今回解説していく通貨は南アフリカ・ランド円です。日本の政局が近頃騒がしくなっていますが、南アフリカでは今月29日に総選挙が実施されます。民主的な全人種参加選挙が実施された1994年以来、議会の過半数を握ってきた与党アフリカ民族会議(ANC)が今回過半数を失うとの予想が広がっており、政権を失うまでには至らずとも大きな政局の変化が生じる可能性が高そうです。ランド相場への影響も気懸かりですが、チャート上でもランド円の状況を確認していきましょう。
ランド円の週足分析
下図のチャートはランド円の週足チャートになります。前回の分析(2月21日)からどのように推移したかを見ていきますと、下値を切り上げる動きが続き、昨年半ばから続いていた8.00円を挟んだレンジ相場(チャート上の四角で囲った部分)を上方向にブレイク。2022年6月以来の水準まで上値を伸ばしています。
チャート下部に追加した「DMI」でも+DI>-DIとなっており、現在が上昇トレンドであることを示唆。トレンドの強さを示すADXもようやく上昇し始め、はっきりとした上昇トレンドを描き始めているようです。
ここからの上値目処は2022年6月高値の8.81円付近(チャート上の丸で囲った部分)。下値は昨年5月安値を始点とする上昇トレンドライン(チャート上の黄色実線)が本日時点で8.00円付近、1カ月後は8.10円付近に位置しており、同線がサポートとして意識されるでしょう。
ランド円の月足分析
また、より長期の視点でもランド円の動向を確認していきましょう。下図のチャートはランド円の月足チャートになります。長期の視点で見ると20円手前から一貫して上値を切り下げる展開となっており、2020年以降の買い戻しも長期下落トレンド内の調整局面に過ぎないと捉えることもできます。
本格的な反転に至るにはやはり直近の戻り高値を超えることが肝要です。週足分析で指摘した2022年6月高値の8.81円付近も重要ですが、ここでのポイントは2018年2月高値の9.29円(チャート上の丸で囲った部分)ということになるでしょう。現在の水準が8円台半ばですからやや遠く感じるかもしれませんが、ただ長期視点でも現在のランド円は相場の大きな曲がり角にあるかもしれません。
今回は「一目均衡表」も追加しましたが、遅行スパンは価格線を上回っており、転換線は基準線を上回って推移。価格線も雲を上抜けて、いわゆる「三役好転」の強い買いシグナルが点灯しています。
月足のランド円で「三役好転」が点灯すること自体も珍しいことですが、それに加えて今回は相場の流れが変わる「変化日」になりやすいと言われる「雲のねじれ」も発生。少なくとも2011年以来で初となる「雲のねじれ」はランド円が大きな転換を迎えた証なのかもしれません。今後も注目しておきたいところです。
今後のイベントは
最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は日本・南アフリカ両国の金融政策。特に南アフリカ準備銀行(SARB)金融政策決定会合の前日には同国で総選挙も控えており、今月末のランド相場は大きく動意づく可能性もありそうです。その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
5月22日 南ア 4月消費者物価指数(CPI)
5月24日 日本 4月全国CPI
5月29日 南ア 総選挙
5月30日 南ア 南アフリカ準備銀行(SARB)、金融政策決定会合
6月13-14日 日本 日銀金融政策決定会合