前回紹介したMACDは短期・長期の移動平均かい離を表したものでしたが、今回お話する「エンベロープ」と「ボリンジャーバンド」も移動平均とのかい離を利用したテクニカル指標となります。
移動平均線に沿った一定幅のかい離を付加
まずは「エンベロープ」です。エンベロープは移動平均線と一定のかい離を持つようにバンド幅を付加したものです。バンド幅は移動平均線を基本に±n%で設定されます。なお、「n」は任意のパラメーターで自由に設定が可能です。
上図はドル円の日足チャート。5日移動平均線と5日移動平均線の±1%に設定したバンドが加えてあります。
エンベロープは基本的に順張り・逆張りトレードのどちらでも利用が可能です。逆張りトレードが有効となるのが「横ばいトレンド」となった場合です。今年3月までのドル円は明確な方向感を欠いた動きとなっていましたが、そのような「横ばいトレンド」ではバンドの上限で売り、バンドの下限で買い、のような逆張り投資が有効に機能していることが分かると思います。
一方、トレンドの傾向がはっきりしてきた際には順張りトレードが有効です。ドル円は今年の3月以降に明確な上昇トレンドに転換していますが、このような状況ではエンベロープを利用した逆張り投資は通用しなくなります。
ボリンジャーバンドとエンベロープの違い
これに対して「ボリンジャーバンド」は移動平均線と標準偏差を加えた指標になります。標準偏差とは統計学で使用される「平均からのばらつき」。標準偏差はσで表記され、移動平均線から±1σ、±2σ、±3σなどの各線が付加されます。
なお、価格は上下のボリンジャーバンド内で推移することが多くなり、
バンドの±1σの範囲内に収まる確率が約68.3%
バンドの±2σの範囲内に収まる確率が約95.4%
バンドの±3σの範囲内に収まる確率が約99.7%
とされています。
上図はドル円の日足チャート。20日移動平均線とボリンジャーバンドの±1σ、±2σのラインを付加しています。エンベロープとの最大の違いはバンド幅が一定ではないこと。ただ、基本的な利用方法は同様で「横ばいトレンド」ではバンドの上限で売り、バンドの下限で買い、のような逆張り投資が向いています。
一方、明確なトレンドの傾向が表れている際は順張りトレードが有効となります。そのほかでは継続してきたトレンドが反対方向に転換した場合、収束していたバンドが発散し始めた場合(上図チャートの丸で囲った部分)などでも順張り投資が有効になるでしょう。