今回解説していく通貨はユーロ円です。欧州中央銀行(ECB)は昨年9月の利上げを最後に4.50%での金利据え置きを続けてきましたが、利下げ転換が近づいてきました。市場では6月理事会での利下げはほぼ織り込み済み。注目は今後の追加利下げスケジュールで、緩和的な金融政策を維持する日銀との金利差縮小の行方に移っていきそうです。では、チャート上でもユーロ円の状況を確認していきましょう。
ユーロ円の月足分析
下図のチャートはユーロ円の月足チャートになります。前回の分析(11月1日)からの推移を見ていくと、昨年末にかけて一時的な下押しがあったものの、総じて堅調な地合いを維持。前回指摘したターゲットである2008年7月高値の169.96円(チャート上の赤丸部分)を上抜けて、先月ついにユーロ導入来の最高値を更新しました。
2022年3月安値を始点とする上昇トレンド(チャート上の黄色実線)も継続中で、明確な上昇トレンドが維持されているほか、チャート下部に追加した「DMI」でも+DI>-DI(上昇トレンド)の構図がはっきりとしており、トレンドの強さを示すADXも一段と上昇。月足視点では不安な材料は見当たりません。
ユーロ円の週足分析
今度は週足でも見ていきます(下図のチャート)。2022年3月安値を始点とする上昇トレンド(チャート上の黄色実線)は月足分析で紹介したものと同じものです。さらに前述の上昇トレンドを利用して「チャネルライン(チャート上の黄色点線)」も引いてみました。
170円台に乗せた後はチャネルライン付近でいったん上値を抑えられた格好となりましたが、その後は再び下値を切り上げており、地合いの強さは継続中。チャート下部に追加した「DMI」も+DI>-DI(上昇トレンド)、トレンドの強さを示すADXも上昇しており、週足ベースでもしっかりとした上昇トレンドとなっているようです。
今後についてですが、2022年3月安値を始点とする上昇トレンドラインは現時点で遠く離れており、サポートラインとしては利用しづらい状態です。
そこで今回は①2023年3月安値を起点とした上昇トレンドライン(チャート上の青色実線)、②2023年12月安値を起点とした上昇トレンドライン(チャート上の青色点線)も追加しました。①のトレンドラインは本日時点で162.50円台、1カ月後は164.10円台、②のトレンドラインは本日時点で164.20円台、1カ月後は166.10円台に位置しています。今後に押し目買いを入れる際のサポートとして利用してみてください。
一方で上値ですが、こちらはユーロ導入来の高値をすでに更新しているため、今後は未知の領域。目先は4月29日につけた高値171.56円が目処ということになりますが、まずは170円の大台で値固めできるかがポイントになるでしょう。ただ、前述したチャネルラインが今後も利食い水準として機能する仮定に立つと、短期的にはここからの上値余地も限られてくるかもしれません。そこだけは注意が必要となります。
今後のイベントは
最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は日・欧の金融政策。ECBの6月利下げは前述したようにほぼ既成事実となっており、ポイントはその後の利下げスケジュールとなるでしょう。「今後についてはデータ次第」となる可能性も高いですが、何らかのヒントを探りたいところです。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
5月24日 日本 4月全国消費者物価指数(CPI)
5月31日 ユーロ圏 5月消費者物価指数(HICP、速報値)
6月6日 ユーロ圏 欧州中央銀行(ECB)定例理事会
6月13-14日 日本 日銀金融政策決定会合
6月21日 日本 5月全国CPI