2010年に日本と中国の国内総生産(GDP)は逆転され、その後も格差が開く一方です。
日本は更にドイツにも抜かれ世界4位まで下がっています。
かつては「ジャパンマネー」「ザ・セイホ」などと、本邦国内投資家の動向に注目が集まりましたが、いまでは「ミセス・ワタナベ」と称される、個人FX取引が僅かに注目される程度で、FX市場でも日本の地盤沈下は避けられない状況です。
円の取引も、10年、20年、さらに昔と比較すると注目度合いが減っていることも事実です。
日本への注目減少の場合に円相場をどうみるか?
このように、世界から見ると日本への注目度が減少している状況下では、ドル円相場を単体に見るだけでは足りない部分があります。
もちろん、日銀や日本の景気動向が円相場を左右することもありますので、そのような目線を外すわけにはいきません。
「ミセス・ワタナベ」や生保、投信、実需などの動向も見定める必要があるでしょう。
しかし、海外投資家からすると、日本もアジアの1つの国程度まで下がってきていることで、通貨に対しても円をアジア通貨の一つとみていることも事実です。
アジア通貨の動きがドル円相場に大きく影響
上述のように円は日本単体の経済状況・フローで相場は上下しますが、海外投資家はより大きくグローバルな目で市場を見ています。
今年7月に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)前後で、アジア通貨の持ち高がどのように変わったかを見てみましょう。
ご存じのようにFOMCでは、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がハト派発言を行ったことでドル安が進みました。
それ以前のアジア通貨は今年最初の取引日(1月2日)からFOMC1日目の30日までの間、対ドルで香港ドルはほぼ横ばいでしたが
円は7%安、韓国ウォンと台湾ドルは6%安、タイバーツ・フィリピンペソ・インドネシアルピアは5%安。
オフショア人民元とシンガポールドルは1.2-1.3%安、インドルピアとマレーシアリンギは0.5%弱安となっていました。
要はほぼ対ドルでアジア通貨は売られていたわけです。
しかし、FOMC後にはこの流れが急転します。
FOMC2日目の7月31日から8月26日の間で、リンギは5.6%高、バーツとルピアは約5%、円も4.3%超買われました。
他の韓国ウォン、台湾ドルなどアジア通貨は軒並みショートからロングへと転換したわけです。
このように、海外投資家は円だけを見ているわけではなく、アジアという地域をみても投資傾向を変更しているわけです。
ドル安の流れが出た場合には一国(日本)だけを無視したポートフォリオの転換を計るわけではないことで、アジア通貨を売り始めた場合は円も同時に売ります。
円キャリー再開と囃し立ている国内投資家はまだいますが、海外の目線は大きく変わり、アジア通貨(円)買いの勢いも継続されています。
かつてと違い、注目度が下がっていることで、アジア通貨の動向を無視して円相場に挑むことは考えが古すぎるので、円を取引する場合はアジア通貨を見ないでやってはいけないでしょう。