今回解説していく通貨はポンドドルです。英国ではインフレの鈍化が想定ほど進展していないことを受け、英中銀の利下げ開始が年後半(11月)頃まで後ずれするのではとの思惑が浮上。また、英総選挙が7月4日に実施されることになり、英国では金融政策に加えて政局に関しても先行き不透明感が強まっているようです。では、チャート上でもポンドドルの状況を確認していきましょう。
ポンドドルの週足分析
下図のチャートはポンドドルの週足チャートになります。前回の分析(2月28日)からの変動を見ていくと、2014年7月高値を始点とする下降トレンド(チャート上の青色実線)は継続。2021年5月高値を始点とする下降トレンド(チャート上の青色点線)は3月に一時上抜ける場面が見られましたが、買い戻しの勢いも長続きはしませんでした。4月には1.2300ドルまで下落しており、総じて1.25-26ドル台を中心とするもみ合いとなっています。
2014年7月高値を始点とする下降トレンドが有効である以上、長期視点で下落トレンドが続いていると言っても良さそうですが、今回チャート下部に追加した「DMI」で見ると、+DIと-DIは交互にクロスする状況が続いており、明確なトレンドはうかがえず。さらにはトレンドの強さを示すADXが少なくとも2014年以来の水準まで低下しており、額面通りの下落トレンドと判断するのは危険かもしれません。
ポンドドルの日足分析
次に日足でも見ていきます(下図のチャート)。チャート上のトレンドライン(青色実線)は週足分析で紹介したものと同じですが、2021年5月高値を始点とする下降トレンドラインはすでに上抜けているので、新たに昨年7月高値を始点とする下降トレンドライン(チャート上の青色点線)を引き直しています。また、今回は昨年10月安値を始点とする上昇トレンドライン(チャート上の黄色点線)も加えました。
チャート上の青色・黄色点線から判断すると、現在は上値の切り下げ・下値の切り上げが同時に進行していることが分かるかと思います。さらに2022年9月安値からの上昇も加味すると、どうやら現在は「ペナント」と呼ばれるフォーメーションになっているようです。
「ペナント」は一般的に「コンティニュエーション・フォーメーション=トレンドの継続を示唆」するものですから、「ペナント」が持続している以上、今後の方向性は上方向ということになります。
この視点で考えると昨年7月高値を始点とする下降トレンドライン(チャート上の青色点線)の上抜けがポイントになりますね。なお、この下降トレンドラインは本日時点で1.2810ドル付近に位置、1か月後には1.2770ドル台まで切り下がる見込みです。さらにチャート上の基本である直近高値の上抜けも重要であることから、3月8日高値の1.2894ドル(チャート上の丸で囲った部分)も超えられると「なお良し」と言えるでしょう。
今後のイベントは
最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は米・英の金融政策になるでしょう。また、期間内ではありませんが、7月4日に実施される英総選挙にも注意が必要です。現在の世論調査によると与党・保守党は野党・労働党に支持率で大きくリードされており、14年ぶりの政権交代が起きる可能性が高まっています。その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
5月31日 米国 4月PCEコア・デフレーター
6月7日 米国 5月米雇用統計
6月11日-12日 米国 米連邦公開市場委員会(FOMC)
6月12日 米国 5月消費者物価指数(CPI)
6月19日 英国 5月CPI
6月20日 英国 イングランド銀行(英中銀、BOE)、金融政策公表
6月28日 米国 5月PCEコア・デフレーター