やってはいけないこれだけの理由

第120回「いよいよ大統領選挙・・・この通貨の動向を知らないでやってはいけない」

11月5日大統領選挙!


いといよ、11月5日に米大統領選挙が行われます。

今回はハリス副大統領とトランプ前大統領が接戦を繰り広げていることで、どちらが勝利を収めるかが未知数です。

投票1週間前はややトランプ前大統領が有利との報道もありますが、ここまで読みにくい展開はないでしょう。


接戦州でどちらが勝利を収めるかが分かりませんが、結果が判明するまでには日にちを要するかもしれません。

また、前回の選挙同様に仮にトランプ前大統領が敗北した場合には、再び支持者による暴動などが起きる可能性もあるでしょう。


どちらが勝っても


現在市場で予想されていることは、両候補のどちらが勝っても大幅減税と拡張的な財政政策を公約にしていることで、米長期金利の上昇が予想されています。

濃淡では、トランプ前大統領のほうが拡張的財政の要素が高くなるとされています。

ただし、市場はこの1カ月程度はこの予想がずっと続いていました。


米債はSell The Rumour Buy The Fact(噂=予想で売って、結果で買う)となり、大統領選挙後に利食いの米債買い(金利低下)になる可能性もあるでしょう。


10月27日に行われた本邦の衆議院選挙でも、自民党が過半数を獲得できない場合には株安が進行するとの予想もありました。

しかし、ふたを開けると日経平均はじめ本邦の株式市場は上昇しました。

それほど、選挙結果でどちらに動くというのを予想するのは簡単ではないわけです。


この通貨は強弱はっきり分かれるか


上述のように選挙に結果でドル買い・ドル売りどちらに動くかを予想するのは難しいです。

しかし、一部通貨では、選挙結果でどちらに動きやすいか分かりやすい通貨もあります。

例えば、今回は南アランドなどは、だれが大統領に就任するかで中長期のリスクが変わると思います。


なぜ、ランドは強弱がはっきりと分かれるかを説明します。

10月下旬に行われたBRICS首脳会議で、ラマポーザ南ア大統領はプーチン露大統領に「ロシアは味方だ」と伝えるなど、南アはロシアや中国との関係が密接です。

これまでも、経済的には欧米が通商のパートナーなのにもかかわらず、ロシアとはアパルトヘイト後から良好な関係を築き、中国とは新たな通商パートナーとしても際立っています。

ラマポーザ南ア大統領は、このような経緯もあり、ウクライナをめぐる戦争についてもロシアを非難することも控えています。

要するに、南アはどっちつかずの態度をとり続け、美味しいところ取りの政策を継続しています。



この件について、バイデン政権は比較的南アに対して穏健な姿勢をとっていました。

しかし、共和党だけでなく、与党民主党も南アの姿勢を非難する声は増しています。


そして、5月29日に、米下院で「米国と南アとの2国間関係の全面的な見直し」の決議が行われ272対144(共和党211名が賛成・反対1名、民主党61名が賛成、反対143名)で見直し案が可決されたのです。

しかし、上述のようにバイデン大統領はこの案に対して反対姿勢をとっていることで、決議が通過することはこれまでありませんでした。


ただ、もしトランプ前大統領が大統領に返り咲いた場合はどうなるでしょうか?

トランプ氏はこれまでも不利益な貿易相手国に対しては税の引き上げをはじめ、徹底的な対抗措置をとってきました。

しかも、南アは米国の友好国であるイスラエルに対しては非常に強く非難をしています。


よって、これまで通りの米・南ア関係が継続できないリスクもあるでしょう。

そして、その場合に一番南アが恐れていることは、何千もの品目を米国に無税で輸出することを認める貿易協定のアフリカ成長機会法(AGOA)の対象から南アが外されることです。


これが実現した場合には、南アはこれまで通りの通商政策は通じなくなり、南アの貿易黒字は大幅に縮小するでしょう。

また、南ア国内経済にも大きなダメージを与えることは必至です。

さらに、国民統一政府(GNU)に対する期待で南アへの投資されていた資金なども停滞することもあるかもしれません。


このように、ドル全体がどのような動きになるかを予想するのは難しいですが、おそらく第2次トランプ政権となった場合は、南アのリスクはダウンサイド=ランド売り、となると思われます。




この連載の一覧
第122回「トランプ相場もアジア通貨の動きを見ないでやってはいけない」
第121回「第2次トランプ政権・・・Xを見ないでやってはいけない」
第120回「いよいよ大統領選挙・・・この通貨の動向を知らないでやってはいけない」
第119回「円買いの流れを一瞬で止めた石破政権・・・今後の政局を知らないでやってはいけない」
第118回「想定為替レートを知らないでやってはいけない」
第117回「日銀には独立性がないことを知らないでやってはいけない」
第116回「ダブル石破ショック・・・今月は政治に翻弄されることを知らないでやってはいけない」
第114回「ディーラーは変わり身が早いのを知らないでやってはいけない」
第113回「FRBの2大責務…今は何を重要視しているかを知らないでやってはいけない」
第112回「バイアスがかかった考えをもってやってはいけない」
第111回「円相場を見るならアジア通貨の動きを見ないでやってはいけない」
第110回「7・8月の相場を振り返る・・・この反省を生かさないでやってはいけない」
第109回「日銀の政策決定会合の結果発表時間がなぜ定まらないのか」
第108回「日銀のパラダイムシフト2…正副総裁が市場流動性を破壊」
第107回「日銀のパラダイムシフト…これまで通りの考えでやってはいけない」
第105回「スポーツ賭博もFXも②・・・嘘が常態化する人はやってはいけない」
第104回「自分が一番大事?・・・様々なことを勘繰らないでやってはいけない」
第103回「円安を本当に止める気があるのか・・・何が信用できるかを確かめないでやってはいけない」
第102回「クロス円をしっかり見ないでやってはいけない」
第101回「介入を過度に警戒してはいけない」
第100回「CPI後のFOMC、ドットプロントに織り込んだか吟味しないでやってはいけない」
第99回「南ア政局・・・これを知らないでランド取引はやってはいけない」
第98回「G7財務相・中央銀行総裁会議・・・結果を調べないでやってはいけない」
第97回「南ア総選挙、これを知らないでやってはいけない」
第96回「ラーメン3000円も高くない、自作自演の円安を知らないでやってはいけない」
第95回「利上げだけで円安が止まると思ってやってはいけない」
第94回「介入にも限界があることを知らないでやってはいけない」
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
第89回「カントリーリスク・・・混迷する世界情勢を知らないでやってはいけない?」
第88回「チャートポイントを信じますか?・・こんなチャート利用法はやってはいけない」
第87回「それって何の講演?・・・講演内容を知らないでやってはいけない」
第86回「タカ派ハト派を更新していますか?・・・最新の発言をアップデートしないでやってはいけない」
第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
第78回「なぜ年末は取引をやってはいけないのか・・・応当日の特殊事情」
第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
第42回「フェドウォッチを見ないでFXをやってはいけない・・・年末は95%利下げ予想」
第41回「高金利通貨は各国の状況を知らないとやってはいけない」
第40回「金融危機はまだ去っていない、最良のCEOの言葉を無視してはやってはいけない」
第39回「ドットプロットとフェドウォッチのずれを判断しないでやってはいけない」
第38回「若者こそFX取引を・・・その2、やってはいけないでなく、やってほしい」
第37回「銀行の救済問題、詳細を把握せず取引してはいけない」
第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
第35回「肌感覚を大切にしないでやってはいけない」
第34回「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
第33回「政治家の発言を吟味して取引しないといけない」
第32回「ポンドドル、ポンド円の取引をやってはいけない」
第31回「新たに注目される指標を無視してトレードをやってはいけない」
第30回「次の日銀総裁の意向を考えないで、やってはいけない」
第29回「他の市場の動きを無視して、やってはいけない」
第28回「中銀の独立性がない国の通貨はやって(買って)はいけない?」
第27回「昨年は何の通貨をやってはいけなかったか?」
第26回「提供されているヒントを無視することを、やってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第25回「重要イベント前にポジションを取ってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第24回「12月にトレードをやってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第23回「スケジュールを見ないで取引をやってはいけない…先週なぜ大きく動いたか」
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【やってはいけないこれだけの理由】第21回「FOMC…乗り遅れない!今年のメンバーはもう忘れよう」
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【やってはいけないこれだけの理由】第14回「日銀介入に備える…その3」
【やってはいけないこれだけの理由】第13回「日銀介入に備える…その2」
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【やってはいけないこれだけの理由】第5回「どのFX指南役が信用できるか、その3」
【やってはいけないこれだけの理由】第4回「140.00円に売りなんて置いてはいけない!」
【やってはいけないこれだけの理由】第3回「どのFX指南役が信用できるか、その2」
【やってはいけないこれだけの理由】第2回「どのFX指南役が信用できるか、その1」
【やってはいけないこれだけの理由】第1回「ナンピンは魅力的。しかし・・・」

為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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