前回はトレンドの継続・転換の有無を判断する際の材料として、過去の高値や安値を利用するやり方を紹介しましたが、今回はもう一つの手段「トレンドライン」についてお話していきましょう。
トレンドラインとは
ご存知の方も多いでしょうが、トレンドラインとは過去につけた主要な安値・高値などを目処に、チャートに付け加えた補助線のことです。
一般的には時間軸で左側(現在から遠い過去)から右側(現在に近い過去)に向けて引くとされていますが、現在により近い価格の方が現在の価格に及ぼす影響が強いとの考えから、時間軸で右側から左側に向けて引くやり方もあるようです。ここでは一般的な左側→右側のトレンドラインについて述べていきます。
サポートラインとレジスタンスライン
下図はドル円が本格的な上昇を始めた今年3月からのチャート。3月上旬につけた安値を起点として引いたトレンドラインです。こうした安値同士を結んだトレンドラインをサポートライン(下値支持線)と呼びます。
サポートラインの基本的な考え方として、価格がサポートラインを上回って推移している場合は『トレンドが継続している』と判断します。そのうえで、価格がサポートラインを下抜けると『トレンドが転換した』と判断。今回も価格がサポートラインを下抜けた5月中旬を境に相場の流れが大きく変わっていることが分かります。
一方、5月上旬につけた高値を起点として、高値同士を結んで引いたトレンドラインがレジスタンスライン(上値抵抗線)です。
サポートラインとは考えが逆になり、価格がレジスタンスラインを下回って推移している場合は『トレンドが継続』、価格がレジスタンスラインを上抜けると『トレンドが転換した』と判断します。このチャートでも価格がレジスタンスラインを上抜けた5月末を境に相場が再び上昇に転じたようですね。
トレンドラインは複数引ける
トレンドの方向やトレンドの継続・転換の有無を見分けるために有用なトレンドラインですが、分析側の判断で引くわけですから、当然ながら分析者の主観が入ります。下図は先ほどと同じドル円のチャート。上昇局面にスポットを当てたものです。
サポートラインの定義は安値同士を結んだトレンドラインということですから、通常は主要な安値同士を結ぶサポートラインは複数引くことが可能です。
ここでは3月上旬を起点として、①3月末安値と結んだ緑の破線、②4月末安値と結んだ黄の点線、③5月上旬安値と結んだ青の実線、④5月中旬安値と結んだ赤の実線を引くことができました。
高値・安値判別法との組み合わせでトレンドを判断
後から考えれば、青線を下抜けたことで上昇トレンドが転換したことが分かりますが、それは結果論というもの。実際にトレンドが転換するまでは、どのサポートラインが有効なのか判別するのは難しい問題です。
その際にトレンドの継続・転換の仮説を補強するのが、第2回で紹介した過去の高値や安値です。今回はサポートラインを①から④の順序で引くことができましたが、サポートラインを下抜けた前後の高値に注目してください。
・①緑線を下抜けた前後、(2)の高値が(1)の高値を上抜けたので、ここは上昇トレンドが継続と判断します。
・②黄線を下抜けた前後、(3)の高値が(2)の高値で上抜けたので、ここも上昇トレンドが継続と判断。
・③青線を下抜けた前後、(4)の高値は(3)の高値を上抜けることができませんでした。
これで青線を下抜けたことで上昇トレンドが転換した可能性が高まったと言えそうですね。
多角的な視点で「だまし」を避けよう
トレンドの継続・転換を探るにはこうした複数の視点から確認することが重要です。
自分の恣意的にトレンドラインを1本だけ引いて、それを上抜けた・下抜けたといってトレードすると、相場の一時的な過変動(チャートのだまし)につられてしまうことにもなりかねません。トレンドを判断する際には常に頭に入れておきたいところです。