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第143回 南アフリカランド円相場予想、一目雲下限を維持できるか注目

今回解説していく通貨は南アフリカランド円です。2024年11月にトランプ米大統領が就任以降、じりじりと上値を切り下げる展開となっていましたが、2025年4月に米大統領が相互関税の詳細を発表すると一気に下げ幅を拡大。今後は一段とランド円の下押し圧力が強まる可能性も出てきました。ドル円など他の通貨に振らされる可能性もあり、今まで以上に慎重な取引が求められる場面が増えそうです。では、チャート上でもランド円の状況を確認していきましょう。


南アフリカランド円の週足分析 チャートはさらなる下落リスクを示唆

下図のチャートはランド円の週足チャートになります。前回の分析(2月5日)からどのような動きとなったかを見ていきますと、4月以降の急落によって前回指摘していた昨年9月安値の7.86円や8月安値の7.60円(いずれもチャート上の丸で囲った部分)をいずれも下抜け。一時は7.26円まで下押す場面も見られました。



同時に2020年4月安値を始点とする上昇トレンドライン(チャート上の黄色実線)も下方向にブレイク。2020年来の上昇トレンドの終了も示唆されています。

次の注目ポイントは2023年5月と2021年11月に下げ止まった7円割れ水準(チャート上の四角で囲った部分)となるでしょう。これ等の水準を下抜けてしまうと2020年からの上昇トレンドの起点となっていた5円台までの下押しも視野に入れた動きとなる可能性があります。


なお、チャート下部に追加した「DMI」でも現在はDI>+DI(下落トレンド)を示唆。また、前回の時点ではトレンドの強さを示すADXが2020年以来の水準まで低下していましたが、足もとでは再び上昇しつつあり、週足ベースではいよいよ下げトレンドが始まったと判断してもよさそうです。


南アフリカランド円の月足分析 一目雲下限が最後の砦に

では、今度はより長期的な視点でもランド円の相場状態を確認していきます。下図のチャートはランド円の月足チャートになります。チャート上の黄色実線は週足分析で紹介したものと同じトレンドラインです。



週足分析で今後視野に入る可能性があると述べた2020年の安値ですが、これはランド円の史上最安値でもあります(2020年4月安値の5.61円)。ということであれば過去最安値までの下押しを警戒すべき局面ということになりますが、それを阻止するためには「一目均衡表の雲」が重要なサポート水準になるでしょう。


一目均衡表でみると現状の遅行スパンは価格線とほぼ同水準に位置。転換線は基準線を上回って推移していますが、ここから昨年高値を超えるような反発がなければ夏頃に転換線が基準線を下回る可能性が高まります。さらに価格線は抵抗帯(雲)の下限手前で辛うじて踏みとどまっている状態です。

 

実は2023年の下落局面時も雲下限がサポートとして機能したことにより、強い売りシグナルとされる「三役逆転」の点灯をぎりぎりで回避したという経緯があります。今回も同様に雲下限が最後の砦となるのか、今後の推移を注目しておきましょう。なお、雲の下限ですが今年いっぱいは7.21円付近での横ばい推移となっています。


今後の取引材料・変動要因をチェック 米大統領の言動次第で予想は困難だが

最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は日銀の金融政策となります。米国の関税政策を巡って市場全般で先行き不透明感が強まっているものの、市場では日銀の早期利上げ観測もくすぶりつつけています。

南アフリカ準備銀行(SARB、中央銀行)は前回(3月20日)の金融政策決定委員会で政策金利の据え置きを決定。ただ、6人のメンバーのうち2人が0.25%の利下げを支持していたことが明らかになっています。今年のインフレ・経済成長率見通しについても小幅に下方修正されており、5月29日開催の次回会合での判断も注目されます。


一方で、両中銀の金融政策以上に注目しておきたいのが米政権の動き。トランプ米大統領の相互関税によって外国為替証拠金取引(fx)市場全般に動揺が広がりましたが、その後も米大統領の暴走はとどまるところを知りません。

日本に対しては今週開催される予定の日米財務相会談で円安是正がつきつけられる可能性があるほか、自身が第一次政権で指名したパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長に対しても、早期の利下げ要求に応じないとみるや解任を検討しているとの報道が伝わっています。

今後も米大統領の言動次第で価格の大幅変動に見舞われる可能性があり、現状は相場予想も難しい状況です。しばらくは最新の情報などを常に確認しながら慎重な投資判断が必要となるでしょう。

その他のイベントは以下の通りとなります。

 

今後1カ月の重要イベント

4月23日 南ア 3月消費者物価指数(CPI)

4月24日 日本 日米財務相会談(執筆時点では予定)

4月30日-5月1日 日本 日銀、金融政策決定会合

5月21日 南ア 4月CPI

5月23日 日本 4月全国CPI


この連載の一覧
第143回 南アフリカランド円相場予想、一目雲下限を維持できるか注目
第142回 豪ドル米ドル相場予想、下降トレンドへの移行で下押し圧力も増すか
第141回 ポンド円、下押し圧力を警戒すべき局面
第140回 NZドル米ドル、下落トレンド転換のチャンス到来か
第139回 メキシコペソ円、反発に向けたラストチャンスか
第138回 豪ドル円、調整局面入り
第137回 ユーロ円、昨年8月安値が再び焦点に
第136回 ドル円、短期的な下値リスクに要注意
第135回 NZドル円、さらなる下値余地拡大に注意
第134回 トルコリラ円、過去最安値更新が視野に
第133回 ユーロドル、2023年来のレンジ相場を下方ブレイク
第132回 ランド円、直近の下げ加速なら2020年来のトレンドも怪しく
第131回 豪ドル米ドル、レンジブレイクを回避できるか
第130回 ポンド円、ダブルトップの完成が迫る
第129回 NZドル米ドル、一転下落で下値目標も迫る
第128回 メキシコペソ円、現状は7円台のレンジ相場
第127回 豪ドル円、穏やかな上昇トレンドながら下値リスクもちらり
第126回 ドル円、ポジティブな状況だがあまり強気に立ち回ると・・・
第125回 ユーロ円、直近安値の維持がポイントに
第124回 NZドル円、新たな下落トレンドがスタートか
第123回 トルコリラ円、週足でのトレンド転換はまだまだ遠く
第122回 ユーロドル、下値余地拡大の可能性に注意
第121回 豪ドル米ドル、慎重な判断が求められる局面
第120回 ランド円、一目均衡表の雲上限が今後のポイントに
第119回 米大統領選後のシナリオ別相場展望
第118回 米大統領選のアノマリー
第117回 米大統領選の直前特集、FX初心者向けガイド
第116回 ポンド円、上昇トレンドチャネルが維持できれば・・
第115回 NZドル米ドル、「三角保ち合い」は上方ブレイクで決着
第114回 ドル円、1年半続いた上昇トレンドが終了して今後は?
第113回 ポンドドル、10年来の下げ相場転換に向けて
第112回 メキシコペソ円、一段の下値余地拡大に注意
第111回 豪ドル円、4年続いたトレンドが終了
第110回 トルコリラ円、売り材料豊富で買い向かうには・・
第109回 NZドル円、相対的な上値の重さが目立つ
第108回 ユーロ円、はたして「ダマシ」だったのか
第107回 ランド円、週足は上昇トレンド崩れたが月足は?
第106回 豪ドル米ドル、保ち合いか下落トレンドか
第105回 NZドル米ドル、「三角保ち合い」のブレイクを見極めたい
第104回 ドル円、上昇トレンドは崩れていない
第103回 ポンド円、順調に上値試しを継続
第102回 メキシコペソ円、2022年からの上昇トレンドは終了?
第101回 ユーロドル、現在の下落基調でレンジブレイクなるか
第100回 トルコリラ円、週足ベースでも変化の兆し
第99回 豪ドル円、10数年ぶりの高値の視野に
第98回 NZドル円、ますます上昇トレンドが明瞭に
第97回 ポンドドル、短期的には上方向へ
第96回 ユーロ円、ユーロ導入来高値更新で未知の領域へ
第95回 ランド円、10数年来の相場転換となる可能性も
第94回 ドル円、急落後も上昇トレンドを維持
第93回 メキシコペソ円、上昇トレンドは健在だが・・
第92回 トルコリラ円、大きなチャンス到来か
第91回 豪ドル米ドル、上方向は攻めづらい
第90回 NZドル米ドル、トレンド転換につながる注目ポイントに接近
第89回 ユーロドル、ヘッド・アンド・ショルダーズの完成なるか
第88回 ドル円、5月中にも上方向へブレイクか
第87回 豪ドル円、上昇トレンド継続に黄色信号
第86回 NZドル円、上昇トレンド継続も目先は調整リスク
第85回 ポンドドル、長期下降トレンドの転換は間近?
第84回 ランド円、上昇トレンドは本物か
第83回 メキシコペソ円、レンジブレイクのチャンス到来
第82回 ユーロドル、レンジ相場脱却の手掛かりは乏しい
第81回 トルコリラ円、昨年8月以来のチャンスをものにできるか
第80回 ドル円、上昇トレンドを維持も上値追いは慎重に
第79回 NZドル米ドル、長期下落トレンドのブレイクは失敗か
第78回 豪ドル米ドル、依然として下落トレンド
第77回 ポンド円、来年以降の下値リスクに警戒
第76回 ランド円、ヘッドアンドショルダーズの可能性高まる
第75回 メキシコペソ円、レンジ相場がしばらく継続か
第74回 ユーロドル、メインシナリオはレンジ相場
第73回 ドル円、ポイントは一目均衡表雲の維持
第72回 低迷ぶりが際立つトルコリラ円、反発の可能性は?
第71回 豪ドル円、上値トライのチャンスだが力強さを欠く
第70回 NZドル円、いよいよ過去最高値も視野入りか
第69回 ユーロ円、月足チャートでは不安なし 週足では?
第68回 ポンドドル、一目雲に接近で正念場に
第67回 ランド円、ヘッドアンドショルダーズの懸念消えず
第66回 NZドル米ドルに反発のチャンス到来?
第65回 好調なメキシコペソ円に失速の気配
第64回 ドル円、150円台までは介入の可能性低い
第63回 カナダドル円、110円台への再挑戦が迫る
第62回 リラ円、一目雲を数年来上抜けできず
第61回 今後の豪ドル米ドル相場
第60回 今後のユーロドル相場
第59回 今後のポンドドル相場
第58回 今後のランド円相場
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第41回 今後の豪ドル円相場
第40回 今後のドル円相場
第39回 ダウ理論とエリオット波動(3)
第38回 ダウ理論とエリオット波動(2)
第37回 ダウ理論とエリオット波動(1)
第36回 ローソク足(3)
第35回 ローソク足(2)
第34回 ローソク足(1)
第33回 一目均衡表(4)
第32回 一目均衡表(3)
第31回 一目均衡表(2)
第30回 一目均衡表(1)
第29回 リトレースメント
第28回 避けられるリスク(その他の国編)
第27回 避けられるリスク(英国・オセアニア編)
第26回 避けられるリスク(日本・欧州編)
第25回「誰にでもわかるチャート教室」 避けられるリスク(米国編)
第24回「誰にでもわかるチャート教室」 ポイント&フィギュア
第23回「誰にでもわかるチャート教室」 練行足とカギ足
第22回「誰にでもわかるチャート教室」 新値足
第21回「誰にでもわかるチャート教室」 パラボリック
第20回「誰にでもわかるチャート教室」 エンベロープとボリンジャーバンド
第19回「誰にでもわかるチャート教室」 MACD
第18回「誰にでもわかるチャート教室」 ROC
第17回「誰にでもわかるチャート教室」 突発的な急変動に対処する
第16回「誰にでもわかるチャート教室」 DMI
第15回「誰にでもわかるチャート教室」 サイコロジカル・ライン
第14回「誰にでもわかるチャート教室」 RCI
第13回「誰にでもわかるチャート教室」 ストキャスティクス
第12回「誰にでもわかるチャート教室」 RSI
第11回「誰にでもわかるチャート教室」 時間軸の考え方
第10回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その4
第9回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その3
第8回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その2
第7回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その1
第6回「誰にでもわかるチャート教室」 移動平均線~その2
第5回「誰にでもわかるチャート教室」 移動平均線~その1
第4回「誰にでもわかるチャート教室」チャネルラインと外国為替市場の独自性
第3回「誰にでもわかるチャート教室」相場の方向性が一目瞭然、トレンドライン
第2回「誰にでもわかるチャート教室」相場のトレンドを探る
第1回「誰にでもわかるチャート教室」 相場が不安定だからこそ、チャート分析に頼りたい

為替情報部 アナリスト

岩間 大祐

大学卒業後の2004年に国内証券会社に入社。 外国為替証拠金取引業務に携わった後、金融情報サービス会社にて個人投資家向けの為替情報配信業務を担当。市況サービスのほか、テクニカル分析を軸にした情報を配信する。 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

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