とは?


一昔前は金融機関同士でプライスを出し合い

取引をするダイレクトディールというものがありました。


これはA銀行がB銀行に電話や機械を使い「ドル円10本(10本=1000万ドル)プライスください?」

と問い合わせます。聞かれたB銀行は「(140.)40-45」と応えます。

A銀行がドルを売りたい場合は「ユアーズ」と応え、140.40円で売ります。

逆に、買いたい場合は「マイン」と応え、140.45円で買うことになります。


このダイレクトディールが行われていた時間が、多くの銀行間では

前場が9時から12時まで、後場が13時半から15時半までとなっていました。


この名残りもあり、為替ブローカー(トウキョウフォレックス社等)は

9時になると「おはようございます、よろしくお願いいたします」と金融機関に挨拶し

12時や15時半が終わると「お疲れ様でした」などと挨拶が交わされます。


上述の12時から13時半の間は、金融機関のディーラーは一応昼休みです。

ただし、30年近く金融機関で働いていましたが、昼ご飯を外で食べたのは1年に数回程度しかなく

他は常にディーリングルームで弁当を食べる生活でした。


このようなことを知っても個人でFXに参入している個人投資家には関係が無い

と思われるでしょうが、実はそうでもありません。


この12時から13時半は、何かニュースが無ければ、出来たら取引をするのをやめようね、

というモードになっています。

要するに、この時間は通常よりも市場の流動性が悪いということです。



よって、もしこの時間帯に何かとんでもないニュース等が出た場合は、

通常以上に市場が大きく動いてしまいます


日銀政策決定会合の結果がでるのもたいていこの時間ですので

サプライズがあった場合の反応は大きくなります。

この時間はそういう状況だと備えていないと、FXをやってはいけません。


東京市場の終わりの時間とは?


上述のように15時半までが東京時間とされています。

株式市場が15時に終わることで、15時が終わりと勘違いしている人もいるようですが

15時半まででがFXの後場時間です。


なぜならば、オプションの東京カットの時間が15時にあることもあり

15時前後はオプションに関係する取引が活発化することもあるからです。


では、15時半になったら金融機関はどういう行動がするでしょうか?金融機関にもよりますが

多くの金融機関では15時半過ぎになれば、取引の一括りとし、これまでの入力確認などの事務作業もあります。

また、この取引の一括りを17時前後にする金融機関もあります。


FXは24時間動いていることで、どこかで括らないと、いつまで経っても収益を計上することが出来ないからです。

その時間の前後は入力された取引があっているかの確認作業に追われ

確認後に「システムを閉じる」という作業が行われます。


現在は多くの取り引きが自動的に入力されることで、入力が間違えていることがあまりありませんが

それでも手入力作業がある取引もあることで、誤差が生じた場合は

誤差が判明されるまで何時までも残って間違えを探さなくてはなりません。


時間帯により市場流動性が異なることで、上述のようにあまり知られていない節目の時間も

知っておくことで、FX取引に有利になることがあります。




この連載の一覧
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第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
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第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
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第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
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第40回「金融危機はまだ去っていない、最良のCEOの言葉を無視してはやってはいけない」
第39回「ドットプロットとフェドウォッチのずれを判断しないでやってはいけない」
第38回「若者こそFX取引を・・・その2、やってはいけないでなく、やってほしい」
第37回「銀行の救済問題、詳細を把握せず取引してはいけない」
第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
第35回「肌感覚を大切にしないでやってはいけない」
第34回「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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