今回解説していく通貨はユーロドルです。ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は注目されていた米ジャクソンホール会議での講演で、「インフレ率を目標値へ引き下げるため必要に応じて金利を高水準に設定し、必要な限りその水準に維持する」との見解を示しましたが、これは従来通りの見解で新たな政策ヒントは得られませんでした。
欧州経済の減速が目立ち始め、リセッション(景気後退)懸念も高まる中でECBは今後も難しいかじ取りを迫られることになりそうです。ではチャート上でもユーロドルの状況を確認していきましょう。
ユーロドルの週足分析
下図のチャートはユーロドルの週足チャートになります。前回の解説(6月28日)時に指摘したレンジ相場入りは、その後に4月26日高値の1.1095ドルを上抜けたことで回避されました。前回高値の上抜けによって上昇トレンドが維持されていることは確認できましたが、その一方で昨年9月安値を始点とする上昇トレンド(黄色実線)は今月に入って下抜けています。上昇の勢いが減速していることを示しており、今後も注意が必要な状況には変わりありません。
ユーロドルの日足分析
今度は日足でも見ていきます(下図のチャート)。直近の動きに伴って新たに引いた上昇トレンドライン(黄色実線)ですが、執筆時点(8月28日)でぎりぎりの状態にあります。同線を下抜けたからといって上昇トレンドが終了するわけではありませんが、上昇の勢いが一段と衰えることになりますので注目しておきたいところです。
また、チャート下部に追加した「DMI」では-DI>+DI(下降トレンド)、ADX(トレンドの強さ)の水準上昇傾向が見られ、日足ベースでは直近の動きが下降トレンドにあることを示唆。週足分析から見てきた上昇トレンド転換の可能性は意識せざるを得ない局面です。
上昇トレンドの終了を示唆するポイントとしてやはり直近安値の下抜けでしょう。チャート上の丸で囲った部分(5月31日安値1.0635ドル、3月15日安値1.0516ドル、1月6日安値1.0484ドル)などが重要なサポート水準となります。
一方で上値は7月18日高値を始点とした下降トレンドライン(青色実線)が現在は機能。下降トレンドラインは現時点で1.0880ドル付近、1カ月後には1.0600ドル付近まで低下する見込みとなっています。
今後のイベントは
最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は欧米の金融政策ということになるでしょう。両中銀とも結果公表後に中銀総裁の記者会見が予定されているほか、今回のFOMCでは金利見通し(ドットチャート)も公表されるため、FOMCメンバーによる先行きの金利見通しも注目されます。その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
8月31日 ユーロ圏 8月消費者物価指数(HICP、速報値)
9月1日 米国 8月米雇用統計
9月13日 米国 8月消費者物価指数(CPI)
9月14日 ユーロ圏 欧州中央銀行(ECB)理事会
9月19-20日 米国 米連邦公開市場委員会(FOMC)
9月29日 ユーロ圏 9月HICP速報値