FX 誰にでもわかるチャート教室

第6回「誰にでもわかるチャート教室」 移動平均線~その2

前回からお話している「移動平均線」ですが、移動平均線による一般的な分析として「グランビルの法則」があります。米国のアナリストであるジョセフ・E・グランビルは移動平均線を使用した分析で、8つの売買転換シグナルがあるとしています。


グランビルの8法則

下値の図は8つの法則を簡易的に示したもの。赤線が実線、黄線が移動平均線となります。①から④が買いのタイミング、⑤から⑧が売りのタイミングです。それぞれ見ていきましょう。




買い

① 移動平均線が横ばいもしくは上昇しつつある局面で、実線が移動平均線を上抜ける

② 移動平均線は上昇しているのに、実線が移動平均線を下抜ける

③ 実線が上昇中の移動平均線に向かって下落したものの、移動平均線を下抜けることなく、再び上昇に転じる

④ 移動平均線は下落しているが、実線が移動平均線から大きく乖離して下落する


売り

⑤ 移動平均線が横ばいもしくは下落しつつある局面で、実線が移動平均線を下抜ける

⑥ 移動平均線は下落しているのに、実線が移動平均線を上抜ける

⑦ 実線が下落中の移動平均線に向かって上昇したものの、移動平均線を上抜けることなく、再び下落に転じる

⑧ 移動平均線は上昇しているが、実線が移動平均線から大きく乖離して上昇する


以上の8法則ですが、④と⑧は移動平均線の示すトレンドと逆の取引(いわゆる逆張り)をしている点には注意が必要です。特に④は昔からの相場格言「落ちてくるナイフはつかむな」に反する取引でもあります。


複数の移動平均線を利用する

ここまで1本の移動平均線を使ったチャート分析を紹介してきましたが、続いては複数の移動平均線を利用した分析についてお話していきます。


特に有名なのがゴールデン・クロスとデッド・クロス。ゴールデン・クロスは短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に突き抜けた時に発生、これを買いシグナルとするものです。逆にデッド・クロスは短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に突き抜けた時に発生、売りシグナルとなります。


下図はユーロドルの日足チャート。短期の移動平均線として75日移動平均線(青線)、長期の移動平均線として200日移動平均線(黄線)を付加したものです。



2020年7月に200日移動平均線を75日移動平均線が上抜けたことでゴールデン・クロスが発生、2021年8月に200日移動平均線を75日移動平均線が下抜けたことでデッド・クロスが発生しています。


また、両方の移動平均線が上昇中に両線の乖離が拡大中であれば、上昇の勢いが強く(強い上昇トレンドが進行)、両線の乖離が縮小すると上昇の勢いが弱くなり、相場が煮詰まっている状態を示します。


上図ですと、ゴールデン・クロスの発生→強い上昇トレンド→相場の煮詰まり→デッド・クロスの発生→強い下落トレンドの順に相場が推移した格好です。


分かりやすいが故に頼りがちになる弊害も

このように買い・売りシグナルの発生が明確に分かるため重宝されるゴールデン・クロスとデッド・クロスですが、今回のようにトレンドの転換と合致しないケースも多く、誤ったシグナルを表示、トレンドの転換とタイミングが大きくずれるなどといったことも発生します。


分かりやすいことでゴールデン・クロスとデッド・クロスのみに頼りがちとなる方もいますが、実際の取引では判断基準のうちの一つと考えることが重要です。以前に紹介したトレンドラインや前述のグランビルの法則なども駆使し、多角的な視点で相場のトレンドを把握していきましょう。

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為替情報部 アナリスト

岩間 大祐

大学卒業後の2004年に国内証券会社に入社。 外国為替証拠金取引業務に携わった後、金融情報サービス会社にて個人投資家向けの為替情報配信業務を担当。市況サービスのほか、テクニカル分析を軸にした情報を配信する。 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

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