FX 誰にでもわかるチャート教室

第64回 ドル円、150円台までは介入の可能性低い

今回解説していく通貨はドル円です。先週には日米で金融政策決定会合が開催されました。日銀は現状の大規模緩和策を継続していく姿勢を改めて表明。これに対して米連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利こそ市場予想通りの据え置きとなったものの、声明文や政策金利見通し(ドット・チャート)などの内容は予想以上にタカ派的だったと受け止められ、結果的にドル円相場は日米金融政策の方向性の違いを手掛かりにした円売り・ドル買いの流れが続いています。

ではチャート上でもドル円の状況を確認していきましょう。


ドル円の日足分析

今回は日足の分析から始めていきましょう。下図のチャートはドル円の日足チャートになります。前回(8月2日)からの推移を確認すると、過去に同水準を巡って激しい攻防があり、重要なポイントとなっていた145.00円付近(チャート上の青色実線)をしっかりとブレイク。

その一方で今年1月安値を始点とする上昇トレンド(黄色点線)や7月14日安値を始点とした短期上昇ライン(黄色実線)などは依然としてしっかりと維持されています。



当然ながらここからの上値目処は心理的節目となる150.00円や昨年10月21日高値の151.95円となるでしょう。下値については前述した145.00円付近が今度はサポートに転じる可能性があるほか、8月24日安値の144.60円や同月23日安値の144.54円、9月1日安値の144.45円(いずれもチャート上で丸で囲った部分)などが目処になりそうです。


ドル円の週足分析

さて、ここまではポジティブな話題を中心に見ていきましたが、ここからはリスク面についてお話しようと思います。ドル円の下値リスクというと注目はやはり政府・日銀による円買い介入の行方でしょう。今回は週足チャート(執筆した9月25日時点)で介入の警戒ポイントについて確認していこうと思います。



上図チャート上の丸で囲った部分は前回、約11年ぶりに為替介入が実施されたポイントです(昨年9月22日)。その当時の状況と現在を比較すると、チャート下部に追加した「DMI」ではいずれも上昇トレンド(+DI>-DI)となっていますが、トレンドの強さを示すADXは昨年9月時点と比べて大きく低水準に位置。現在の上昇トレンドがそれほど強いものでないことを示唆しています。


また、前回介入が実施された時点までの推移を確認すると昨年3月上旬からドル円の急速な上昇が開始され、介入時点までの上昇幅は約半年で27%に達していました。これに対して今年1月の年初来安値を起点として今回の上昇幅は約8か月間で17%ほど。比較的ではありますが現時点では上昇が抑えられているようにうかがえます。


さらに「ボリンジャーバンド」でも見ていきましょう。ボリンジャーバンドによると前回の介入時点では+2σを上回った際に実施されました。現在のボリンジャーバンド+2σ水準は150.00円付近ですが、+2σ以下に抑えられています。相場が急激に上昇した場合はボリンジャーバンドも拡大していくため、この150.00円という水準は固定ではありませんが、少なくとも現状から考えると150.00円以下の水準では介入の可能性も否定的に見てよいのではないでしょうか。


今後のイベントは

最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。期間内に日米の金融政策公表は予定されておらず、基本的にはインフレ動向を中心に一つ一つの経済指標を追っていくことになりそうです。その他のイベントは以下の通りとなります。


今後1カ月の重要イベント

9月29日 米国 8月個人消費支出(PCEコア・デフレーター)

10月6日 米国 9月雇用統計

10月12日 米国 9月消費者物価指数(CPI)

10月20日 日本 9月全国CPI

10月27日 米国 9月PCEコア・デフレーター

この連載の一覧
第122回 ユーロドル、下値余地拡大の可能性に注意
第121回 豪ドル米ドル、慎重な判断が求められる局面
第120回 ランド円、一目均衡表の雲上限が今後のポイントに
第119回 米大統領選後のシナリオ別相場展望
第118回 米大統領選のアノマリー
第117回 米大統領選の直前特集、FX初心者向けガイド
第116回 ポンド円、上昇トレンドチャネルが維持できれば・・
第115回 NZドル米ドル、「三角保ち合い」は上方ブレイクで決着
第114回 ドル円、1年半続いた上昇トレンドが終了して今後は?
第113回 ポンドドル、10年来の下げ相場転換に向けて
第112回 メキシコペソ円、一段の下値余地拡大に注意
第111回 豪ドル円、4年続いたトレンドが終了
第110回 トルコリラ円、売り材料豊富で買い向かうには・・
第109回 NZドル円、相対的な上値の重さが目立つ
第108回 ユーロ円、はたして「ダマシ」だったのか
第107回 ランド円、週足は上昇トレンド崩れたが月足は?
第106回 豪ドル米ドル、保ち合いか下落トレンドか
第105回 NZドル米ドル、「三角保ち合い」のブレイクを見極めたい
第104回 ドル円、上昇トレンドは崩れていない
第103回 ポンド円、順調に上値試しを継続
第102回 メキシコペソ円、2022年からの上昇トレンドは終了?
第101回 ユーロドル、現在の下落基調でレンジブレイクなるか
第100回 トルコリラ円、週足ベースでも変化の兆し
第99回 豪ドル円、10数年ぶりの高値の視野に
第98回 NZドル円、ますます上昇トレンドが明瞭に
第97回 ポンドドル、短期的には上方向へ
第96回 ユーロ円、ユーロ導入来高値更新で未知の領域へ
第95回 ランド円、10数年来の相場転換となる可能性も
第94回 ドル円、急落後も上昇トレンドを維持
第93回 メキシコペソ円、上昇トレンドは健在だが・・
第92回 トルコリラ円、大きなチャンス到来か
第91回 豪ドル米ドル、上方向は攻めづらい
第90回 NZドル米ドル、トレンド転換につながる注目ポイントに接近
第89回 ユーロドル、ヘッド・アンド・ショルダーズの完成なるか
第88回 ドル円、5月中にも上方向へブレイクか
第87回 豪ドル円、上昇トレンド継続に黄色信号
第86回 NZドル円、上昇トレンド継続も目先は調整リスク
第85回 ポンドドル、長期下降トレンドの転換は間近?
第84回 ランド円、上昇トレンドは本物か
第83回 メキシコペソ円、レンジブレイクのチャンス到来
第82回 ユーロドル、レンジ相場脱却の手掛かりは乏しい
第81回 トルコリラ円、昨年8月以来のチャンスをものにできるか
第80回 ドル円、上昇トレンドを維持も上値追いは慎重に
第79回 NZドル米ドル、長期下落トレンドのブレイクは失敗か
第78回 豪ドル米ドル、依然として下落トレンド
第77回 ポンド円、来年以降の下値リスクに警戒
第76回 ランド円、ヘッドアンドショルダーズの可能性高まる
第75回 メキシコペソ円、レンジ相場がしばらく継続か
第74回 ユーロドル、メインシナリオはレンジ相場
第73回 ドル円、ポイントは一目均衡表雲の維持
第72回 低迷ぶりが際立つトルコリラ円、反発の可能性は?
第71回 豪ドル円、上値トライのチャンスだが力強さを欠く
第70回 NZドル円、いよいよ過去最高値も視野入りか
第69回 ユーロ円、月足チャートでは不安なし 週足では?
第68回 ポンドドル、一目雲に接近で正念場に
第67回 ランド円、ヘッドアンドショルダーズの懸念消えず
第66回 NZドル米ドルに反発のチャンス到来?
第65回 好調なメキシコペソ円に失速の気配
第64回 ドル円、150円台までは介入の可能性低い
第63回 カナダドル円、110円台への再挑戦が迫る
第62回 リラ円、一目雲を数年来上抜けできず
第61回 今後の豪ドル米ドル相場
第60回 今後のユーロドル相場
第59回 今後のポンドドル相場
第58回 今後のランド円相場
第57回 今後のNZドル円相場
第56回 今後のドル円相場
第55回 今後のメキシコペソ円相場
第54回 今後のトルコリラ円相場
第53回 今後の豪ドル円相場
第52回 今後のNZドル米ドル相場
第51回 今後のユーロドル相場
第50回 今後のユーロ円相場
第49回 今後の豪ドル米ドル相場
第48回 今後のポンド円相場
第47回 今後のドル円相場
第46回 今後のランド円相場
第45回 今後のトルコリラ円相場
第44回 今後のNZドル円相場
第43回 今後のメキシコペソ円相場
第42回 今後のユーロドル相場
第41回 今後の豪ドル円相場
第40回 今後のドル円相場
第39回 ダウ理論とエリオット波動(3)
第38回 ダウ理論とエリオット波動(2)
第37回 ダウ理論とエリオット波動(1)
第36回 ローソク足(3)
第35回 ローソク足(2)
第34回 ローソク足(1)
第33回 一目均衡表(4)
第32回 一目均衡表(3)
第31回 一目均衡表(2)
第30回 一目均衡表(1)
第29回 リトレースメント
第28回 避けられるリスク(その他の国編)
第27回 避けられるリスク(英国・オセアニア編)
第26回 避けられるリスク(日本・欧州編)
第25回「誰にでもわかるチャート教室」 避けられるリスク(米国編)
第24回「誰にでもわかるチャート教室」 ポイント&フィギュア
第23回「誰にでもわかるチャート教室」 練行足とカギ足
第22回「誰にでもわかるチャート教室」 新値足
第21回「誰にでもわかるチャート教室」 パラボリック
第20回「誰にでもわかるチャート教室」 エンベロープとボリンジャーバンド
第19回「誰にでもわかるチャート教室」 MACD
第18回「誰にでもわかるチャート教室」 ROC
第17回「誰にでもわかるチャート教室」 突発的な急変動に対処する
第16回「誰にでもわかるチャート教室」 DMI
第15回「誰にでもわかるチャート教室」 サイコロジカル・ライン
第14回「誰にでもわかるチャート教室」 RCI
第13回「誰にでもわかるチャート教室」 ストキャスティクス
第12回「誰にでもわかるチャート教室」 RSI
第11回「誰にでもわかるチャート教室」 時間軸の考え方
第10回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その4
第9回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その3
第8回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その2
第7回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その1
第6回「誰にでもわかるチャート教室」 移動平均線~その2
第5回「誰にでもわかるチャート教室」 移動平均線~その1
第4回「誰にでもわかるチャート教室」チャネルラインと外国為替市場の独自性
第3回「誰にでもわかるチャート教室」相場の方向性が一目瞭然、トレンドライン
第2回「誰にでもわかるチャート教室」相場のトレンドを探る
第1回「誰にでもわかるチャート教室」 相場が不安定だからこそ、チャート分析に頼りたい

為替情報部 アナリスト

岩間 大祐

大学卒業後の2004年に国内証券会社に入社。 外国為替証拠金取引業務に携わった後、金融情報サービス会社にて個人投資家向けの為替情報配信業務を担当。市況サービスのほか、テクニカル分析を軸にした情報を配信する。 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

岩間 大祐の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております