やってはいけないこれだけの理由

第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」

米銀の融資状況を知る


先週、FXの中でも注目されたのが米銀の融資状況の調査結果でした。

調査の名前はSenior Loan Officer Opinion Survey on Bank Lending Practices(=SLOOS)

日本語では、連邦準備銀行融資担当者調査となります。


FXを長いことやっている方々も、このような調査を事細かに毎回チェックしている人は少ないですが

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が米連邦公開市場委員会(FOMC)の時に注目している

と述べていたことで

今回は、3月からの米金融危機の影響がどの程度進んでいるかを知るために注目されました。


SLOOSの調査内容は?


SLOOSは、最大80の大手国内銀行と24の米国支店および外国銀行の代理店を対象とした調査です。

5月8日に発表された調査は、、第1四半期=1~3月期のもので

過去 3 か月間の企業や家計への銀行融資の基準と条件、および需要の変化について調査されています。


また、通常の調査委が以外にも、その時期に関心がもたれている調査事項が追加されることもあります。

今回は、この追加調査は3つありました。


1つ目は過去1年間の 商業用不動産(CRE) ローンに対する銀行の貸出方針の変更について

2つ目は第1四半期にすべてのローンカテゴリの基準を変更した理由について

3つ目は2023 年の残りの期間における貸出基準の変更に対する銀行の予想と、

これらの変更の理由についてとなっています。



1つ目の調査回答としては、過去1年間ですべてのカテゴリーの CRE ローンの貸付ポリシーを

引き締めていると報告されています。


2つ目は、経済見通しの悪化または不確実性の増大、リスク許容度の低下、担保価値の低下、

および銀行の資金調達コストに対する懸念と、

様々な理由でローン基準の変更があったことが指摘されています。


3つ目は、すべてのローンカテゴリで基準が厳しくなると予想しているとの結果が出ています。

融資基準の厳格化を期待する理由として、融資ポートフォリオの信用度と顧客の担保価値の予想される悪化、

リスク許容度の低下、銀行の資金調達コスト、銀行の流動性ポジション、

および預金流出に関する懸念となっています。


与信枠の引き締めはデータでも示される


また、SLOOSでは多岐にわたって調査が行われて、より簡単なアンケート調査の結果も観ることが出来ます。

例を挙げますと


過去3カ月の間で、M&A の資金調達に使用される以外の 商工業(C&I) ローン

または与信枠の申請を承認するための銀行の信用基準はどのように変化しましたか? 

との調査に関しては


大企業に対して、かなり引き締めたが3.2%、やや引き締まめたが42.9%、変わらないが53.9%となっています。

小規模に対して、なり引き締めたが3.3%、やや引き締まったが45.0%、変わらないが50.0%、緩和したが1.7%となりました。


ほかにも様々な調査が行われていますが、すべてに渡って、信用収縮の傾向にあることが調査では出ています。


問題はこれから


これらの調査が4月の頭にされ、1‐3月期ということを考えると、気になるのが4-6月期となります。

通常4-6月期のSLOOSの調査が分かるのが、8月の上旬ということで、8月の調査結果も市場の注目を集めることでしょう。


この場合をどのように仕込むのかは、簡単ではありませんが

信用収縮が進んだ場合の基本的な考えとしては、まずはリスク回避の円買い

そして一番顕著なのは。、リスク回避のため新興国通貨からの資金流出となります。


このように、金融の融資状況がに与える影響は大きいですので

融資状況を知らずにFXをやってはいけないと言えるでしょう。






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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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