今回からは相場のトレンドを見極めるための指標について紹介していきます。過去に解説した移動平均線などもトレンド分析系の指標に当たりますが、今回はROCについてです。
ROCは相場の勢いを表す
ROCとは「Rate of Change」の頭文字を取ったもので、日本語ですと「期間騰落率」になります。相場のモメンタム=勢いを比率で表した指標であり、計算式は以下の通りです。
ROC = ( 直近の値 ‐ n日前の値 ) ÷ n日前の値 × 100
上記の計算式で使用している「n」は任意のパラメーターであり、自由に設定が可能です。一般的には12、25などが使用されます。
単純な計算式からも分かる通り、直近の値がn日前の値を上回っていればROCは正の値、直近の値がn日前の値を下回っていればROCは負の値を示します。トレンドが上昇傾向であれば、直近の値が過去の値より価格が高い可能性も当然高まるわけですから、ROCが正の値=上昇トレンド、というシンプルな図式が成り立ちますね。
売買シグナルとしてはROCが負の値から正の値に転換した時、つまりゼロ水準を上抜けた時が「トレンドが下降から上昇へと転換したポイント」と判断できるため、ここが買いとなります。逆にゼロ水準を下抜けると「トレンドが上昇から下降へと転換したポイント」になりますので、その場合は売りシグナルです。
相場判断には臨機応変な対応も必要に
では実際にROCについてチャートと比較しながら見ていきましょう。
下図はドル円の日足チャート。下部に「n=25日」としたROCが加えてあります。
ゼロ水準をまたいで買い・売りのシグナルが発生した主要なポイントに丸印をつけてみました。
トレンドの転換を概ね捉えていると言っても良さそうですが、シグナルが点灯するタイミングが遅れるケースも見られるようです。任意のパラメーター「n」の値をより小さなものにすれば、タイミングの遅れは解消されますが、その一方で「ダマシ」となるシグナルの発生も増えることになります。一長一短なので臨機応変に対応したいところです。
判断に有効な「ダイバージェンス」
もう一つの判断シグナルとなるのが、これまで別のテクニカル指標を解説した際にも何度か登場していた「ダイバージェンス」という考え方です。
下図は先ほどと同じドル円の日足チャート。4月下旬から5月上旬にかけてドル円相場は下値を切り上げる展開となっていますが、その時期に対応したROCを確認すると逆に上値を切り下げていることが分かります。このような状態を「弱気のダイバージェンス」と呼び、売りのシグナルとされています。
反対にドル円相場が上値を切り下げるような局面で、ROCが下値を切り上げていく状態が「強気のダイバージェンス」です。こちらは買いのシグナルとなります。
ROCを利用したトレンド判断にはこうした「ダイバージェンス」も利用してみましょう。