今回解説していく通貨はユーロ円です。為替市場は米政権の関税政策やトランプ米大統領の発言に振り回される状況が継続しており、見通しづらい環境となっています。足もとでは欧州連合(EU)と米国の貿易戦争激化の懸念も台頭しており、今後のユーロ相場を予想するうえでリスク要因となる可能性があるでしょう。一方で、テクニカル面では少しずつ反発への期待も高まっているようです。では、チャート上でユーロ円の状況を確認していきましょう。
2025年現在のユーロ円の相場焦点 米関税政策の不透明感は続く、今後の貿易交渉次第で大きなリスクも
2025年に入ってからここまでのユーロ円の価格推移ですが、160円を挟んだ水準でのレンジ内取引が続いています。現在の外国為替市場はトランプ米政権の貿易・関税政策に振らされる米ドル主導の展開となっている面が大きく、ユーロ円相場はドル円とユーロドルの綱引き状態となっているため、変動幅が限られているようです。
ただ、今後についてはユーロ自身の動きにも注意が必要な局面となるかもしれません。欧州連合(EU)圏で現在最大の問題となっているのが、米政権が前週末に発表した鉄鋼およびアルミ製品に対する関税の引き上げ(25%から50%へ)。
欧州の鉄鋼は基幹産業の一つであり、EU全体の鉄鋼・アルミニウム生産量の20%を米国に輸出しています。このため今回の関税引き上げに対する影響は他国と比べても大きく、EU側は今回の措置に反発。EU側が25%の関税時に設定した約210億ユーロ相当の報復関税は対米交渉を理由に7月14日まで保留扱いとされていますが、今回の米関税引き上げを受けて、EUは「追加の対抗措置を実施する可能性がある」「既存および追加の措置は7月14日から自動的に発効」「状況によってはそれより早く発効する可能性もある」などと強硬な姿勢を示しています。
EU側は本日4日まで開催されている経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会で、関税の削減や撤廃を求めて米国側と協議する予定となっていますが、交渉の行方次第ではEUと米国の貿易戦争の激化、ユーロ圏経済の減速懸念、ユーロ相場の下押しといったリスクも表面化してくる可能性があるでしょう。
今後もユーロ円のトレードをする際には最新の貿易・関税関連の情報やニュースをチェック、内容を確認しながら投資判断をしていく必要がありそうです。
ユーロ円の週足分析 レンジ相場入りか、下落リスクはやや後退
下図のチャートはユーロ円の週足チャートになります。前回の分析(3月12日)からの推移を見ていくと、徐々に下値を切り上げていく展開となり、5月中旬には一時165円台に乗せる場面も見られました。
今回の上昇によって前回の記事で指摘していた2024年10月高値を始点とする短期の下降トレンドライン(チャート上の黄色実線)は上方向にブレイク。現状のユーロ円は160円を中心するレンジ相場(チャート上の四角で囲った部分)へと移行しつつあります。
チャート下部に追加した「DMI」で確認しても、+DIと-DIが頻繁に交差して明確な方向感が出ておらず、トレンドの強さを示すADXは低下基調。やはり現在は明確なトレンドが形成されていない状況=レンジ相場と言えそうです。
ユーロ円の日足分析 一目雲を支えに底堅さを維持できればレンジの上値トライも
では現在のレンジ相場をブレイクする可能性について、今度は短期視点で確認していきましょう。下図のチャートはユーロ円の日足チャートになります。今回は「一目均衡表」も追加してあります。
一目均衡表でみると、転換線<基準線、遅行スパン>価格線、価格線>抵抗帯(雲)の状況となっています。5月後半までは転換線>基準線も成立しており、強い買いシグナルとされる「三役好転」が点灯していましたが、現在では解消されています。
ただ、過去の価格線と一目均衡表の関係を確認してみると、4月前半には一目の雲下限、5月後半には一目の雲上限がそれぞれユーロ円のサポートとして機能しているようです。一目の雲上限は今後6月後半にかけて163円台まで切り上がっていく見込みですから、雲上限がサポートとして機能していけばレンジ上限を試す可能性も高まってくるでしょう。
今後の上値は当然ですが、レンジの上限にあたる2024年10月31日高値の166.69円がポイントになります。下値の目処は5月23日安値の161.09円、4月7日安値の158.30円、レンジ下限にあたる2024年8月5日安値の154.42円と続くことになります。
今後の取引材料・変動要因をチェック 日欧中銀の金融政策や対米交渉関連の日程に注目
最後に今後1カ月間の主要な経済指標や重要イベント等も確認しておきます。注目は日本およびユーロ圏の金融政策でしょうか。
日銀については政策金利の据え置きが予想されており、前回の展望レポートで物価目標の到達時期が後ずれしていた影響から、足もとでは追加利上げ観測も後退しています。
対して今週に予定されている欧州中央銀行(ECB)の政策決定理事会では、政策金利の引き下げ(2.40%から2.15%へ)が予想されています。こちらも金利変更については波乱なく終えそうですが、次の利下げスケジュールについてはマーケットでも見方が分かれているため、ラガルドECB総裁が記者会見でどのような見解を示すのか注目が集まりそうです。
また、前述したように欧米間で貿易協議が行われている経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会は今日が最終日となります。さらには主要7カ国首脳会議(G7サミット)が6月15-17日にカナダで開催されます。トランプ米大統領も主席予定となっており、各国首脳との協議の行方にも注意が必要となります。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
6月4日 経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会(最終日)
6月5日 ユーロ圏 欧州中央銀行(ECB)、金融政策決定理事会
6月15-17日 主要7カ国首脳会議(G7サミット)
6月16-17日 日本 日銀金融政策決定会合
6月20日 日本 5月全国消費者物価指数(CPI)
7月1日 ユーロ圏 6月消費者物価指数(HICP、速報値)