今回解説していく通貨はドル円です。為替市場では「日銀の緩和政策が長期化する」「米連邦準備理事会(FRB)の利下げが後ずれする」との思惑を手掛かりにした円売り・ドル買いの流れが強まり、先月末には節目の160.00円を突破。1990年4月以来の高値を更新しました。
ただ、その後は一転して急落となり、今月3日には一時151.86円まで下押し。わずか5営業日の間に8円超の下げ幅を記録したわけですが、市場では政府・日銀による為替介入が実施された可能性が高いとされています。荒い値動きが続くドル円ですが、チャート上でも状況を確認していきましょう。
ドル円の日足分析
まずは円買い介入が実施されたとされる直近の状況を見てみましょう。下図のチャートはドル円の日足チャート。今回は「ボリンジャーバンド」を加えてあります。
ボリンジャーバンドは通貨当局が為替の「過度な変動」に関して判断する要素の一つとされていますが、為替介入が入ったとされる4月29日の前日からバンドの上限を大きく上抜けていることが分かります。その後の急落によって執筆時点(6日)ではバンドの中央付近まで押し戻されており、現状では「過度な変動」による介入が実施されるリスクは低いと言えるでしょう。
その一方で、もう一度介入が実施されたと言われている5月1日の動きについては今後も注意が必要となります。こちらは過度な変動を抑制するために実施されるスムージング介入とは違って、為替を特定の水準や方向へ誘導するための介入(今回は円相場の押し上げ介入)だったとされており、そうなると介入が実施された水準自体も重要となってきます。
5月1日に為替介入が実施されたと思われる際のドル円レートは157円台。今後の上値の目処として意識される可能性もあるので、念のために覚えておきましょう。
ドル円の週足分析
ここまで為替介入についてチェックしてきましたが、ここからはテクニカルの分析をしていきます。下図のチャートはドル円の週足チャートです。
前回(3月20日)からの推移を確認すると、4月に入って「アセンディング・トライアングル(上昇三角形)」と呼ばれる「三角保ち合い」の上限(2022年10月21日高値151.95円と昨年11月13日高値151.91円を結んだほぼ横ばいの線=チャート上の青色実線)をブレイク。方向性としてはしっかりとした上昇トレンドを維持しています。
さらにその後の調整売りが「三角保ち合い」の上限付近で止まっているようにも見えますね。レジスタンスとして機能していた水準を上抜けると、今度は同水準がサポートに変化するというパターンはよくある事。市場から重要なポイントとして意識されることで起こり得る現象です。
また、前回の分析でも触れた昨年1月安値(127.23円)を始点とする上昇トレンド(チャート上の黄色実線)が依然として継続しているほか、昨年末安値を始点とする比較的短期の上昇トレンドライン(チャート上の黄色点線)もサポートとして機能する可能性があるため注目しておきましょう。ちなみ短期の上昇トレンドラインは本日時点で151.50円台に位置しており、1カ月後には154.10円台まで切り上げる見込みとなっています。
今後のイベントは
最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。日米とも期間内に中銀の金融政策公表は予定されていませんが、次回の日銀金融政策決定会合(6月13-14日)、米連邦公開市場委員会(FOMC、6月11-12日)の金融政策を占う上で、物価統計などに注目しておきたいところです。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
5月15日 米国 4月消費者物価指数(CPI)
5月24日 日本 4月全国CPI
5月31日 米国 4月PCEコア・デフレーター
6月7日 米国 4月米雇用統計