米国では11月5日に4年に1度の大統領選挙が実施されます。共和党のトランプ候補と民主党のハリス候補の対決となりますが、過去の大統領選の結果とその前後でドル円がどのように推移したのか、今回は米大統領選とドル円のアノマリーについて確認していきましょう。
過去の大統領選の結果とドル円の値動き
ドル円が現在の完全な変動相場制に移行した1973年以降、米大統領選挙は今回を除いて計12回行われました。米国の政治は共和党と民主党の2大政党制が形成されており、過去12回の大統領選挙では共和党・民主党の候補がそれぞれ6回勝利しています。
今年もそうですが大統領選挙が実施される年は、新たな大統領を目指す候補や返り咲きを狙う候補、再選を目指す現職などがそれぞれの政策方針を表明し、支持率拡大を図ります。為替市場は各候補への期待感や不安などを反映した相場になっていきます。それに対して翌年は新大統領が実際に打ち出す政策への評価などが為替相場に反映されていくことになります。
これらを踏まえて大統領選挙が実施された年、および翌年のドル円の状況を確認していきましょう。
上の表は1976年以降のドル円の年間騰落率(%表記)になります。
大統領選挙が実施された年は「ドル高・円安」方向に進んだ回数が5回、「ドル安・円高」方向に進んだ回数が7回となりました。ほぼ半々といった状況で明確な方向性は見られないようです。
これに対して大統領選の翌年は「ドル高・円安」方向に進んだ回数が8回、「ドル安・円高」方向に進んだ回数が4回となっており、こちらは「ドル高・円安」の傾向が見られます。さらに1985年(-20.41%)は※プラザ合意があった年であることを差し引くと、大統領選の翌年は「ドル高・円安」に動きやすいというアノマリーがありそうです。
※プラザ合意・・・行き過ぎたドル高を是正するために、先進5カ国の財務相・中央銀行総裁会議で決定された合意。以降、急速にドル安・円高が進行しました。
米大統領選挙の短期的な影響は?
ここまでは比較的長期の視点で米大統領選挙とドル円への影響について見てきましたが、短期的な為替相場の反応についても確認していきます。米大統領選挙が実施されるのは基本的に11月上旬ですので、11月の1カ月間に絞ったドル円の騰落率を確認してみましょう。
米大統領選が実施された4年ごとに11月のドル円月間騰落率(%表記)を見ると、明確な「ドル高・円安」や「ドル安・円高」の傾向は見られないようです。ただ、気になるのは2016年の動き。これまでは±4%以内の範囲に収まっていたのに対し、この年は9%超も「ドル高・円安」方向に推移しています。
2016年の大統領選挙といえばトランプ氏がヒラリー・クリントン氏に勝利していますが、今年もトランプ氏が勝利した際には2016年のような「ドル高・円安」の再現があるのでしょうか。次回はトランプ候補とハリス候補のそれぞれが勝利した際に考えられる為替相場のシナリオなどについてお話していきます。