FX 誰にでもわかるチャート教室

第83回 メキシコペソ円、レンジブレイクのチャンス到来

今回解説していく通貨はメキシコペソ円です。メキシコ銀行(中央銀行)は前週に金融政策決定会合を開催し、政策金利を11.25%で据え置くことを決定。ただ、声明文では前回までの「しばらくの間現在の政策金利を維持する」との文言が削除され、「次回以降の会合では入手可能な情報次第で金利調整の可能性を検討する」との文言が追加されました。

いよいよ次回(3月21日)以降の政策転換が視野に入ってきており、日・メキシコ間の金融政策の方向性も今後は変化していくことになりそうです。では、チャート上でもメキシコペソ円の状況を確認していきましょう。


メキシコペソ円の週足分析

下図のチャートはメキシコペソ円の週足チャートになります。前回の分析(12月13日)からどのように推移したかを見ていきますと、12月7日につけた8.12円を安値として12月中旬以降は下値を切り上げる展開に。足もとでも底堅い動きが続いており、前週には8.75円まで上値を伸ばす場面も見られました。



もっとも、現時点(2月12日執筆)では昨年高値の8.78円を上抜けるには至っておらず、過去の重要なレジスタンスポイントである2008年3月安値8.89円(チャート上の青色実線)も健在。2022年3月安値を起点とした上昇トレンドライン(黄色実線)は機能しているものの、前回の分析でも指摘したレンジ相場(チャート上の四角で囲った部分)が続いていると見るべきかもしれません。


その一方で、現在はレンジ相場の上限付近にあることから、今後レンジブレイクを狙っていくのかも気になるところです。その辺りの可能性について日足分析で改めて探っていきましょう。


メキシコペソ円の日足分析

今度は日足でも見ていきます(下図のチャート)。チャート上の上昇トレンドラインと平行に引いたチャネルライン(いずれも黄色実線)および青色実線は週足で紹介したものと同じものです。



まずはレンジ相場のブレイクポイントである上限・下限について再確認しておきましょう。チャート上の丸で囲った部分がそれにあたり、レンジ上限は8.78円、下限は8.08円です。

週足分析でも指摘したように現在は長期の上昇トレンドにあることからレンジ上限の上抜けチャンスは見た目にも十分ありそうですね。また、今回はチャート下部に「ROC」も加えてみましたが、ROCは今月に入ってゼロラインを上抜けており、短期的にも「トレンドが下降から上昇へと転換した」ことを示唆しています。


もちろんレンジブレイクは実際に確定するまで分かりませんので、積極的な上値追いを現時点で自重するのもあり。その際にはレンジ相場の下限や上昇トレンドラインなどをサポートとして、レンジブレイクを確認するまで押し目買い戦略に徹する方が無難でしょう。なお、上昇トレンドラインですが本日時点で8.01円台に位置しており、1カ月後には8.12円付近まで切り上がる見込みとなっています。


今後のイベントは

最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。期間内には日・メキシコともに金融政策の発表は予定されていませんが、メキシコ中銀による政策転換のタイミングを探る上でも今後はCPIなどの物価動向が一層注目されるでしょう。また、日銀が政策正常化の判断材料としている2024年の春闘については、主要企業の春季労使交渉の回答が出そろう集中回答日が例年3月中旬に予定されているため、こちらにも注目です。

その他のイベントは以下の通りとなります。


今後1カ月の重要イベント

2月27日 日本 1月全国消費者物価指数(CPI)

3月7日 メキシコ 2月消費者物価指数(CPI)

3月中旬 日本 春闘の集中回答日

この連載の一覧
第93回 メキシコペソ円、上昇トレンドは健在だが・・
第92回 トルコリラ円、大きなチャンス到来か
第91回 豪ドル米ドル、上方向は攻めづらい
第90回 NZドル米ドル、トレンド転換につながる注目ポイントに接近
第89回 ユーロドル、ヘッド・アンド・ショルダーズの完成なるか
第88回 ドル円、5月中にも上方向へブレイクか
第87回 豪ドル円、上昇トレンド継続に黄色信号
第86回 NZドル円、上昇トレンド継続も目先は調整リスク
第85回 ポンドドル、長期下降トレンドの転換は間近?
第84回 ランド円、上昇トレンドは本物か
第83回 メキシコペソ円、レンジブレイクのチャンス到来
第82回 ユーロドル、レンジ相場脱却の手掛かりは乏しい
第81回 トルコリラ円、昨年8月以来のチャンスをものにできるか
第80回 ドル円、上昇トレンドを維持も上値追いは慎重に
第79回 NZドル米ドル、長期下落トレンドのブレイクは失敗か
第78回 豪ドル米ドル、依然として下落トレンド
第77回 ポンド円、来年以降の下値リスクに警戒
第76回 ランド円、ヘッドアンドショルダーズの可能性高まる
第75回 メキシコペソ円、レンジ相場がしばらく継続か
第74回 ユーロドル、メインシナリオはレンジ相場
第73回 ドル円、ポイントは一目均衡表雲の維持
第72回 低迷ぶりが際立つトルコリラ円、反発の可能性は?
第71回 豪ドル円、上値トライのチャンスだが力強さを欠く
第70回 NZドル円、いよいよ過去最高値も視野入りか
第69回 ユーロ円、月足チャートでは不安なし 週足では?
第68回 ポンドドル、一目雲に接近で正念場に
第67回 ランド円、ヘッドアンドショルダーズの懸念消えず
第66回 NZドル米ドルに反発のチャンス到来?
第65回 好調なメキシコペソ円に失速の気配
第64回 ドル円、150円台までは介入の可能性低い
第63回 カナダドル円、110円台への再挑戦が迫る
第62回 リラ円、一目雲を数年来上抜けできず
第61回 今後の豪ドル米ドル相場
第60回 今後のユーロドル相場
第59回 今後のポンドドル相場
第58回 今後のランド円相場
第57回 今後のNZドル円相場
第56回 今後のドル円相場
第55回 今後のメキシコペソ円相場
第54回 今後のトルコリラ円相場
第53回 今後の豪ドル円相場
第52回 今後のNZドル米ドル相場
第51回 今後のユーロドル相場
第50回 今後のユーロ円相場
第49回 今後の豪ドル米ドル相場
第48回 今後のポンド円相場
第47回 今後のドル円相場
第46回 今後のランド円相場
第45回 今後のトルコリラ円相場
第44回 今後のNZドル円相場
第43回 今後のメキシコペソ円相場
第42回 今後のユーロドル相場
第41回 今後の豪ドル円相場
第40回 今後のドル円相場
第39回 ダウ理論とエリオット波動(3)
第38回 ダウ理論とエリオット波動(2)
第37回 ダウ理論とエリオット波動(1)
第36回 ローソク足(3)
第35回 ローソク足(2)
第34回 ローソク足(1)
第33回 一目均衡表(4)
第32回 一目均衡表(3)
第31回 一目均衡表(2)
第30回 一目均衡表(1)
第29回 リトレースメント
第28回 避けられるリスク(その他の国編)
第27回 避けられるリスク(英国・オセアニア編)
第26回 避けられるリスク(日本・欧州編)
第25回「誰にでもわかるチャート教室」 避けられるリスク(米国編)
第24回「誰にでもわかるチャート教室」 ポイント&フィギュア
第23回「誰にでもわかるチャート教室」 練行足とカギ足
第22回「誰にでもわかるチャート教室」 新値足
第21回「誰にでもわかるチャート教室」 パラボリック
第20回「誰にでもわかるチャート教室」 エンベロープとボリンジャーバンド
第19回「誰にでもわかるチャート教室」 MACD
第18回「誰にでもわかるチャート教室」 ROC
第17回「誰にでもわかるチャート教室」 突発的な急変動に対処する
第16回「誰にでもわかるチャート教室」 DMI
第15回「誰にでもわかるチャート教室」 サイコロジカル・ライン
第14回「誰にでもわかるチャート教室」 RCI
第13回「誰にでもわかるチャート教室」 ストキャスティクス
第12回「誰にでもわかるチャート教室」 RSI
第11回「誰にでもわかるチャート教室」 時間軸の考え方
第10回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その4
第9回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その3
第8回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その2
第7回「誰にでもわかるチャート教室」 フォーメーションあれこれ~その1
第6回「誰にでもわかるチャート教室」 移動平均線~その2
第5回「誰にでもわかるチャート教室」 移動平均線~その1
第4回「誰にでもわかるチャート教室」チャネルラインと外国為替市場の独自性
第3回「誰にでもわかるチャート教室」相場の方向性が一目瞭然、トレンドライン
第2回「誰にでもわかるチャート教室」相場のトレンドを探る
第1回「誰にでもわかるチャート教室」 相場が不安定だからこそ、チャート分析に頼りたい

為替情報部 アナリスト

岩間 大祐

大学卒業後の2004年に国内証券会社に入社。 外国為替証拠金取引業務に携わった後、金融情報サービス会社にて個人投資家向けの為替情報配信業務を担当。市況サービスのほか、テクニカル分析を軸にした情報を配信する。 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

岩間 大祐の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております