やってはいけないこれだけの理由

第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」

個人FXはスワップポイントが大好き


FXを取引し始めると、レートは動いていないのに

いつの間にか、お金がちょこっと増えたり減ったりすることがあると思います。

多くの人はすでにご存じと思いますが、金利が付くからです。


高金利通貨をロングにし、それよりも金利の低い通貨をショートにすれば

その金利の差額分が、日を超えると取得することが出来るわけです。


例えば、米国の金利が3%で日本が0.1%だった場合、ドルロング・円ショートにすれば

(あくまでも単純計算で)

年利で3%-0.1%=2.9%分の金利を得ることが出来ます。



このようなポイントをスワップポイントと呼び

高金利通貨を買い・低金利通貨を売るトレードの手法を

「キャリートレード」と呼んだりします。


このキャリートレードは、本邦の個人投資家は非常に好きで

金利がたくさんつくというメリットだけでロングにし

昨年のトルコリラ円の暴落などで、金利が二桁ついても、為替差損がその数倍ということもあり

キャリートレードには弊害が付いて回ります。


スワップポイントが他に何の参照になるか?


上述したようなスワップポイント自体は、FX投資を始めた初心者の方は知っていると思います。

そのスワップポイントを違った観点で見ていくと、より深くFXのことが分かると思います。


例えば日米金利背景に、半年先のスワップポイントが430Pipsあるとします。

A企業は半年先に150.00円でドル輸出予約をしたい(ドルを売りたい)とします。


市場が現在150.00円で取引されていても、半年後はスワップポイントを加味すると、

金利分が差し引かれることで150.00-4.30=145.70円で売ることになります。


しかし、企業の目標値が150.00円だった場合、スポットレートが150円でも売らない可能性もあります。

そして、半年後の輸出予約をしたい場合は、スポットレートを加味して

150.00+4.30=154.30円で売りを入れたりします。


このように、半年後、期末日(特に3月末)、1年後などの節目の水準を

企業が意識して為替予約をすることもあります。

切りの良い数値で為替予約を目指している企業は、このスワップポイントを足したレートで輸出予約をすることが多々あります。


例えば、期末までのスワップポイントが57Pipsあったとしましょう。

その場合、150円という節目だけでなく、全く切りも良くない、150.57円近辺に上がるとドル売りが増えてくる時があります。

これは、企業がスワップポイントを加味し、150.00円で売ろうとしていたりするからです。


このように、自分が高金利通貨を買い持ちするスワップポイントだけでなく、

スワップポイントを見ることで、企業がどのような動きを狙っているのかを知ることが出来ます。

スワップポイントを知らないで取引をしてはいけないとまでは言いませんが、知っていて損はしないことと言えます。





この連載の一覧
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
第89回「カントリーリスク・・・混迷する世界情勢を知らないでやってはいけない?」
第88回「チャートポイントを信じますか?・・こんなチャート利用法はやってはいけない」
第87回「それって何の講演?・・・講演内容を知らないでやってはいけない」
第86回「タカ派ハト派を更新していますか?・・・最新の発言をアップデートしないでやってはいけない」
第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
第78回「なぜ年末は取引をやってはいけないのか・・・応当日の特殊事情」
第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
第42回「フェドウォッチを見ないでFXをやってはいけない・・・年末は95%利下げ予想」
第41回「高金利通貨は各国の状況を知らないとやってはいけない」
第40回「金融危機はまだ去っていない、最良のCEOの言葉を無視してはやってはいけない」
第39回「ドットプロットとフェドウォッチのずれを判断しないでやってはいけない」
第38回「若者こそFX取引を・・・その2、やってはいけないでなく、やってほしい」
第37回「銀行の救済問題、詳細を把握せず取引してはいけない」
第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
第35回「肌感覚を大切にしないでやってはいけない」
第34回「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
第33回「政治家の発言を吟味して取引しないといけない」
第32回「ポンドドル、ポンド円の取引をやってはいけない」
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【やってはいけないこれだけの理由】第13回「日銀介入に備える…その2」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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