今回解説していく通貨はメキシコペソ円です。ここ最近は世界で最も堅調に推移する通貨となり、「スーパーペソ」とも呼ばれていたメキシコペソですが、6月3日に突如異変が起きました。
前日に実施されたメキシコ総選挙で与党が予想以上の「勝ち過ぎ」状態となり、憲法改正や財政悪化、国営企業の保護策強化などへの懸念が浮上すると、これまで買い一辺倒だったメキシコペソが大幅な調整に見舞われる事態に。現在も落ち着きを取り戻したとは言い難く、しばらくは神経質な動きを強いられる可能性が高いでしょう。では、チャート上でもメキシコペソ円の状況を確認していきましょう。
メキシコペソ円の週足分析
下図のチャートはメキシコペソ円の週足チャートになります。前回の分析(4月24日)からどのように推移したかを見ていきますと、6月に入ってから急速に下げ足を速め、2022年3月安値を起点とした上昇トレンドライン(黄色実線)をブレイク。一時8.21円まで下落する場面も見られました。
もっとも、その週の引けにかけては買い戻しが入り、終値では上昇トレンドラインを回復。その後は下げ渋っていることを考慮すると、6月の下げはいわゆる「ダマシ」だったと捉えられるかもしれません。
その一方で気になるのが、チャート下部に追加した「DMI」の動向。現在は-DI>+DIとなっており、はっきりとした下降トレンドであることを示唆しています。
ペソ円の明確な上昇トレンドがスタートした2022年以降、これまでも何度か-DI>+DIとなったことはありましたが、その際はいずれもトレンドの強さを示すADXが低下しており、言わば「上昇トレンド内の調整」と見るべき局面でした。ところが今回の-DI>+DIはADXの上昇も伴っており、2022年以来の上昇トレンドも大きく変化しつつあると認識しておく必要がありそうです。
メキシコペソ円の日足分析
今度は日足でも見ていきます(下図のチャート)。チャート上の上昇トレンドライン(黄色実線)は週足で紹介したものと同じものです。
今回のチャートに追加した「一目均衡表」によると、転換線<基準線、現在の価格線<抵抗帯(雲)、遅行スパン<26日前の価格線が成立しており、強い売りシグナルとされる「三役逆転」が点灯しています。
また、6月12日以降の買い戻し局面において、6月6日につけた戻り高値8.96円(チャート上の丸で囲った部分)の回復に失敗したように見えることも気懸かりです。まだ買い戻し局面が終了したと判断するのは早いですが、このまま買い戻しの勢いが弱まり、上昇トレンドライン(黄色実線)を割り込むような事態になれば、再び6月12日安値の8.21円を目指す可能性があり、注意が必要となりそうです。
今後のイベントは
最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は日銀の金融政策。足もとでは全般に円売りの流れが目立っていますが、日銀による国債買い入れ額の縮小や追加利上げなどの思惑も高まっており、改めてペソ円を含めたクロス円への影響を確認しておきたいところ。
また、メキシコ中銀は直近の会合(6月27日)で金利据え置きを決めましたが、将来的な追加利下げの可能性にも言及しており、8月8日の次回会合に向けてCPIなどでインフレ動向をチェックしておきましょう。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
7月8日 メキシコ 6月消費者物価指数(CPI)
7月19日 日本 6月全国CPI
7月30-31日 日本 日銀金融政策決定会合