昨年12月に日銀は長期金利の許容変動幅を従来の±0.25%から±0.50%へ拡大することを決定。市場ではサプライズとして受け止められ、ドル円が急落する場面がありました。こうした急変動の後、相場には調整の動きが入ることが多いですが、実際に相場はどこまで戻るのでしょうか。相場の戻りを予測するツールとなる、「リトレースメント」を今回は紹介します。
フィボナッチ・リトレースメント
「リトレースメント」とは相場の戻りを予測するために使用するテクニカル手法です。フィボナッチ・リトレースメントなどがよく知られています。リトレーメントを利用する際にまず行うことは、それまでの上昇・下落局面における値幅を調べること。この値幅が基準値となって、その後の相場の戻りが計算されます。
フィボナッチ・リトレースメントの場合、主要なフィボナッチ比率(0%、23.6%、38.2%、61.8%、76.4%、100%)のほかに、補助的な数値として50%も利用されます。
下値の図は日足のドル円チャート。昨年12月20日のドル円は安値が130.59円、高値が137.48円でしたので、値幅は6.89円となります。この場合は急落後の戻りを探るものなので、それぞれのフィボナッチ・リトレースメントは以下の通りとなります。
23.6%戻し = 20日安値(130.59円) + 値幅(6.89円) × 0.236 = 132.216円
38.2%戻し = 20日安値(130.59円) + 値幅(6.89円) × 0.382 = 133.222円
50.0%戻し = 20日安値(130.59円) + 値幅(6.89円) × 0.500 = 134.035円
61.8%戻し = 20日安値(130.59円) + 値幅(6.89円) × 0.618 = 134.848円
76.4%戻し = 20日安値(130.59円) + 値幅(6.89円) × 0.764 = 135.853円
なお、リトレースメントの考え方としてフィボナッチのほかにもいくつかの手法があります。代表的なところですと、ダウ・リトレースメントでは33.3%、50%、66.7%などの数値が採用されます。日本でも3分の1戻し、半値戻しなどといった言い方で使用されていますね。
また、ギャン理論に基づいたリトレースメントでは12.5%、25.0%、33.3%、37.5%、50.0%、62.5%、66.7%、75.0%、87.5%などが注目されます。
詳細は省きますが、いずれも一定の値幅を基に%で算出するもので、総称してパーセンテージ・リトレースメントと呼ばれます。
長期視点でのリトレースメント利用法
また、リトレースメントの考え方は1日の値幅だけを対象にするだけではなく、●日から●日までの上昇幅(下落幅)を基準とすることもあります。どちらかと言えばこちらの使い方が一般的です。下値の図は日足のドル円チャート。さきほどよりもより長期的な視点を基に、昨年10月21日高値から1月3日安値を基準としたフィボナッチ・リトレースメントを引いています。
相場の戻りの目処は主に過去につけた主要な高値・安値などが意識されることが多いですが、こうしたリトレースメントの数値も参考になります。特にリトレースメント上のポイントと主要な高値・安値の水準が重なった時などは重要なレジスタンス(サポート)として意識される傾向にありますので、気になった場合はその都度リトレースメントを確認してみるとよいでしょう。