今回解説していく通貨はユーロドルです。欧州中央銀行(ECB)の当局者からはタカ派的なコメントが相次いで伝わり、依然として金利の先高観は強い状況。これに対して米連邦公開市場委員会(FOMC)は今月の会合で政策金利の据え置きを決めましたが、経済・金利見通しでは今年中にあと2回の追加利上げを行う可能性を示唆しました。では、チャート上でもユーロドルの状況を確認していきましょう。
ユーロドル週足分析
下図のチャートはユーロドルの週足チャートになります。長期視点では昨年9月安値を始点とする上昇トレンド(黄色実線)を5月後半に一時下抜ける場面が見られました。昨年9月安値を始点として再び上昇トレンドライン(黄色点線)を引き直すこともできますが、上昇の勢いにも陰りが見え始めたようです。
もっとも、今年2月につけた高値は4月の段階でわずかながらも上抜けていることから、上昇トレンドにおいて最も重要な「直近高値超え」はクリア。上昇基調が崩れたと判断するのは時期尚早でしょう。
前述の上昇トレンドライン(黄色点線)は本日(6月28日)時点で1.0760ドル付近、1か月後には1.0900ドル付近まで上昇する見込みとなっており、まずはこちらが下値の目処になります。さらに重要となるのが5月31日につけた直近安値の1.0635ドル。同水準付近を下抜けると本格調整の可能性が高まるでしょう。
ユーロドルの日足分析
今度は日足でも見ていきます(下図のチャート)。昨年9月安値を始点とした上昇トレンドライン(黄色点線)は週足分析で紹介したものと同じものです。
週足分析でお話したように上昇トレンドに陰りが見えるなか、レンジ相場(チャートの四角で囲った部分)入りの可能性も視野に入ってきました。レンジ下限は1月6日安値の1.0484ドル、上限は4月26日高値の1.1095ドル。
現時点ではレンジ相場と断言することはできませんが、直近の上昇で4月26日高値の1.1095ドル(チャートの丸で囲った部分)を上抜けることができなければ、レンジ相場入りの可能性も高くなります。その点でも重要な局面を迎えたと言えるでしょう。
なお、今回はチャート下部に「RSI」も加えてみました。RSIは今年に入って以降、「買われ過ぎ」「売られ過ぎ」のいずれの水準にも到達しておらず、執筆時点(6月26日)時点でも中立水準に位置しています。
今後のイベントは
最後に今後1か月間の重要イベントも確認しておきます。注目は7月26、27日に公表される欧米の金融政策。現時点での市場予想ではFOMCも再び利上げに動くと見られており、声明文・FRB議長の会見とともに注意が必要です。
また、本日(6月28日)はECB中央銀行フォーラムで日・英・欧・米の中銀総裁が一堂に会し、パネルディスカッションに参加します。毎年8月に開催されるジャクソンホール会議などを除くと主要中銀総裁が集結する会合は珍しく、こちらにも注目しておきたいところです。その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
6月28日 米国 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、発言
6月28日 ユーロ圏 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、発言
6月30日 ユーロ圏 6月消費者物価指数(HICP、速報値)
6月30日 米国 5月PCEコア・デフレーター
7月7日 米国 6月雇用統計
7月12日 米国 6月消費者物価指数(CPI)
7月26日 米国 米連邦公開市場委員会(FOMC)政策金利(会合後にFRB議長の定例記者会見)
7月27日 ユーロ圏 ECB政策金利(会合後にECB総裁の定例記者会見)
7月27日 米国 4-6月期四半期実質国内総生産(GDP、速報値)
7月28日 米国 6月PCEコア・デフレーター