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第112回 メキシコペソ円、一段の下値余地拡大に注意

今回解説していく通貨はメキシコペソ円です。メキシコ銀行(中央銀行)は8月の前回会合で追加利下げを決定。メキシコの金利先安観が高まっているほか、政府が提出した憲法改正案(司法制度改革や独立自治規制機関の廃止など)が国内外から批判を浴びながらも下院で可決され、市場ではメキシコへの投資について懸念が広がっています。

こうした要因が嫌気されて足もとではペソ売りが進んでおり、ここ数年続いていたペソ円のロング戦略も大きな方針転換が迫られている状況にありますが、チャート上でもメキシコペソ円の状況を確認していきましょう。


メキシコペソ円の週足分析

下図のチャートはメキシコペソ円の週足チャートになります。前回の分析(7月3日)からどのように推移したかを見ていきますと、6月のメキシコ総選挙後に強まった売りが一巡した矢先の7月、今度は政府・日銀による円買い介入や日銀の追加利上げなどを手掛かりとした円全面高の展開となり、一時7.09円まで下押し。その後はいったん買い戻しが入る場面もありましたが戻りは鈍く、前週には7.06円まで下げ幅を拡大しました。



前回の解説時には「ダマシ」の可能性もあるとしましたが、再び2022年3月安値を起点とした上昇トレンドライン(黄色実線)を明確にブレイクしたことで、2022年からの上昇トレンドは完全に終了した格好となりました。

また、チャート下部に追加した「DMI」でも-DI>+DI(下落トレンド)を示唆。トレンドの強さを示すADXも上昇傾向となっており、現在がはっきりとした下降トレンドであることを示しています。


ここからの下値目処についてですが、すでに7月につけた直近安値(7.09円)を下抜けていることから、現在は2023年3月安値の6.79円や2022年12月安値の6.59円(いずれもチャート上の丸で囲った部分)まで下値余地が拡大しています。今後さらに売りの勢いが増すことになれば、2022年8月安値の6.37円、最終的には2022年からの上昇トレンドの起点となった同年3月安値の5.38円を順次視野に入れていくことになるでしょう。


メキシコペソ円の日足分析

ここまでは下方向の可能性について探っていきましたが、今後は反発の余地についても見ていきましょう。下図は日足のチャート(9日執筆時点)になります。



今回は8月15・16日を起点とする短期の下降トレンドライン(黄色実線)を引いてみました。まずは同線の上抜けが必要となりますが、このトレンドラインのブレイクはあくまで「前提条件」。6月から始まった下落トレンドが転換したと判断するには8月15・16日につけた直近高値の8.01円(チャート上の丸で囲った部分)の上抜けが重要となります。

その際に「DMI」でも+DI>-DI(上昇トレンドを示唆)となっていれば「なお良し」ですが、7月上旬のような一時的な+DI>-DI(※トレンドの強さを示すADXが低下しており、実際は「下落トレンド内の調整局面」)に騙されることがないよう、ADXの上昇を伴った+DI>-DIとなっているかについても確認しておきましょう。


今後のイベントは

最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は両国の金融政策公表。日銀は追加利上げ、メキシコ中銀は追加利下げ方針を示しており、今会合で利上げ・利下げが実施されるかはともかくとして、基本的には日・メキシコ間の金利差は縮小していく方向にあります。

また、両国の政治イベントにも注意が必要となります。日本では9月27日に自民党総裁選が実施され、新総裁のもとで近く衆院の解散・総選挙が行われる見込み。メキシコでは憲法改正案(司法制度改革や独立自治規制機関の廃止など)が上院で審議されており、与党連合は上院で憲法改正に必要な3分の2の議席にわずかに届いていないものの、憲法改正案は上院でも可決される可能性が高いとされています。これまで司法制度改革を嫌気してペソ売りを進めてきた市場の反応に注意しておきたいところです。その他のイベントは以下の通りとなります。


今後1カ月の重要イベント

9月19-20日 日本 日銀金融政策決定会合

9月20日 日本 8月全国消費者物価指数(CPI)

9月26日 メキシコ メキシコ中銀、金融政策決定会合

9月27日 日本 自民党総裁選

10月9日 メキシコ 9月CPI

この連載の一覧
第113回ポンドドル、10年来の下げ相場転換に向けて
第112回 メキシコペソ円、一段の下値余地拡大に注意
第111回 豪ドル円、4年続いたトレンドが終了
第110回 トルコリラ円、売り材料豊富で買い向かうには・・
第109回 NZドル円、相対的な上値の重さが目立つ
第108回 ユーロ円、はたして「ダマシ」だったのか
第107回 ランド円、週足は上昇トレンド崩れたが月足は?
第106回 豪ドル米ドル、保ち合いか下落トレンドか
第105回 NZドル米ドル、「三角保ち合い」のブレイクを見極めたい
第104回 ドル円、上昇トレンドは崩れていない
第103回 ポンド円、順調に上値試しを継続
第102回 メキシコペソ円、2022年からの上昇トレンドは終了?
第101回 ユーロドル、現在の下落基調でレンジブレイクなるか
第100回 トルコリラ円、週足ベースでも変化の兆し
第99回 豪ドル円、10数年ぶりの高値の視野に
第98回 NZドル円、ますます上昇トレンドが明瞭に
第97回 ポンドドル、短期的には上方向へ
第96回 ユーロ円、ユーロ導入来高値更新で未知の領域へ
第95回 ランド円、10数年来の相場転換となる可能性も
第94回 ドル円、急落後も上昇トレンドを維持
第93回 メキシコペソ円、上昇トレンドは健在だが・・
第92回 トルコリラ円、大きなチャンス到来か
第91回 豪ドル米ドル、上方向は攻めづらい
第90回 NZドル米ドル、トレンド転換につながる注目ポイントに接近
第89回 ユーロドル、ヘッド・アンド・ショルダーズの完成なるか
第88回 ドル円、5月中にも上方向へブレイクか
第87回 豪ドル円、上昇トレンド継続に黄色信号
第86回 NZドル円、上昇トレンド継続も目先は調整リスク
第85回 ポンドドル、長期下降トレンドの転換は間近?
第84回 ランド円、上昇トレンドは本物か
第83回 メキシコペソ円、レンジブレイクのチャンス到来
第82回 ユーロドル、レンジ相場脱却の手掛かりは乏しい
第81回 トルコリラ円、昨年8月以来のチャンスをものにできるか
第80回 ドル円、上昇トレンドを維持も上値追いは慎重に
第79回 NZドル米ドル、長期下落トレンドのブレイクは失敗か
第78回 豪ドル米ドル、依然として下落トレンド
第77回 ポンド円、来年以降の下値リスクに警戒
第76回 ランド円、ヘッドアンドショルダーズの可能性高まる
第75回 メキシコペソ円、レンジ相場がしばらく継続か
第74回 ユーロドル、メインシナリオはレンジ相場
第73回 ドル円、ポイントは一目均衡表雲の維持
第72回 低迷ぶりが際立つトルコリラ円、反発の可能性は?
第71回 豪ドル円、上値トライのチャンスだが力強さを欠く
第70回 NZドル円、いよいよ過去最高値も視野入りか
第69回 ユーロ円、月足チャートでは不安なし 週足では?
第68回 ポンドドル、一目雲に接近で正念場に
第67回 ランド円、ヘッドアンドショルダーズの懸念消えず
第66回 NZドル米ドルに反発のチャンス到来?
第65回 好調なメキシコペソ円に失速の気配
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第62回 リラ円、一目雲を数年来上抜けできず
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第39回 ダウ理論とエリオット波動(3)
第38回 ダウ理論とエリオット波動(2)
第37回 ダウ理論とエリオット波動(1)
第36回 ローソク足(3)
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第1回「誰にでもわかるチャート教室」 相場が不安定だからこそ、チャート分析に頼りたい

為替情報部 アナリスト

岩間 大祐

大学卒業後の2004年に国内証券会社に入社。 外国為替証拠金取引業務に携わった後、金融情報サービス会社にて個人投資家向けの為替情報配信業務を担当。市況サービスのほか、テクニカル分析を軸にした情報を配信する。 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

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