やってはいけないこれだけの理由

第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」

指標結果でのFXの動きは50/50か?


経済指標の結果次第でFXが動くことは誰もが知っていることでしょう。


全てが教科書通りにはいきませんが、今の為替市場は米国の経済指標では

インフレが高進する可能性がある指標結果となれば、米金利高で、ドル買い

一方、インフレが低下する可能性がある結果となれば、米金利低下でドル売りになります。


端的に言うと、注目されている経済指標で、予想比より強い結果になればドル買い

逆に弱い結果になればドル売り、ということで

中には50/50(フィフティー・フィフティー=半々)、丁半博打と同じと考えている投資家もいます。


確率は50/50でも、値幅は違うことに留意


短期的に取引をする銀行のディーラーは、注目される経済指標の発表前は博打とならないように

自分のポジションをスクエアにすることが多くあります。


指標発表前に結果を知ることが出来ない限りは、どちらに動くのかは50/50で博打状態と言えます。

しかし、博打と違うのは、どちらが値幅が広くなって動くかということが50/50ではないからです。


例えば、今月に入り米国の4月雇用統計と4月に消費者物価指数(CPI)が発表されました。

前者は市場予想よりも大幅に強い好結果、一方後者は僅かに予想より弱い結果でした。

市場の反応は前者はドル買い、後者はドル売りに動き、教科書通りの動きとなりました。


しかし、かなり好結果だった雇用統計にもかかわらず

ドル円は134円前半から135円前半までの上昇にとどまりました。

一方で、僅かに下振れしたCPIは135円前半から翌日には133円台まで下落しました。

このように、指標の強弱でも値幅が違うことには留意する必要があります。


市場は先の先を見ている


では、なぜドル買いの値幅とドル売りの値幅が違ったのでしょうか?


多くのエコノミストやファンドマネージャーは、この数カ月先の動きだけではなく

半年後(年末)やさらにその先を考えて予測を立てています。

そして、ドル売りの反応が大きくなったのは、年後半は米経済が停滞する可能性を頭に描いていたからです。

先の先を見て、ドル売りの方がその時は仕掛けやすかったからです。


年後半の経済停滞予想は、インフレによる負の側面が出てくること

金融システム不安により、金融機関による信用収縮が顕著になること、など複数な要因があります。


今月初めはそのような流れがあったことで、ドル売りの方が値幅が大きくなったわけです。

よって、指標結果でのドル買い・ドル売りは50/50ですが

結果発表後の値幅は、50/50とはいかず、違いが出たわけです。

競馬などでは人気薄の馬の方がオッズが高く、人気薄の馬が勝てば

人気のある馬よりも儲けは大きくなります。


しかし、FXの世界では市場参加者の多くが年後半の米経済の停滞を思い描いている場合は

米国の指標結果が下振れた場合は、米金利低下・ドル売りトレンドに乗りやすくなり、値幅が大きくなります。

一方で結果が上振れた場合は、米金利上昇・ドル買いとなっても

この先を見定めたいと思うっていることで、値幅が限られました。


これは、どちらの方が市場は指標結果で背中を押してもらいやすいかによるからです。


くるくる変わる市場の流れ


ここまでは、今月上旬の流れでした。

しかし、先週は全く逆の方が値幅が大きくなりました。


先週は、米国の債務上限問題に対して解決し、デフォルトを避けようとする可能性が高まったこと

米連邦準備理事会(FRB)関係者のタカ派発言で、米金利は上昇しやすく、ドルが買われやすい状況でした。


と、なると、指標の発表も米国のインフレ高進や、強い雇用データへの反応が大きく値幅を伴った動きになったわけです。

このように1週間違うだけで、市場が何に大きく反応しやすくなるのかがくるくる変わってきます。


事前の動きは週のどこで発表されるかも重要


背中を押してほしい時に、思っている方向に結果が出た場合は、乗り遅れてはいけないと思い

値幅を広げることが大きくなると記載しましたが、他にも値幅を伴う場合があります。


例えば、弱い経済市場が続きドルを売っても売っても下がらない後に、強い経済指標が出たとしましょう。

その場合は、これまでドルを売ってきていたのに下がらなかったことで、諦めの買いが入りやすく

ドル買いが思ったよりも大きくなることがあります。


今月では米ミシガン大学が発表した5月消費者態度指数(速報値)で

消費者の期待インフレ率が予想を上回った時もその状況でした。


このときはCPIとPPIでドルの下押しにトライしたにもかかわらず、週末最後の指標結果が強く

諦めのドル買いや、週末を前に一度スクエアにするためのドル買いが入り、値幅が広がりました。


50/50の結果で動く経済指標の結果ですが、今後の経済判断を市場がどう思っているのか

市場がどちらの指標結果の方が乗りやすいのか、などを考慮しないといけないと

FXをやってはいけないと言えます。








この連載の一覧
第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
第78回「なぜ年末は取引をやってはいけないのか・・・応当日の特殊事情」
第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
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第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
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第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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