「円買い」の流れを止めた石破政権
7月30-31日に日銀政策決定会合が行われ、日銀は政策金利(無担保コール翌日物)が、現行の「0-0.1%程度」から「0.25%程度」に引き上げることが決定。
その後に行われた植田日銀総裁の会見では、「経済・物価見通しが実現していけば、引き続き政策金利を引き上げる」と述べました。
そして、翌日の米連邦公開市場委員(FOMC)後のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は会見で「FOMCは利下げに近づいているという感触を得ている」などと発言。
この日米の政策決定会合により、これまでアベノミクス、黒田バズーカと呼ばれた円安誘導と捉えられる長期にわたる円安相場に、ようやく終止符が打たれました。
10年以上に続いた円安誘導は様々な弊害をもたらしましたが、中でも日本経済に大きな痛手となったのが輸入物価の上昇でした。
2022年7月には前年比で49%を超える輸入物価の上昇となりました。
家計へのインパクトは大きく、賃金が上がらない中でのインフレ高進は、国民の生活に大きな痛手となったわけです。
そのインフレを止めるためにも円安を阻止したのですが、この円買い戻しの流れが、石破政権になったらあっという間に止まってしまいました。
ドル買いもあるが、円が突出して売られている
石破首相は自民党総裁選の前は「金融緩和という基本的政策を変えないなかで徐々に金利のある世界を実現していくのは正しい政策だ」と日銀の利上げを容認していました。
このこともあり、総裁選で勝利を収めると9月30日には141円台まで円高が進行しました。
しかし、衆議院の解散を選択し、その衆議院選挙で勝つために利上げ容認による株価の急落を食い止めようと、利上げに対して否定的な(「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」)発言をすると、石破首相の変節で株価の下落は食い止めたものの、円安が進行してしまいました。
今回は円安ではなく、ドル高だという意見もあります。
たしかに、FRBの利下げが緩やかなペースで行われることになるとの予想が高まったことも一因です。
そのようなドル高要因はあるものの、上述の利上げ否定発言を行った10月2日から先週末までのドルの上昇率はスイスフラン、ユーロ、ポンドが2%程度、大幅利下げを行ったカナダドルが2.5%前後なのに対して、円は4%弱までドル高・円安が進みました。
11月の大幅利下げの可能性が高まったニュージーランドの通貨NZドル以外では円が主要通貨で最も売られました。
10年以上続いた円安相場をようやく反転させ、輸入物価上昇で苦しむ国民生活にわずかながらも改善となることが期待されたものが、石破首相の変節発言で再び円安地合いが復活してしまったといえます。
総選挙後も政治に翻弄される展開に
今回のこのレポートは10月27日の総選挙前に記載していることで、衆議院選挙の結果がどのようになったかはわかりません。
自民党をはじめとした与党が過半数を取れなかったのか、逆に健闘し石破政権が盤石になったのかすらわかりません。
ただ、一つ確実に言えるのは、日本の政治家があまりにも軽く発言をしてしまうことで為替市場は大きな混乱を招き、国民生活にまで大きな影響を与えてしまっていることを懸念してしまいます。
FX取引も、衆議院選挙後に出てくる軽い発言が大きな相場の転換となる可能性もあり、引き続き政治情勢を見ないではFX取引はやってはいけないでしょう。