先週の12月18-19日に日銀の金融政策決定会合が行われたのはご存じかと思います。
それ以前に多くの報道機関(新聞中心)に、12月は政策金利は据え置くと報じられていたこともあり、市場予想通りに据え置きが決定しました。
以前に第26回「提供されているヒントを無視することを、やってはいけない」で記載しましたが、日銀関係者との記事で、日銀の金融政策の方向性を新聞にリークしていることが多々あります。
あえて新聞等にリークするのもおかしな話ですが、問題はあるもののFXをやっている限りはそれらのリークには目を通さなくてはいけません。
予想通りの据え置きだったものの、今回の金融政策決定会合はサプライとなる内容でした。
植田日銀総裁の発言に驚愕
政策金利据え置きは市場予想通りだったものの、植田日銀総裁の会見が始まると円安が大幅に進行しました。
当日安値154.44円から一気に157円台までドル高・円安が進みました。
対ドルだけではなく、他通貨に対しても円は売られ、円が独歩安になったわけです。
注目された植田日銀総裁の会見では、総裁は「来年の春闘などの情報も必要」と発言すると、利上げは早くても3月と市場が捉えたことで円安が進行しました。
これまでは12月か1月の利上げが濃厚と捉えてきた市場ですが、上述のように「12月はなくても1月の可能性はあるのでは」と思っていたのがそれが否定されました。
当然のように、この影響で円安が進行したわけです。
更に植田日銀総裁は、据え置きによる為替の影響についても「注意深く見ている」とは述べましたたが、「輸入物価の対前年比は落ち着いている」と複数回の質疑に対して回答したのです。
日銀総裁がタカ派ではなかったことによる円安に輪をかけて、円安容認と受け取られる発言です。
総裁の会見と質疑応答は1時間超行われましたが、最初から最後まで見ていて、言葉尻を捕らえたものでは全くありませんでした。
これは本気で円安を懸念していないような言い方でした。
輸入物価指数がこれから更に重要になる
今回の発言でこれまで以上に輸入物価指数の注目度が増したことは間違いがありません。
輸入物価指数は企業物価指数の一部で、日銀が毎月第2週の8時50分に公表されます。
ちなみに日銀総裁が述べているように、今年に入り輸入物価指数は10月の+2.9%(速報値)が最大で、最少は8月の-6.2%(確報値)となっています。
大きな振れがないのは事実です。
ただし、一昨年の2022年はこの指数が40%を超えて上昇したわけで、その40%の上昇からはまったく減少しているとも言えません。
輸入業者や一般市民からしたら上昇はしていないが、高止まりしているとしか言いようがありません。
訂正に要警戒
このような発言をした植田日銀総裁ですが、すぐに訂正が入る可能性もあるので要警戒です。
第108回「日銀のパラダイムシフト2…正副総裁が市場流動性を破壊」
で詳細を記載しましたが、日銀総裁はこれまでも発言を急遽変更したことがあります。
今年7月の日銀政策決定会合の後に、主だった経済指標の発表はわずかだったのにもかかわらず、1週間もたたないうちに総裁発言を副総裁が市場は誤解していると訂正しました。
今回の円安の原因は日銀総裁の発言で間違いはありません。
今後、訂正が入る可能性もあるでしょうが、仮に訂正が入った場合は、今後も植田総裁の不用意の発言には気を付ける必要があります。
また、訂正をした場合は市場の信頼をさらに失うことでしょう。
逆に訂正が入らない場合は、日銀総裁は輸入物価が上がらない限りは円安を容認するととらえるのは普通になると思われます。