今回解説していく通貨はユーロドル相場です。依然として米国の関税政策がfx市場全般の動向を左右する状況が続いています。現在は米国と中国の間の貿易摩擦が中心となっていますが、欧州連合(EU)も関税を巡って米国との交渉を続けており、今後ユーロドルを取引する際には欧米間の貿易交渉の行方にも注目しておきたいところです。では、チャート上でユーロドルの現在の状況を確認していきましょう。
ユーロドルの月足分析 下降トレンドラインはブレイクも反転の判断は早いか
下図のチャートはユーロドルの月足チャートになります。前回の解説(2月12日)からの経過をみていくと、2023年来のレンジ相場を下方向にブレイクした後、2025年2月に1.0141ドルまで売りに押される場面も見られましたが、節目の1.0000ドル割れを回避すると一転して買い戻しが優勢に。足もとでは一時1.1547ドルまで急ピッチで切り返してきました。
今度は2008年からの長期下降トレンドライン(チャート上の青色実線)を上方向にブレイク。今回のチャートに追加した「一目均衡表」で見ても、現状は転換線>基準線、価格線>抵抗帯(雲)、遅行スパン>価格線が成立しており、強い買いシグナルとされる「三役好転」が点灯しています。
昨年末の下攻めから一転反発するなどユーロドル相場は予想の難しい状態となっていますが、現時点で2008年からの下落トレンドが終了したと判断するのは時期尚早でしょう。2008年来の下降トレンドラインをブレイクしたといっても、4月の高値を目処にした新たな下降トレンドライン(チャート上の青色点線)を引き直すことはできますし、今後それが機能する可能性も否定はできません。
さらに言えば今月の足型がやや上ヒゲを残して終わりそうな点も気になるところです。今月の高値が今後のレジスタンスとして機能するかどうかをまずは確認した上で、重要なポイントは2021年1月高値の1.2349ドル(チャート上の丸で囲った部分)です。直近の高値である同水準を上抜けることができれば2008年から17年近く続いた長期の下落トレンドも終了、本格反転へと向かうことになります。
ユーロドルの週足分析 下値の堅さを再確認したい場面
ではもう少し短期的な視点で今後のユーロドルの見通しを確認していきます。下図は週足のユーロドルチャートです。表示しているチャート上の青色実線・点線および丸で囲った部分は月足で示した物と同じです。
今回のチャート下部に追加した「DMI」で見ると、当然ながら現在は+DI>-DI(上昇トレンド)になっており、トレンドの強さを示すADXも上昇傾向。しっかりとした上昇トレンドを示唆しています。
一段の上昇が期待されるところですが、直近の上昇が急ピッチであったことから今後はいったん調整が入る可能性もあるでしょう。その際の下値目処ですが2023年7月高値(1.1276ドル)までにとどまることが理想です。同水準を維持できれば、2023年来のレンジ相場の逆戻りするリスクがなくなり、今後も重要なサポートとして機能する公算が高まります。
さらには過去にレジスタンスとして意識してきたラインが今後はサポートに転じる可能性、という意味で2008年からの旧下降トレンドライン(チャート上の青色実線)も下値目処として機能することもあるでしょう。最低でも1.1000ドルは維持したいところ。それ以上の調整となった場合は改めてシナリオを考え直す必要がでてきます。
今後の取引材料・変動要因をチェック 欧米間の通商交渉や米大統領言動がリスク要因に
最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は米連邦公開市場委員会(FOMC)となります。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は直近の講演で金融政策の変更に関して慎重な姿勢を示しましたが、トランプ米大統領は以前から即時の利下げを要求、一時はパウエルFRB議長の解任も辞さない姿勢を示す場面もありました(その後に解任方針はないと表明)。米大統領からの圧力が強まる中でパウエルFRB議長が従来通りの方針を維持できるか、FRB議長の「回答」が注目されます。
一方で、欧州中央銀行(ECB)ですが期間内には金融政策決定理事会は予定されていません(次回は6月5日)。ただ、ユーロ圏のインフレ率が低下を続けていることから、市場では次回の理事会で25bpの追加利下げを行うとの方向で徐々にコンセンサスが出来つつあるようです。
その他での注目はやはり米国の関税政策となるでしょう。米中絡みの憶測や関連報道などが連日伝わっていますが、日本と米国の間でも今週の2回目の日米通商会議が実施される模様。欧州連合(EU)も米国が課す相互関税(EUは20%に設定されています)の猶予期間90日の間、関税率の引き下げを軸に交渉を続けています。ただ、交渉が上手くいかない場合、EU側が報復措置を取る可能性もあり、欧米貿易摩擦の激化と欧州経済の景気減速懸念が広がることも。今後の交渉内容には注目しておく必要がありそうです。
いずれにしてもトランプ米大統領の言動に為替・株式市場が振り回される展開は当面続くと予想されます。関連のニュースには十分に注意しておきましょう。
その他の経済指標・イベント等は以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
4月30日 米国 3月PCEコア・デフレーター
5月2日 ユーロ圏 4月消費者物価指数(HICP、速報値)
5月2日 米国 4月米雇用統計
5月6-7日 米国 米連邦公開市場委員会(FOMC)
5月13日 米国 4月消費者物価指数(CPI)
5月30日 米国 4月PCEコア・デフレーター